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秀烽学園新聞部 ただいま取材中  作者: 音鳴 凪
第八章

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36 - 集結

 中央棟は、その名の通り学園のほぼ中央に位置している。

 生徒会室を始めとして、重要な役割を担う施設が数多く存在し、その一階には風紀委員会の本部が置かれていた。


 風紀委員会統括本部と呼ばれるそこには、普段は多くの風紀委員と、そこを訪れる学園生徒で賑わっている。


 しかし、今その正面玄関では、激しい激突が起きていた。


「くそ、化け物め……!」

「一度退くぞ! 朱鷺沢(ときさわ)委員長に報せを!」


 《《反生徒会の動き》》を鎮圧するために、すでに多くの風紀委員が出払っていたが、こちらの人数は二十を超えている。


 空手部主将鷹野(たかの)千紘(ちひろ)、剣道部主将龍崎(りゅうざき)(たける)


 それでも、学園でも屈指の戦闘力を持つ二人を前にしては、手も足も出なかった。

 倒れた仲間を抱え起こしながら、風紀委員たちはその場を離れていく。


「朱鷺沢は、もうしばらく動けんだろうがな」


 風紀委員たちの姿が視界から去ると、龍崎はようやく竹刀を持つ手を下ろした。


「朱鷺沢はお前が倒したのか? ひなたはどうした?」

「あいつは、力だけでは勝てないことをもう少し学んだほうがいいな」


 龍崎のその言い方で、鷹野にはひなたがどう負けたのか想像がついた。

 ふくれっ面のひなたが、悔しさを噛み締めて構えを取り直す姿が脳裏に浮かぶ。


「……まあ、そのあとはあいつに任せてきた。問題ないだろう」


 龍崎の言葉は、鷹野の眉間に寄った皺を見ての、彼なりのフォローだったのかもしれない。


「そもそも俺が、素手の相手に後れを取るわけがない。……貴様以外はな」

「龍崎、お前は来てくれると思っていた」

「ふん……貴様と再戦する機会を、みすみす(のが)すわけがないだろう」


 因縁のある二人だが、お互いにその強さは認め合っている。この二人が並び立つ姿は、滅多に見られない貴重なものだった。


「お二人とも、ご無事でなにより!」


 そこへ息を切らせて駆けてきたのは、文芸部部長の(ひいらぎ)詩織(しおり)と、美術部部長の蓮見(はすみ)真昼(まひる)だった。


「ちょ、ちょっと待って……。い、息が……」

「大丈夫ですか、蓮見さん。お水をどうぞ」


 蓮見は柊が手渡したペットボトルから水を飲むと、深呼吸をして息を整えた。


「……詩織ちゃん、意外と体力あるわね。いつも本を読んでいて、運動しなさそうなのに」

「私は毎朝ジョギングしてますよ。より良い読書のために、体力は必要ですから!」

「そ、そうなの?」


 龍崎が、鷹野に向けて短く咳払いをする。鷹野は小さく肩をすくめると、蓮見たちの会話に割って入った。


「とにかく、二人とも無事に来てくれてよかった」

「あ、はい。部室棟で風紀委員会に見つかりそうになったんですが、助っ人が現れまして」

「助っ人?」

榊原(さかきばら)君の妹さんだそうよ。お兄さんに言われて駆けつけたとか」


 蓮見の話を聞きながら、鷹野は作戦の全体像を頭の中で整理した。


「榊原がそちらに《《駆けつけなかった》》ということは、予定通り動き出しているということだな」

「でも、こちらにも来ていませんね……。どうしましょうか」

「このままここにいるわけにもいかん。あいつらもまた戻ってくるぞ」


 龍崎の言葉通り、風紀委員たちはすぐに体制を整えて戻ってくるはずだ。


「——必ずうまくやってくれる。我々は手筈通りに向かおう」


 鷹野はここにいない友人たちの顔を思い浮かべる。彼らを信頼し、自分たちは予定通りに動くべきだ。


「それに、『謎』は蓮見たちが解いたんだろう?」

「任せてちょうだい、ばっちりよ」



 学園の改革は必要なことだ。

 百年を超える歴史を持つこの秀烽(しゅうほう)学園において、今こそがその転換期だと信じている。


 そして、その改革を推し進めることこそが自分の役目。


 白銀(しろがね)沙耶(さや)は生徒会室で一人、ここ数ヶ月の出来事に思いを馳せていた。


 国を支えるエリートを育てるこの学園では、生徒たちの自主性が重んじられているが、その歴史を紐解けば、大きな過ちもいくつかあった。

 それでも、その都度、生徒たち自身の手で修正し、正しい方向へと進み続けてきたのだ。


「……私は過ちは繰り返さない」


 すべては計画通りに進んでいたはずだった。しかし、今、事態は自分の予想外の展開を見せている。


「……私は何かを見落としていたのか」


 窓から差し込む日差しに照らされた白銀の表情には、普段は決して見せない色が浮かんでいた。


 苛立ちと呼ばれるその感情を抑えつけるように、白銀の両手は硬く握りしめられている。


「失礼します」


 白銀の思索はノックの音で中断された。

 生徒会室に入ってきた生徒会副委員長、丹羽(にわ)太一郎(たいちろう)は、窓際に立つ白銀に一礼してから顔を上げた。


 その視線に映る白銀の表情は、すでにいつもの美しさと冷徹さをまとっていた。


「状況は?」

「それが……思ったよりもまずいことになってきていまして——」


 丹羽の報告を聞き終わっても、白銀の表情に変化はない。


「分かりました。私も行きましょう」

「ですが、会長自ら出向かずとも、我々で何とか——」

「すでにそう言っていられる状況ではないでしょう」


 白銀たちは短く言葉を交わすと、足早に生徒会室を後にした。


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