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さて、新従業員の紹介の前に、約一年前の話をしよう。
──私が一年で魔法学園を卒業して、早くも数ヶ月が経った。今日からは少し長めの休暇を取り、そして、友人と現地集合である。
鉄道に乗り、行く先はオーサカではなく、目的地はビーチ観光のショーナン。
鉄道に揺られて、数時間ほど。
「──海だー!」
さて、叫んだのは私ではない。が、実に煩い。他の客のことも考えろよ、と思う私は常識人。
私は「海だ!」と騒ぐ奴を密かに精霊に頼んで、お仕置きして、スッキリすると、何食わぬ顔で鉄道を降りていく。
鉄道を降りると、視界は人でごった返し、首都と同じく、人がゴミのようだ。
私は地図を開き、先ずは宿屋を確認。
「えーっと、こっちかな?」
地図にそって歩く。しばらく進むと、目的地に到着。
ホテルに入り、フロントに名前を告げると、
「はい、確かに。予約を承ってます。どうぞ、こちらが部屋の鍵にになります」
部屋の鍵を受け取り、部屋へ。
──コンコンコン。
ノックをしてから、鍵を開けて部屋に入ると、そこには、
「ミエアちゃん、久し振り!」
「ミエアさん、お久しぶりです」
そこにはツァラトゥストラとファナリスがいた。
私は二人に駆け寄ることはせずドライに、
「お久!」
と、挨拶。ぶっちゃけ、ツァラトゥストラはもうお腹いっぱいなので、ご退場願いたいところだ。
っつうかさ、
「なんで、ツァラトゥストラはもう水着なの?」
マジ意味不明だ。
予定では海水浴は明日から、今から水着とか“どこに入るんですか?”と言ってやりたい。
「──ふふふ、それは……────」
「──ところで、ファナリスはどう? ちゃんと、勉強してる?」
ツァラトゥストラに質問してながら黙殺し、私は話をファナリスにふる。
「はい。ミエアさんのおかげで今年で卒業できそうですわ」
「そう、それはなによりね」
──というわけで、新しい従業員はファナリスだった。正直、卒業後に我が家に就職とか、予想外です。
え? なに? 海の話はどうなった? チッ。仕方ない、では、改めて、続きをどうぞ。
──さて、そんなワケで二日目。
今日はビーチにて海水浴である。ビーチは観光シーズンに関わらず閑散としており、場所はどこでも取り放題。
理由は単純。大雨である。昨日までは、普通に晴れてたのに、今日は朝から土砂降りである。
「見ろよ。ビーチを独り占めだぜ!」
「そうですわね。ビーチを独占ですわ!」
「普通に、室内で遊ばね?」
ツァラトゥストラも、ファナリスも、感覚が他人とは異なるようで、暴風雨だろうとお構いなし。
こいつら、マジで“頭は大丈夫か?”といつも思う。
「あはっはっはっ、それぞれそれ!」
「うふっふっふっ、いきますよ!」
荒れ狂う海を背に水を掛け合う変態神官とアパズレ女。着ている水着も、海水浴よりもグラビア寄りで“お前ら、本当に海水浴する気あるのか?”と問いたくなる。
「ちょっと二人とも、危ないから海から離れなさい!」
とりま注意を促しておく。実際、二人は危なっかしい。なにしろ、ユラユラと触手が狙っていた。あれは、クラーケンや巨大オクトパスであろう。っつうか、なんで巨大生物がいるのだろうか? あー、あれか? 此奴らが、フラグを立ててるのか?
そんな事を考えていると、
「──なんとーっ!?」
「──あらあら、大変ですわっ!?」
神官はクラーケンの触手を素早い動きで躱し、対して、巨大オクトパスに襲われてたファナリスは触手に捕まりデジタルモノに。
「ミエアちゃん、ファナリスの事はお願いします。私は、躱すので手一杯なので」
「はいはい、わかりましたよ」
クラーケンと遊んでるように見える神官を横目で見やりながら、私はデジタルモノなファナリスの救出の為に精霊に呼び掛ける。
「地の大精霊よ、デカい蛸の触手を砂の刃で斬り飛ばして!」
──ザシュ。ザシュ。ザシュ。……。
ビーチから無数の砂刃が飛び出して、ファナリスを捕らえてデジタルな事をしている触手を斬り飛ばす。そして、ファナリスが落ちてきたところを私がキャッチすると、ダッシュでさがる。
「さすがはミエアちゃんです。では、私も本気で行きましょう!」
そう言うや、ツァラトゥストラは神聖魔法を唱え、魔法を発動。
──ザイン。
クラーケンを真っ二つにする威力の刃が、下から上へと駆け抜けた。そして、
──ザイン。
上へと上った刃は、反転して落下し巨大オクトパスをも真っ二つ。
「まあ、お二人とも、お強いのですのね!」
私の腕の中のファナリスが感嘆の声を上げるのだった。




