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第四章 3

            3

 手洗いとうがいを済ませると、買って来た白い帽子を被って、塚本はリビングに入った。足を踏み入れた途端にカーペットの模様に塚本は、目を見張った。白い筋が模様を描いているのだが、その筋の量が、いつも以上に多いように思える。曲がりの角度が鋭い部分がある。


 初めて、オムライス山の芝生地帯の下の石壁に沿って転がって塚本を驚かせ、慌てさせてから二度同じ行動をカミクズはして見せた。

速度も、少しずつだが、一回目より二回目、二回目より三回目の方が速くなっているように感じられた。


 どんどんと性能がアップしているのか、それとも、カミクズ自体が、意思の元に自らに訓練を課しているのか。


 塚本は、リビングの隅っこに視線を投げた。帽子姿に転がってくることもなくじっと動かない。

「おいで」と塚本が言っても動かない。手招きを加えた。「おいで」もう一度言い、手招きを大きくした。


 カミクズは、塚本に向かって転がって来た。

「どうだ、似合うだろう?」

 塚本は、しゃがんで帽子を指で指し示した。

 カミクズは、左右に揺れた。ちょっと嬉しくなった。


 塚本は、ソファに座り、カミクズにペットを攻撃するカラスのことを話して聞かせる。本当のところ、塚本は、カミクズが、言葉をどれだけ理解しているのか未だに分かっていなかった。それでも、説明せずにいられなかったのだ。


「痩せたカラスから見れば、転がっている君はモルモットに見えるかも知れない。捕獲されるまで、しばらく、僕との散歩は取りやめるか」

 塚本がこう言うと、カミクズは、部屋の隅に転がって行った。

 速い。リビングで、リビングの中でこんなに速く転がったのを見たことがない。


 「嫌だ」の意思表示だろうか。カミクズを連れての散歩は続けるより他ないようだ。それならば、――。


「 決めた。明日からは、晴れた日にもケース持参で散歩に出かけることにする。痩せたカラスが来たら、ケースの扉を開けて地面に置くから、君は、すぐに入る。いいね?」

 塚本は、リビングの隅にいるカミクズに向かって言った。


 それにしても、命を感じさせるカミクズ、ペット達を襲う不気味な鳴き声をあげる痩せたカラス。それと美しい毛並みを持ったレン。


 これらが、同じ地域に集まったのは偶然なのだろうか。何か関連し合っているのではないか。ソファに腰かける塚本は無意識に腕を組んでいた。


 平田さんには、言わない方がいいな。レンが不吉な鳥を呼び寄せたとの連想を働かせる可能性もある。心配をさせてはならないと、塚本は、思った。

 


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