↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草案:四年五組  作者: 草案のすけ
第一章
PR
4/40

4話 かくれんぼ

このお話は全年齢向けの作品です。

気軽に読んでいただけたらうれしいです。

きい、と(ちい)さい音がした。


職員室(しょくいんしつ)の中は、しずかだった。


(あか)いペンが見えた。


(ひら)いたノートが見えた。


すこし()かれたいすが見えた。


でも、先生はいなかった。


まるみが、うしろからのぞいた。


つくえの下。


いすのうしろ。


ロッカーのすきま。


まるみは、そこをじっと見た。


「かくれんぼみたい」


「ちがうだろ」


「でも、だれもいないよ」


「だから、へんなんだろ」


「みんな、すごくかくれるのうまいのかも」


うっけは、なにも()えなかった。


()(かえ)したかった。


でも、職員室(しょくいんしつ)は、ほんとうにかくれんぼの途中(とちゅう)みたいだった。


どこからも、くすくす(わら)うこえはしなかった。


まるみが、(あか)いペンを見た。


(あか)ペン先生がいる!」


「ペンは先生じゃない」


「じゃあ、(あか)ペン校長(こうちょう)先生?」


「えらくするな」


まるみは、つくえの上を見た。


「でも、さっきまでいたんだよね」


うっけは、うなずいた。


「いた」


「じゃあ、どこ()ったんだろ」


うっけは、(こた)えられなかった。


つくえのはしに、(あか)いペンがあった。


いすは、すこしだけ()かれていた。


さっき、だれかが()ったみたいだった。


でも、だれも()っていなかった。


「先生!」


うっけは、もう一回(いっかい)()んだ。


うっけは、すぐに返事(へんじ)がくると(おも)った。


返事(へんじ)はなかった。


まるみが、手を口のよこにあてた。


「もーう、いーかい!」


こえは、職員室(しょくいんしつ)の中をぬけて、ろうかの(さき)()った。


まーだだよ、も。


もういいよ、も。


なにも(かえ)ってこなかった。


まるみは、手を下ろした。


「……()わなきゃよかった」


それから、もうなにも()わなかった。


足音(あしおと)まで、かくれたみたいだった。


そのとき、まるみの手が、うっけのそでをつかんだ。


ぎゅっと、つかんだ。


「うっけ」


うっけは、ふりむいた。


まるみは、職員室(しょくいんしつ)の中ではなく、ろうかを見ていた。


カサネの目も、もう、そっちを()いていた。


その(さき)も、まだ、つづいているはずだった。


まるみが、(ちい)さく()った。


「まど、あったよね」


うっけは、ろうかの(さき)を見た。


さっきまでは、(さき)のまどが見えていた。


白いゆかも、まだつづいていた。


でも、いまは見えなかった。


そこから(さき)は、黒かった。


かべも、ゆかも、まども、見えなかった。


白いゆかが、一枚(いちまい)ぶん、黒になった。


うっけがまばたきすると、もう一枚(いちまい)ぶん、黒になった。


さっきまで見えていたはずのろうかの(さき)が、もう見えなかった。


「……これ。かくれんぼじゃない」


まるみが()った。


うっけは、目をそらせなかった。


こえが、ちゃんと()なかった。


カサネは、黒の手前(てまえ)の、白いところを見ていた。


(あか)いペンは、つくえのはしにころがっていた。


先生は、いなかった。


ろうかの(さき)は、なかった。


うっけは、もう一回(いっかい)、先生と()べなかった。


カサネは、すこしだけ、(あし)()いた。


「……(ちか)い」


ろうかの白いところが、またすこし、(みじか)くなった。


黒は、絵の具(えのぐ)の黒みたいだった。


でも、(かみ)の上の黒じゃなかった。


ろうかの(さき)にあったものを、音もなく、見えなくしていった。

四年五組のあたらしい第一話です。

https://kakuyomu.jp/works/2912051604055593695/episodes/2912051604055721181

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。