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③シェイドの計画・日常、崩壊

前書き

シェイドの計画、シェイドがヴァルターを狙う理由が明らかに。そして唐突に、残酷に訪れる日常の崩壊。

暗闇の中、シェイドの声が嘲笑うように響く。

「えぇ、準備は整いました。あとは傀儡(カイライ)を目覚めさせ、裏切り者を抹消するのみ...はい。あの日、我らは彼のせいで全てを失いました。我々が敵国と激しい戦争になっていた時、奴は撤退を提案した。全てを捨てて逃げろ!と。」

暗い闇の向こう、青い装束に身を包んだ刺客、アズールが片膝をつき、耳を傾けている。

「結局、奴は我が国の異界の扉を使い、自分一人で逃げ延びた。お陰で我が国は滅びたのです。....ククク、復讐のついでに、この世界も奪うとしましょう。はい、失礼致します。」

何者かとの会話を終えた後、アズールに向き直り告げる。

「国王ゼノンごと、奴らを消し去りなさい、アズール。」

「全て、御心のままに。」

アズールの冷徹で心の籠っていない回答にシェイドはニッと目を細めて言う。

「あぁ、それと、面白そうだから消した数も数えて来なさい。クハハハッ!」

アズールは何も言わず、その場を後にした。

「それにしても、傀儡に王族の血、ククッ...面白いものを見られそうですねえ...」

シェイドも不敵な笑みを浮かべ、闇の中に消えた。


場所は変わり城下町。

「ヴァルターさん! あちらをご覧ください! 美味しそうなお食事処がいっぱいですわ!」

城下町の賑わいの中、アイネは目をキラキラと輝かせていた。ヴァルターはついて行けず、一歩後ろを歩いている。それでも、彼女の背中を暖かく見守りながら歩いていた。

「さて、あらかたは食べ尽くしましたが、こうやって大通りを少し逸れるだけでもまた変わったお料理がたくさん見つかるものですね!...ああー!あっちにペットショップが!!!ヴァルターさん!はやく!!!」

ヴァルターが焼肉の香ばしい香りに釣られている傍らでアイネがそう叫び、ぴょんぴょんとペットショップへ走っていく。ヴァルターは一瞬遅れてそれに気付き、やれやれと言った感じでアイネの後を追った。

数刻の時が流れ...

ペットショップで犬や猫と戯れ終わり、満面の笑みを浮かべる二人。

「もう! ヴァルターさんったら動物にモテすぎです! 私にはそんな顔してくれませんでしたのに...(小声)」

ふざけ合いながら大通りを外れた、その瞬間だった。

街の喧騒がふっと途切れたのだ。

気味が悪いほどの静寂、鳥の羽音すら聞こえない。

聞こえるのはヴァルターの鎧の音と黒い風の鳴く声だけだった。

ヴァルターの顔色が変わった。彼はすぐさまアイネの肩を掴み、城の方角を指差した。

「城へ帰るんだ」その言葉なき叫びが、その鋭い眼差しから伝わってくる。

「嫌ですわ! ヴァルターさんが行くなら私も行きます!」

一瞬悩んだ末、聞き入れないアイネの腕を強く引き、ヴァルターは大通りへと駆け出した。

一方城の裏手では、ゼノンとレグナが重々しく対峙していた。

「レグナよ、奴、シェイドの予言だが。」

「ええ、わかっているわ。刺客を止めに行くのよね。」

「あぁ。絶対に予言を、呪いを阻止してみせる。」

「あなた...無理はしないでね?」

心配そうに言うレグナにゼノンは寂しげに微笑んだ。

「だが、その約束は守れないかもしれん。彼らは……アイネもヴァルターも、私の大事な子だとも。この命に変えてでも...」

「ええ...私たちの愛しい子どもたちですもの。もしもの時は、私の力を使います。」

「ああ、頼んだぞ。そして、ありがとうな。」

覚悟を交わし、戦場へと散っていく二人。

だが、崩壊の音は容赦なく迫っていた。

人気(ヒトケ)のない大通り、そこに残っていたのは割れた窓に慌てて逃げていったかのような荒れた屋外装飾だけだった。

「こんなにぐちゃぐちゃになって、まるで何か恐ろしい存在から逃げているかのような...」

辺りを見回す2人の前、路地裏から肩を抑え出てきたのは、あの時のティムだった。

「はっ......!? ヴァルター団長! アイネ様!?どうしてここに!ここにいちゃダメだ!早く逃げて!!」

「ティム!? 一体どうしたのよ! それに後ろの男は一体!?」

ティムの後ろから、青い光を纏った男、アズールが死神のように歩み寄っていた。

「うしろっっ!?」

ぐさりと、冷酷な刃がティムの背中を貫いた。

「に.....げ...  」

「ティム―――!!!」

アイネの悲鳴が響く中、アズールは血濡れたナイフを素早く引き抜いた。

「...298」

無機質な声で数字を呟くアズール。ヴァルターは牙を剥き出しにし、それでも冷静にアイネを背後に庇った。

「貴方!どうしてティムを!それにこの街の惨状、貴方の仕業ですね?一体何者なんですか!!!」

「...アズール。そいつを殺す」

「ヴァルターさんを……彼とはお知り合いなのですか...!?」

「まあ、俺との接点はほとんどないだろうな?だろ?」

ヴァルターは答えない。ただ激しい憎悪を込めてアズールを睨みつける。

「さて、死んでくれるよなぁ? ヴァル...」

「君の相手は私だよ!!」

上空から轟雷のごとく舞い降りたのは、ゼノン国王だった。激しい剣撃がアズールを襲い、大量の火花が散る!

「逃げろヴァルター! コレはお前に勝てる相手じゃあない!...アイネを、頼んだぞ。」

「!?いやです!お父様ーーー!!!」

引かれていくアイネの叫び声を背に、ゼノンは全霊の闘気を解き放った。

「さあ青い侵入者!貴様の本気を見せてもらおうか!」

「はっお前ごとき、本気を出すまでもない。」

砕けるような鈍い金属音が響き渡り、ゼノンが力無く膝を着く。

「299人。....まだ、弱い」

アズールは振り返りもせず歩み去る。

「はは......やはり彼に魂を売った者の力は絶望的だな...。ヴァルター、アイネを、この国を、頼んだぞ...」

届かない最期の言葉を残し、国王ゼノンは静かに息を引き取った。

無惨な惨状の城下町、そこに現れる刺客。『アズール』大切な者を守ろうとする愛と受け継がれる意志。

次回:決戦・『傀儡,アイネ』

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