二.みぃちゃん
「ごっそさーん」
朝食を済ませて手を合わせる富恵に、母の佳恵は急かした。
「ほな、みぃちゃん見てきて。
たぶん、まだ居間の座布団で丸なってると思うわ」
「えーっ、食後のコーヒーくらい飲ませてぇなぁ」
「なに言うてんの。そんな悠長にしてたら、日暮れんでぇ
それに食べ終わったら、すぐに見るって言うてたん、あんたやん」
「それは、そうやけど……」
「言うたやろ。ちゃうの?」
「うっ……」
責任を取れと言わんばかりに、佳恵が圧を掛けると、
富恵は渋々席を立って、すぐ隣の居間に向かった。
肩を落とす富恵の背中に、佳恵は明るく声を掛けた。
「ほな、ウチ、スーパーのパートに行って来るさかい、
あと、頼んだでぇ」
いい気なものだと思いつつ、富恵は確かに母の言うように
あの食いしん坊がごはんを一口も付けないのはおかしい。
病気やケガでなければいいのだが、とテレビの前に置かれた
座布団の上で丸くなるみぃちゃんの様子を見るため、
富恵は腹ばいになって顔を近付けて話し掛けた。
「みぃちゃん、どうしたん? ごはん食べへんの?
好き嫌い言わずにちゃんと、食べなあかんよ」
しかし、富恵の呼び掛けも空しく、
みぃちゃんはチラッと富恵を見ただけで、
すぐに顔を丸くなった身体に埋めた。
みぃちゃんはごはん以外は、とても物分かりのいい猫だった。
例え、富恵が酔っ払ってウザ絡みしても、
困惑はするものの、決して拒絶しない広い心の持ち主である。
ちなみに、その様子をスマホで自撮りしているが、
撮った本人はまったく覚えておらず、感情の起伏が激しく、
意味不明な言葉を連発する飼い主にドン引きする愛猫という
見るに堪えないホラー動画になっていた。
(あとで見たけど、我ながら酷過ぎて、草も生えんかったわ。
ホンマ、みぃちゃんには悪いことしてもうたわ……)
穴があったら入りたいと、反省しつつ、
富恵の頭に自身のYouTubeチャンネルのことが過った。
(あっ、そろそろ、更新せな。仕事に追われて、なんも手付けてへんかったな)
富恵は副業でYouTubeに自作のショート猫アニメ「猫様の日常」を定期的に挙げている。
現在の」チャンネル登録者数9,823人と微妙ながら、
日夜一〇万人を目標に奮闘している。。
ネタは何にしようかなどと、考え込んでるうちに、
富恵は次第にウトウトし始め、
ついには睡魔に負けて寝込んでしまった。




