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秀烽学園新聞部 ただいま取材中  作者: 音鳴 凪
第八章

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39 - 逆転

 (りん)の宣言が響き渡っても、白銀(しろがね)はすぐには言葉を返さなかった。


 その様子を見て、鷹野(たかの)が一歩、白銀のほうへ詰め寄る。


「正式な手順に則ったものであれば、生徒会長たる自分が従わないわけがない。——白銀会長、確かにそう言ったな」

「ええ、確かに」


 白銀の表情からその真意は読み取れない。


「ですが、そこに刻まれたものが今も効力を持つと、それを証明できるのですか? あなたたちが見つけ、あなたたちが有効だと言い張っているにすぎない」


 その涼しげな物言いが、柊の苛立ちを誘ったらしい。


「この後に及んで往生際が悪くないですか!」

「し、詩織ちゃん落ち着いて……」


 両手をぶんぶんと振り回して間に入って行こうとする柊を、蓮見が必死に押さえつける。


「大丈夫、証明してくれる人がすぐに来てくれるわ」

「藤枝さん、あなたが本当に部長代理の権利を持っているかも、確認が必要ですよ」


 この場を離れてはいけないことを、凛は強く感じていた。今日この場で決着をつけられなければ、自分たちの作戦は二度と通じないだろう。


 そして、もうすぐこの状況を打開する一手が到着するはず。


「——遅くなりました!」


 凛がそう考えたまさにその時、生徒会室の入り口から元気な声が響いてきた。


「やっと来たわね」


 肩で息をしながら飛び込んできたのは、柏木(かしわぎ)遥斗(はると)だった。その背後には、腕章をつけた男子生徒が続いている。


「待て、貴様、何者だ——」


 その声は、白銀の命で人を呼びに出ていた丹羽のものだった。数人の風紀委員を連れ、ほぼ同時に戻ってきていた。

 風紀委員たちが、遥斗とその連れの行く手をふさごうと前に出る。


 しかし、状況を見てとった鷹野と龍崎がいち早く動き出していた。


「柏木たちは中に入れ。ここは俺が引き受ける」

「ふん、おいしいところを持っていくな」


 遥斗は「ありがとうございます」と頭を下げ、連れの生徒の背を押して室内へ送り込む。


「藤枝先輩、ちゃんとお連れしましたよ!」

黒瀬(くろせ)委員長……」


 白銀が思わずその名を口にした人物——遥斗が連れてきたのは、選挙管理委員会の委員長である黒瀬だった。


 白銀はその意味を理解すると、これを仕組んだ張本人——凛へと、鋭い視線を向ける。

 その視線が何を意味するか、凛にも分かっていた。


「お久しぶりですね、白銀会長」

「……選挙管理委員会のあなたが、なぜここに」

「彼を通じてある情報が私のところにもたらされまして、その確認のために」


 名前を出された遥斗が、えへんと胸を張ってみせる。


「生徒会室に無断で入り込んだ彼らを追い払うところです。黒瀬さん、あなたの出番はありませんよ」


 黒瀬は白銀の声に取り合わず、ぐるりと部屋を見渡すと、手にした数枚のメモへ目を落とす。


「そうとは思えませんね」


 黒瀬は淡々とそう告げると、リコール制度が刻まれた壁を指差す。


「事情は伺いました、藤枝さん。——あれがそうですね」


 その視線は凛に向けられていた。


「ええ。今ちょうど()()()()()に確認したところよ」


 黒瀬は白銀の横を抜け、壁に近づくと、その文を隅々まで目で追っていく。


「全校生徒の三分の一以上の署名による請求。五つの部の部長による特例……。ここにあるのは、当時の生徒会長の署名ですね。そして——」


 黒瀬の指が、条文の末尾で止まった。


「ここに刻まれているのは正式な生徒会印です」


 黒瀬は振り向くと、その場にいる全員をゆっくりと見渡した。


「私は選挙管理委員長の名の下に、この規約が有効であることを認めます」


 白銀が何かを言いかけたが、その声が続くことはなかった。


 室内が静まる一方で、入り口からは丹羽の抗う声が響いていた。


「放せ、貴様ら! 会長ご無事ですか!」


 丹羽は必死の形相で鷹野の制止を振り切り、室内へ身を乗り入れてくる。


「丹羽副会長、おやめなさい」

「し、しかし会長——」


 丹羽はなおも食い下がろうとしたが、白銀に見据えられると、それ以上の言葉を呑み込んだ。

 それをきっかけに、その場の騒ぎは潮を引くように沈静化していく。


 丹羽を抑えていた鷹野も、室内で交わされた宣言を聞いていたのだろう。その腕の力をふっと緩めた。


「どうやら決着がついたか」


 鷹野が龍崎と共に室内へ戻ってくると、黒瀬の視線が、室内の五人に向けられる。

 鷹野、龍崎、柊、蓮見、そして凛。


 その視線を受けて、凛があらためて五人の意思を伝えた。


「ここにいる四人の部長、そして私は新聞部の部長代理として——ここに書かれた解職請求投票の実施に賛成したところよ」


 その言葉に、鷹野たち四人も頷く。


「——賛成の意思を確認しました。選挙管理委員会は、ここに解職請求投票の実施を宣言します」


 そして黒瀬は、あらためて白銀に向き直った。


「規定により、今この時点から、現生徒会執行部の権限は停止されます」


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