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朝靄の中、イマーチの駅で始発列車を待つ。霧を切り裂きホームに入ってくる列車。ふむ、カメラが無いのが実に惜しい光景である。
「……カメラとは何だ?」
──……なんだ、起きてたのか? カメラってのは、エツトラ帝国で既にある白黒写真を撮る装置のこと。ま、私が言ってるのはアレのカラー版なんだけどね。
「……そうか」
エアリアルとの会話もそこそこに、鉄道に乗り込む。ファナリスとヘルハスも一緒で、いつもの三等車ではなく、今日は一等車。切符はクソ滅茶高かった。
窓の外には朝日が昇り、徐々に霧が晴れていく。
「お二人とも、見て下さいまし。」
はしゃぐファナリスに、私はニコニコ笑顔で応じ、ヘルハスは朗らかスマイルで応じていた。
さて、ここで少し閑話を挟むと、実はファナリス、貴族をやめたのだとか。両親は承諾済み。故に、魔法学園を飛び級(私は一年で、ファナリスは二年ね)で卒業後に宿屋の従業員になったというワケだ。閑話休題。
しっかし、ヘルハスは兎も角、ファナリスもまた気合い入ってるなー。貴族をやめたとはいえ身嗜みは貴族然としており、至って普通の私が二人から浮いている。
そして、此処は一等車。二等車までとは異なり、サービスがある。ドリンクとそのつまみだ。ドリンクは酒類と紅茶を選択でき、私は紅茶を。ちなみに、二人は酒だ。
「ところで、オーサカはショーナンとはどう違うのかしら?」
太陽に照らされる山、谷、草原、町と過ぎて行く車窓を見ながら、ヘルハスが問う。ファナリスも初めてで興味津々。
私は紅茶を一口啜ってから、
「そうね……、食い倒れの町ってところかな。」
そう答える。ここ数年で、冷凍技術が向上し、海の魚介類の内地への輸出が増えている。と同時に、産地での消費も高まり、飲食店の増加は目覚ましい。
「へえー、それは楽しみね」
そう言って、ヘルハスはサービスの酒を呷るのだった。
オーサカに着き、先ずは魚市場へ行く。顔馴染みの仲買人に挨拶と何時ものように私用の魚介類を買って、氷漬けにして輸送を頼む。ちなみに、宿屋への魚介類の購入は先にも話したが近年の冷凍技術の向上により、週一的にて行われている。
「まあ、見て下さい。これが生きた蟹ですのね!」
「殿……ヘルハスさん、こっちには海老がいますわ!」
ヘルハスとファナリスは魚市場にはしゃぎで、あっちの水槽こっちの水槽と見て回る。そして、逐一、水槽の中の生きた魚介類に驚いていた。
──まあ、然もありなん。貴族様は食材の生きた姿なんて拝むことは普通は無いし。
「「ミエアさん、この貝──」」
さてさて、王族と元貴族様がトンデモない事を口走る前に、口にチャックをしないと……──




