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第四章 4

            4

 事態は深刻になった。遂に、痩せたカラスの攻撃に命を落とす動物が出て来たのだ。まずは、鳩だった。


 東五丁目の鳩がいる公園で、痩せたカラスが、鳩に襲いかかり絶命させたのである。この様子を動画撮影した人がいて、テレビ局に提供した。


 朝のワイドショーで放送された。


「映像処理しておりますが、残酷なシーンが映し出されます」というテロップが流れた。


 ぼかした部分の中で、痩せたカラスが、鳩を上から抑え込むようにしている。鳩も羽を動かしてるかに透けて見えたが、はっきりとはこの映像では分からない。


 クエエッ、という声が聞こえた。ここで、映像は終わらない。ぼかしの中から鳩の羽が舞い上がる。リズムを刻むかに鳩の羽が勢いよく地面に落ちた。

 

 そこで、映像は切れた。幾らぼかしを入れたところで、朝のワイドショーである。ここらが、限界と考えたふしもある。

 

 番組スタッフと撮影者のやり取り。


――お散歩中の出来事だったんですか。

「ええ、そうです。距離的には、パタパタという羽音に横をみたら、カラスが鳩を襲っていました。五、六メートル先でした。十メートルは離れていなかったと思います。もう、驚いちゃって」

 

――鳩は生きていたんですよね?死骸だったら、我々が、カラスに抱くイメージから理解出来なくもないのですが。

「いえ、間違いなく、生きてました。羽の動きは、明らかに鳩が自分から動かしたものでした」


 司会者が、説明を加える。

「柿江市では、こうした、ペットが襲われる事案に対する市民の声が幾つか寄せられて広報に載せるだけでなく駅構内でビラを配って市民に注意を呼び掛けたそうです。このカラスの特徴は、体が細いらしいです。撮影者の方は、そう言えば、とおっしゃっていました」


 別段、巣があるわけでもない。それなのに、執拗に動物を攻撃するカラスがいる。十分、十五分の時間だったが、ワイドショーのネタとしては、それなりの価値があったに違いなかった。


 週一で出演している女性コメンテーターは、人間が襲われることが怖い、と眉をひそめて言い、毎回出ている男性コメンテーターは、「特別に縄張り意識が強いカラスじゃないんですか。それより、僕は、クワっとかいう鳴き声が気になりますねえ。カラスってあんな風に鳴きましたっけ?」と言ったのだった。


 やはり、鳴き声は、気になる部分だ、テレビを観ながら塚本は改めて思った。


 目撃者がいたわけではないが、おそらく、痩せたカラスの仕業と思える鳩やペットの被害が続いた。


 夕刊の地方版の新聞の紙面で、その記事を読んだ塚本は『まさか、そんなはずはない』と自分の気持ちを落ち着かせようとした。胸が、ドキドキして来た。




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