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④ 決戦・『傀儡,アイネ』

ティムに続き父を失ったアイネ、そしてその身に襲い掛かる厄災。アイネの夢を叶えた代償とヴァルターの決意。

崩壊した廃墟の陰で、アイネは泣き崩れていた。

「お父様...」

アイネは理解していた。父が彼に、アズールに勝つことが出来ないことを。

ヴァルターもまた、自身の無力さに膝をつく。己の過去が引き起こした惨劇に、黙ってしゃがみこんでしまうアイネの姿に、押し潰されそうになっていた。

*回想

『彼に初めて会った時、不思議な人だと思った。とても物静かな人だな、と。それからしばらくして、彼と話すようになってわかった。彼は話せないのではなく、話さないのだと。でも気にしてないの。彼と過ごす日々が、彼の仕草が、とても楽しくて、気付いたら私は彼に惚れていたわ。その頃からかしら。彼の声を聞きたいと思い始めたのは。』

彼女は理解していた、彼が意図して言葉を発さないのだと。

「...ヴァルターの声が、聞きたい。」

それでも、ぽつりと漏れたアイネの言葉。

ヴァルターは口を開いた。だが、喉が引きつり、声を出せない。声を出せば、予言が、呪いが発動してしまう。

その時だった。

「あのやかましい女が静かだな。お前のせいか、ヴァルター?」

追いついたアズールが刀を抜く。

「299人、ここで消した。お前を300人目にしてやろう。」

「ッ!!やっぱりお父様を...どうして...!」悲痛に叫ぶアイネを庇い、ヴァルターはアズールへと躍り出る。

「ああ、あの白い?中々の腕だったが、相手には...ならなかったな?」

「いやだ!!お父様を返してよ!!!」

家族を失った辛さからか、いつもの冷静さを失っている。

「知らんな、あんたのママにでも頼めばいいんじゃないか?」

「お母様を...?どういう事よ!!」

「知らないならご愁傷さま、と言うやつだな。」

ヴァルターの猛攻を淡々といなしながらそう告げる。


激しい死闘。だが、アイネを守りながらの戦いでは限界があった。アズールの強烈な一撃がヴァルターの剣を弾き、彼を追い詰める。

「くそっ...っ......!」

ヴァルターの口から漏れた小さな掠れ声。その瞬間だった。キーンという甲高い耳鳴りと激しい痛みがアイネの脳を鋭く刺すように響く。

「うぅ....!? はぁ、はぁっ......!」

頭を抱えてうずくまるアイネ。気を取られたヴァルターにアズールの刃が迫る!

「ぐっっ!アイネ!! 逃げろ!!!... 誕生日の件、悪かったな……」

ついにヴァルターが解禁してしまった『声』。絶叫とともに解き放たれた言葉。それはアイネの夢であり、傀儡に変えてしまう鍵でもあった。

「え....今、喋っ......うぅっ!? ヴァルター!! 助..けて....!!」

アイネの瞳から光が消える。苦しみは一瞬で去り、彼女の身体はぐったりと崩れ落ちた。

「アイネ!!!」

アズールを弾き飛ばし、抱き寄せるヴァルター。だが、アイネの口から漏れたのは、感情の抜け落ちた機械的な声だった。

「ヴァルターさん...ヤット、喋ってくれた....私、今はナニも感じナイ.....ソレに体が、動かナイの...」

「傀儡……なのか……? これが、これが俺に課せられた罪なのか...?」

ヴァルターは血涙を流し、アイネをそっと横たえた。

「レグナ様が言っていたな...その時が来たらすべてを捨てろと。...なるほど?俺の命が鍵か」

「あんなあ、俺はラブコメには興味無いんだ、さっさとソレをほっといてこっち来いよ?」

覚悟を決めたように、剣を握りしめ、もう一度アズールに立ちはだかる

「お前とシェイドは、俺が殺す!!」

脳内を鋭く刺す耳鳴り。意識が薄れる中で彼女は何を思ったのか。そしてなぜヴァルターは罪を課せられたのだろう?

次回:⑤決戦part2・致命傷。

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