22
今日も“薬草摘み”をしながら、数日後には始まる『嘆きの丘』の本格的調査を前に、私は気楽でいた。先日に、先行調査隊から聞いた話によれば「──これといった異状は無し」とのこと。そして、過去の例に倣うなら『嘆きの丘』は“傲慢の魔王”がいるときだけ移動するのだとか。七大魔王は大凡数百年に一度、出現するそうで、ようはそれまでは安全地帯。
さてさて、ヘルハスは何が目的なのやら?
「──さあ、行きましょう!」
ヘルハスの号令により、『嘆きの丘』の調査隊は前進する。といっても、先ずは転移ゲートを使って『嘆きの丘』に行くだけだが。
全員が転移陣の中に入ると、転移陣が起動。一瞬の光の後には、神殿などの残骸が転がる『嘆きの丘』へ。
ヘルハスは神殿跡へと進み出ると、
「──皆さん、先ずはこの瓦礫を除けましょう!」
そう述べて、率先して瓦礫を除ける。
瓦礫は一カ所にまとめ、徐々に神殿跡がすっきりしていく。やがて、
「──階段……」
それは、紛れもなく下り階段であった。
「文献通りね」
ヘルハスの言葉に全員の意識が向く。それを待って、彼女は説明を続ける。
「此処はね、精霊殿。かつて存在した精霊信仰の祈りの場所だったの」
ヘルハスを先頭に私たちは下り階段を降りていく。
「当時、上の建物は、マナリス教に偽装していたらしいわ。精霊信仰は当時に於いても異端扱いだったって、文献にあるわ」
私たちはヘルハスの説明を聞きながら、階段を降りていく。
「……そして、此処が精霊信仰の礼拝堂」
階段を降りきり、そこには空間が広がっていた。周囲の人間が明かりの魔法を唱え、光を点すと、そこがまだまだ広い事に気付かされる。
そうして最奥、祭壇の真後ろには、
「──六枚羽根の竜」
そう、そこにはかつて私が見たまんまの六枚羽根の竜の像があった。
「──そう、あれこそ文献に遺される精霊信仰の最高精霊『エレメンタルドラゴン』よ」
ヘルハスの言葉に、私は目を見張る。その時だった。
──ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
と、地下空間を支える六柱の薪に火が点る。
「──よくぞ、来た」
それは地下空間に広がる声。然れど、どこからその声が出ているのは不明。だが、
「如何しました? ミエアさん?」
どうやら、ヘルハスをはじめ、他の人には今の声は聞こえなんだ。
──さてさて、如何したものか? 此処は『声が聞こえる』と伝えるべきかどうか? だが、考えろ。ここは敢えて無視して、聞かなかったことにするのも一手。平穏を保つなら、今回は聞かなかったことにして、『エレメンタルドラゴン』には悪いが調査を終えるのも吉であろう。
「──まてまて!」
──んな!? 『エレメンタルドラゴン』め、心を読んでくるとは!?
「そう構えるでない!」
──では、何だというのだ? あれか? 贄か?
「違うわい!」
──では?
「吾は『エレメンタルドラゴン』という立場故、好き勝手に出歩けぬ。じゃが、例外ある」
──えーっ!? 契約して世界を回るとか、ヤだよ、私。
「……ぐぬっ! 先読みするとは! だがな、そこを曲げて頼めぬか?」
──無理。マジで無理! ホント、無理だからね!




