三.病院へ
「あっ、寝てもた……」
ゆっくりと体を起こした富恵は頬に畳の跡を付けたまま、
壁掛け時計に目をやると、十二時を少し過ぎていた。
「お昼か……。何食べよう……」
などと、独り言ちる富恵の目の端に
座布団の上で丸くなるみぃちゃんの姿が入った。
「あっ、そやった、みぃちゃんの様子見るんやった」
慌ててみいちゃんに顔を近付けて全身を舐めるように見回したが、
これといって変わったとこは見当たらない。
首を傾げた富恵は炊事場の隅に置かれた
みぃちゃんのごはん台と水飲み器を見に行った。
「あれっ、ぜんぜん食べてへん。水は少し減ってるけど……」
「チュール」と聞けば、すっ飛んで来てイカ耳&鬼の形相で舐め散らかし、
ごはんの時間が少しでも遅れようものなら、
この世の終わりとばかりに鳴きまくる、食い意地の……もとい、
食に並々ならぬこだわりを持つ、みぃちゃんにしては明らかにおかしい。
妙な胸騒ぎを覚えた富恵はすぐに居間に戻って
もう一度、みいちゃんを見た。
すると、心なしかぐったりしているようにも見えた。
座布団の横に座った富恵は顔を近付けて、
みぃちゃの耳元で囁いた。
「みぃちゃん、チュール食べる?」
切り札を切ったものの、耳が僅かにピックとしただけで、
不発に終わった。
さすがに、これは只事ではないと、
富恵はすぐに掛かり付けの上野動物病院へ向かった。




