9話 五組へ
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
白かった。
まだ、白かった。
でも、黒ではなかった。
うっけは、にぎっている手を確かめた。
右にも、手があった。
左にも、手があった。
どっちの手も、ちゃんとあった。
白の中で、手だけ、ほんとだった。
すこしずつ、白がうすくなった。
木のゆかが見えた。
足の下にも、木のゆかがあった。
広いまどが見えた。
女の子は、先にかおを上げた。
「外」
うっけも、そっちを見た。
まどだった。
まどの外に、中庭があった。
庭のむこうに、低い屋根が見えた。
横に長くのびていた。
中庭のまんなかの花壇には、花が咲いていた。
花壇の先には、木が一本立っていた。
葉っぱが、あかるいところだけ、きらきらしていた。
古い木の色が、庭をぐるっとかこんでいるみたいだった。
あかるいのに、しずかだった。
女の子が、ふりむいた。
「うっけ!」
うっけは、とまった。
いま、ちゃんと呼ばれた。
まるみだった。
まるみが、うっけの名前を呼んだ。
それだけで、なきそうになった。
「うっけだ」
まるみは、じぶんの口をさわった。
目が、ぱちぱちしていた。
「まるみ!」
こんどは、うっけの口から出た。
「まるみ。だ」
「じぶんで言うなよ」
「あは。だって、まるみだもん」
まるみは、なきそうで、ちょっとだけ笑っていた。
うっけは、あわててカサネを見た。
「カサネ!」
カサネは、へやの中をゆっくり見ていた。
木のにおいをたしかめるみたいに、すこしだけ息をした。
それから、ぽつんと言った。
「……四年五組」
うっけは、カサネを見た。
「おまえ、なにか知ってるのかよ」
カサネは、うっけを、まっすぐに見た。
「すこし」
「なにを」
「まだ、うまく言えない」
まるみが、カサネのほうへ、一歩近づいた。
「じゃあ、あとでおしえてね」
カサネは、うなずいた。
「うん」
うっけは、まどの外を見た。
あかるい中庭の木の下には、うすい陰があった。
それは、あの黒とはちがった。
うっけは、もう一回、カサネを見た。
「……カサネ。ありがとな」
カサネは、なにも言わなかった。
でも、うっけのとなりに立った。
まるみは、にこっとした。
うっけは、あわててまどの外を見た。
三人は、しばらく、同じ中庭を見ていた。
四年五組のあたらしい第一話です。
https://kakuyomu.jp/works/2912051604055593695/episodes/2912051604055721181




