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「──薬湯がよろしいかと」
さて、月一の役員(家族)会議。しかし、この場には王太子の第一王女ヘルハスがおり、“顧問”に就いていた。私は宿屋の経営にはノータッチなので、オブザーバーとして参加していた。
ヘルハスは宿屋の湯に薬草園の薬草を入れて、薬湯にしてはどうかと提案。
我が家族たちは皆、ヘルハスにヒビっており、
「そ、そうですな」
「え、ええ、よろしいかと」
「そ、そうでね」
「は、はい、薬湯、イイですね」
と、まあ、こんな具合。
──お前ら、マジでヘルハスに宿屋を乗っ取られるぞ?
胸の内でそう思いながらも、オブザーバーなので黙って見ている。
会議は着々とヘルハス主導の体制へと移行していく宿屋。
「──それでは、此れにて、この度の会議を終了しますわ」
そうして、一年経ち、新たな従業員として、魔法学園を卒業したファナリスがやって来た。
私は今日も“薬草摘み”に勤しむ。っつうかさ、ヘルハスも宿屋ではなく、薬草園の改革案を出せよ、と思う。
薬草園は相も変わらず、
「いつも、ありがとうね。」
「いえいえ、どう致しまして」
いつもの挨拶を交わして、“薬草摘み”に勤しむ。
いつものように、“薬草摘み”を終えて冒険者ギルドで金を受け取り、我が家に帰ると、
「──はうあー! 止まってー!?」
従業員扉を開けると、従業員が一人がモップを掛けたまま、私が開けた扉をくぐって飛び出していく。
──確か、ファナリスと一緒に従業員として入った一人のラダミスといったか。
「ただいま」
私は家族に帰宅を告げると扉を閉める。ラダミスは放置である。
──ガン! ガン! ガン!
「ちょっと、ミエアさん! 閉めないで下さい!」
自分で開けろよ、おい。ってな感じ。鍵かかってないし。
ラダミスを捨て置き、私は自分の部屋へ。私の本来の部屋は一階なのだが、どこでどう間違ったのか、この地での“王太子の補佐官”などという、おかしな役職に強制就任(しかも給料なし、とかふざけすぎ!)されていた。
んで、私の今のところの部屋は六階になる。故に、階段を上って六階に。さて、どうやら今日はヘルハスは来ているようで、事務所に改造された六階には明かりが点いていた。
現状、ヘルハスの事務所の職員は私一人。故に、ヘルハスが来ている時以外は六階に明かりが点るのは私の部屋だけだ。
──コンコンコン。
「ヘルハス様、こんばんはー」
私は扉越しにそう挨拶して、そのまま自分の部屋へ。
──ガチャリ。
「ミエアさん、ちょっと……」
しかし、自室に行こうとする私を止めるヘルハスの声。私は仕事してきたので面倒いのだが、そうもいかないので、くるりと振り向き、
「どうしました? ヘルハス様」
私は執務室の前に戻り、ヘルハスに問う。
「ねえ、今度、隣国の王と、この国の王太子として面会するのだけど……──」
──をひ。衣装選びなら、メイドにでも聞けよ!
と、言うワケにいかないので、
「そ、それは大変ですね……」
などと、お茶を濁して本題からズラす。
「ええ、そうなのよ。それでね……──」
ズラした後はテキトーに話に相槌を打って、切りのいいところでヘルハスの話を切り上げる。これが、私がこの一年で身に着けた業である。
「──ありがとうね、ミエアさん」
漸く、話も終わり、私は改めて自室へ。




