8話 こわくてもいいよ
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
三人は、掲示板へ近づいた。
黒のすぐ前なのに、そこだけ、あかるかった。
掲示板のすぐうしろに、白い光があった。
その光の中に、木の枠みたいなものが見えた。
光は、下のほうでゆれていた。
うっけの足が止まった。
「なんで掲示板なんだよ」
うっけは、名前のところを見た。
四年一組。
四年二組。
四年三組。
四年四組。
そこまでだった。
あさ、そこにあったはずの四年五組は、なかった。
三人の名前も、なかった。
「なんでないんだよ、名前」
うっけが言った。
男の子は、その白い光の中を、じっと見ていた。
うっけは、男の子を見た。
「なにか、知ってるのかよ」
男の子は、首を横にふった。
「ううん。でも、こっちな気がする」
女の子も、白い光の中を見た。
「そこ、とびらみたい」
木の枠みたいだったものには、下に細い白いすきまがあった。
女の子は、うっけの手を、ぎゅっとつかんだ。
その手をはなさないまま、そっちへ一歩歩いた。
「おい、そっちは体育館だろ」
「うん」
女の子は、うっけの手をひいたまま、うなずいた。
「うん、じゃないだろ」
「でも、白いよ」
たしかに、白かった。
黒のすぐ前なのに。
体育館は黒いのに。
その手前だけ、白かった。
三人は、そこへ近づいた。
近づくと、古い木のにおいがした。
それは、木のとびらだった。
下の細い白いすきまが、足もとの砂をてらしていた。
男の子は、すこし先にいた。
でも、とびらにはさわっていなかった。
さわれないみたいに、手を下ろしていた。
「あ。下、あかるい」
女の子が言った。
うっけは、男の子を見た。
「開けないのかよ」
男の子は、首を横にふった。
それから、うっけをまっすぐに見た。
「あけてほしい」
「ぼくかよ」
男の子は、うなずいた。
うっけは、とびらを見た。
白いすきまが、まだそこにあった。
白いのに、こわかった。
黒じゃないのに、こわかった。
「こわくないからな」
うっけが、ぽそっと言った。
だれも、返事をしなかった。
「……ほんとに、こわくないからな」
男の子が、木のとびらを見たまま言った。
「こわくてもいいよ」
「よくないだろ」
女の子が、うっけの手を、ぎゅっとした。
「ちょっとなら、いいよ」
「なにが」
「こわいの」
うっけは、うなずいた。
うなずけたかどうかは、わからなかった。
でも、手は動いた。
うっけは、女の子の手をはなさないまま、木のとびらに手をかけた。
男の子も、手を出した。
うっけの手のすぐ横で、とびらに手をおいた。
「おまえもかよ」
「すこしなら」
うっけは、息を止めた。
すぐ横で、男の子の手も動いた。
とびらを引いた。
木のとびらが、すこし開いた。
すきまから、白い光が出てきた。
白すぎて、向こうが見えなかった。
白いままだった。
でも、黒ではなかった。
うっけは、一歩、白い中へ入った。
女の子も、手をにぎったまま、入った。
男の子の足音も、白い中へ入った。
とびらが、しまった。
音だけが残った。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
9話は明日、5月8日 1:00に更新予定です!




