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第四章 5

           5

 新聞の夕刊は、市の方に寄せられた昨日の情報として、東一丁目における鳩の死骸と二丁目の大きな駐車場の前の道で大人のキジ猫が痩せたカラスに襲われたことを記事にしていたのだ。


 赤い首輪をしたキジ猫が、変な鳴き声を出すカラスに襲われ、逃げても、逃げても襲いかかられ、必死に駐車場の入り、車の下に隠れたのだという。


 カラスが去った後、駐車場から出て来たよたよたと歩くキジ猫の首輪の辺りや背中の幾カ所からも血が筋を作っていたとのことだった


 ゴンジロウだろうか。東二丁目、大きな駐車場、大人のキジ猫、これらは、ゴンジロウである可能性を思わせる。しかし、否定する材料もあった。赤い首輪である。ゴンジロウは、首輪をしていない。それを考えるとゴンジロウでないようにも思えた。


 榊コーポに引っ越して来た当時、ゴンジロウが、首輪をしていたのを思い出したのだ。赤い首輪じゃなかったか。いつの間にか、首輪は外されていたが、また、平田さんは、付けたのではないだろうか。


 塚本は、コンビニで買って来た夕飯の弁当を食べると、平田さんの家に電話を入れた。

平田さんは、夕刊をとっていたが、新聞が違った。


 襲われたキジ猫はゴンジロウではなかった。


「赤だったかなあ。ええ、確かに一時期首輪を付けたことがありましたけど、凄く嫌がって首輪のところひっかいて傷が出来ちゃったから、外しちゃったんですよ」

 平田さんは、言った。


「表には余り出さない方がいいでしょうね」

「私も、出来る限りそうしてるんですけど、ベランダのガラス戸の前で、出せ、出せって鳴かれると可哀そうになって、戸を開けちゃうんですよ」

「ゴンジロウ、そこにいますか?」

「ええ、ゴンジロウ、おいで、ゴンジロウ、塚本さんよ。膝の上に足かけた」

 電話の向こうで平田さんが笑う。


「塚本さんが、余り、アンタに表に出ちゃいかん、と言ってるわよ」

ニャアという声が聞こえた。

「もう一度、ここにニャアって言ってごらん。ニャア」

 平田さんのニャアに続いてさっきよりはっきりゴンジロウのニャアが受話器を通じて聞こえた。

 

「レンは、どうしていますか」

「スヤスヤ眠ってる。よく眠る子なのよ。塚本さん、ここだけの話、こないだペットを襲う痩せたカラスのことレンが呼び寄せたんじゃないかなんて考えちゃって」

「あり得ませんよ。レンが来る前からあの鳥はこの街にいました。私が見てますから」

 塚本は、答えた。





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