五.迷走、そして……
原因が分からないまま帰宅した富恵は居ても立っても居られず、
藁にも縋る思いでネットを漁った。
ここから富恵の迷走が始まる。
ネットで「猫 食べない 原因」を検索した結果――
- 高級キャットフードを買い漁る
- チュールを“山盛り”与える
- 新しいおもちゃを大量購入
――という有り様で、
終いには『霊験あらたか』と評判の猫神社にお詣りし、
「どうかみぃちゃんに食欲を……!」と祈願する始末。
しかし、みぃちゃんは依然として沈黙したまま。
水も舐める程度で、ほとんど飲まない。
ついに、富恵は居間の隅で体育座りをしながら
座布団の上で丸くなるみぃちゃんに恨めし気に呟いた。
「みぃちゃん……、なんでなん……」
こうして三日ほど経ったある日、
そんな富恵を見兼ねた母の佳恵が、ふと炊事場で訊いた。
「なあ、富恵。あんた、みぃちゃんの食器台の水飲み用のコップ変えた?」
「ああ……割れたから、プラスチックのに……」
「それやないの?」
「えっ……?」
佳恵は炊事場の隅に置かれた食器台の水飲みを指差した。
「ほら、前は透明のガラスのコップやったやん。
それと比べたら、今の、なんか安っぽいプラスチックやん」
「…………」
佳恵の指摘に絶句しつつ、富恵の脳内では、
過去の記憶が走馬灯のように流れた。
――みぃちゃんお気に入りの広口ガラスコップ
――洗っているときに手が滑って割れた
――急いで代わりにプラスチックのコップを食器台に置いた
――その日からみぃちゃんは水を飲まなくなった
「ま、まさか……そんな……」
しかし、四の五の言ってる場合ではなかった。
富恵は急いで、よく似た透明な広口ガラスコップを買ってきた。




