6
それから、早くも数週間後。
夏も近付く八十八夜。勿論、この世界に八十八夜の習慣は無いが、そんな季節ごろ。
いまだにツァラトゥストラは居候として居座り、我が家は──いや、私は非常に迷惑だ。まあ、ぶっちゃけ、スケベ神官はこの際、放っておいても致命的な悪さはしないので、構わんが、ここにきて大問題が大発生!
なんと、
「──あ、ミエアさん、待ってましたよ。」
いつも通りにギルドに寄ると、何故か受付嬢が手招き。
──何事?
と、思って近寄ると、
「実は、彼方の方がミエアさんのことをですね……──」
さてさて、受付嬢の話を整理すると、七大魔王を倒す勇者の一人が来ていて、その勇者が万年“薬草摘み”をしている私に興味を持ったのだとか。大人しく、その七大魔王とやらをやっつけてろよ、と、話を聞いた私は思った。
まあ、話を聞かされた以上は挨拶くらいはしておかないと、いろいろと角が立つので挨拶はしておく。
「……えーと、初めまして、勇者さん。私がお探しのフランベリン・ミエアと申します」
勇者の側らに行って、ペコリと挨拶。対して、勇者の方は、
「これは、ご丁寧に。私は、七大魔王を討伐する勇者が一人のラスト・アスモデウス。気軽にアスモと呼んでくれて構わないよ」
…………えーっと、前世に於いてそれは、色欲の悪魔の名前だ。だが、言ってもしょうもないので、
「どうも、アスモさん」
と、まあ、無難に場を和ませる。
「それで、アスモさんは、何故に私をお訪ねに?」
本題はここ。七大魔王というのがどういう魔王なのかは知らないが、まあ、私には関係ない。なので、勇者がわざわざ私を訪ねてきた理由を問う。
「いやね、エツトラ帝国の変態神官が付き纏う程の人物が如何程のものか見てみたくってね。」
──……アイツ、そんなに有名なの? 只の変態かと思ってた。
「……そうですか。ご覧の通り、私は至って普通の町娘ですので、アスモさんが気に掛ける程ではないてますよ。あの助平神官も、きっとなにか誤解してるのでしょう。それでは、私は“薬草摘み”があるので」
そう一方的に捲し立てて、私はその場を辞する。
そして、今月もやって来ました。月一のモチベーションアップの為、朝始発の特急に乗り、オーサカへ向かう鉄道の中。
「……なんで、アンタら、いるのよ……」
今日も付いてきたツァラトゥストラに、アスモさん。
「いやー、ほら海鮮丼? アレ、イイよね」
「へえー、海鮮丼があるのか。懐かしいな……」
……あー、うん。アスモさんはどうやら、前世が同郷のようだ。だが、私は言うまい。下手に言ったら、同郷の誼とかでより付き纏われるかもしれない。
私は神官と勇者を睥睨しながら、そんな事を思いつつ、煙が後ろへ流れ行くのを見届ける。
オーサカに着き、私はさっさと魚市場へ。そこで何時ものように魚介類を買い、氷漬けにして、移送を頼む。今日も、いつもの店に行き、
「海鮮丼……えっーと、三つで」
いつの間にやら、巻いたはずのツァラトゥストラとアスモさんが私の後ろにペッタリとおり、私は海鮮丼を三つ注文するのであった。




