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四年五組  作者: TOKEI-SU(とけい-す)
第四章
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35/40

35話 温泉まんじゅう

うっけは、まだ、お()のそばで、まんじゅうのことを(かんが)えていた。


りっかの(あし)は、お()(なか)で、ほんの(すこ)しだけ(うご)いた。


それを()たうっけは、にやっとした。


「よし」


まるみが、うっけを()た。


「なにが、よし、なの」


温泉(おんせん)まんじゅうだ」


「まだいってる」


「まだじゃない。ここからだ」


うっけは、まじめな(かお)でうなずいた。


「お()()た。湯気(ゆげ)()た。だったら、まんじゅうも()る」


まるみは、ちょっとだけ(かんが)えた。


「そういうものかなあ」


「そういうものだろ」


りっかが、ぽつんと()った。


「……あまいの?」


うっけは、すぐにりっかを()た。


「うん。あまい」


りっかは、お()(なか)(あし)()たまま、もう一度(いちど)()いた。


「あったかいの?」


「たぶん、あったかい」


「たぶんじゃなくて」


まるみが()った。


うっけは、(むね)()った。


「あったかい。あまい。まんじゅうだ」


りっかは、すこしだけ()()げた。


「……へんなの」


「へんなのが、いいんだよ」


うっけは、鳥居(とりい)のほうを()た。


(かみ)と、(いろ)えんぴつ、とってくる」


まるみは、すぐに()ちあがった。


「わたしも()く」


うっけは、まるみを()た。


「まんじゅう、かける?」


「うっけよりは、かけると(おも)う」


「おれだって、まるくらいかける」


「まんじゅうは、ただのまるじゃないの」


まるみは、りっかの()を、そっと(つつ)みなおした。


「りっか。(すこ)しだけ()ってくるね」


りっかは、(ちい)さくうなずいた。


カサネが、りっかのそばにしゃがんだ。


「ぼくは、ここにいる」


うっけは、石段(いしだん)のほうへ(はし)りかけた。


まるみが、すぐに()った。


「うっけ、(はし)らない。石段(いしだん)


「はやく(ある)いてるだけ!」


「それ、(はし)ってるの!」


ふたりの(こえ)は、鳥居(とりい)のむこうへ、ぱたぱた(とお)くなっていった。


()(そこ)から、ぽこ、と(ちい)さなあわが()た。


りっかは、すこし(かた)(うご)かした。


カサネは、お()()た。


「いまのは、お()(おと)


りっかは、カサネを()た。


「カサネ」


「うん」


「うっけと、まるみ」


カサネは、うなずいた。


「うっけは、まんじゅうのことを(かんが)えてるほう」


りっかは、すこしだけまばたきをした。


「まるみは?」


「りっかの()を、あっためてたほう」


りっかは、自分(じぶん)()()た。


まだ、(すこ)しだけ(あか)かった。


カサネは、鳥居(とりい)のほうを()た。


「ふたりとも、すぐ(もど)ってくる」


りっかは、だまってうなずいた。


しばらくして、石段(いしだん)のほうから、ぱたぱたと足音(あしおと)()こえた。


「カサネー!」


うっけの(こえ)だった。


「うっけ、(かみ)、まがってる!」


まるみの(こえ)も、すぐあとから()こえた。


うっけとまるみが、鳥居(とりい)のほうから(もど)ってきた。


うっけは、(かみ)両手(りょうて)()っていた。


まるみは、(いろ)えんぴつの(はこ)(かか)えていた。


うっけは、(いき)をはずませながら()った。


()ってきたぞ」


まるみも、(いき)をはずませていた。


()としてないからね」


「おれも()としてない」


「うっけは、(かみ)だけ」


(かみ)大事(だいじ)だろ」


うっけは、()()のそばに(かみ)(ひろ)げた。


まるみは、茶色(ちゃいろ)(いろ)えんぴつを()った。


それから、りっかを()た。


「じゃあ、まず、りっかのからね」


りっかの()が、お()(なか)()まった。


「りっかの?」


「うん。りっかの」


まるみは、(かみ)に、まんじゅうを(ひと)つかいた。


(すこ)しだけ(ひら)たい、まる。


その(うえ)に、ほわほわした湯気(ゆげ)をかいた。


それから、まんじゅうの(よこ)に、(ちい)さなお(さら)もかいた。


うっけは、(かみ)をのぞきこんだ。


「それ、うまそう」


まるみは、すこし得意(とくい)そうに()った。


「りっかのだからね」


りっかは、(かみ)のまんじゅうを()ていた。


「これを、()べるの?」


カサネが、(かみ)(うえ)()た。


()()べるんじゃない」


りっかは、カサネを()た。


「ちがうの?」


「うん。()()て、(あたま)(なか)に、ほんとのまんじゅうを(つく)る」


カサネは、すこしだけ(かんが)えた。


「あったかくて、あまい。ほんとのまんじゅう」


りっかは、もう一度(いちど)(かみ)()た。


「……へんなの」


「うん」


カサネは、うなずいた。


「でも、できると(おも)う」


うっけは、(かみ)のまんじゅうへ(かお)(ちか)づけた。


温泉(おんせん)まんじゅう、出ろ」


まるみが、うっけを()た。


「そんなに(ちか)くで()わなくていいの」


()こえたほうがいいだろ」


「まんじゅうに?」


「まんじゅうに」


りっかの(くち)もとが、ほんの(すこ)しだけ(うご)いた。


そのとき。


ことん。


(しろ)(かみ)のとなりに、(ちい)さなお(さら)があった。


(さら)(うえ)に、温泉(おんせん)まんじゅうが、(ひと)つのっていた。


(すこ)しだけ()れていて、(なか)のあんこが、ほんの(すこ)()えていた。


湯気(ゆげ)が、ふわっと()がった。


まるみが、(いき)()った。


「出た」


うっけも、お(さら)()た。


「出たな」


りっかは、お(さら)(うえ)()ていた。


「これ、りっかの?」


まるみは、(おお)きくうなずいた。


「りっかのだよ」


りっかは、両手(りょうて)で、お(さら)()()った。


(さら)は、りっかの()(なか)で、ほんのりあたたかそうだった。


りっかは、(ちい)さく()った。


「ありがとう」


それから、お(さら)()つめた。


「まだ、あったかい」


うっけは、うれしそうにうなずいた。


「だろ」


まるみは、(かみ)のまんじゅうを()た。


「じゃあ、うっけたちのぶんも、出るかな」


うっけは、すぐに()った。


「出る」


カサネも、(かみ)のまんじゅうを()た。


「いまので、(すこ)し、わかった」


「じゃあ、いくぞ」


うっけは、まじめな(かお)()った。


温泉(おんせん)まんじゅう、(みっ)つ、出ろ」


ほわ。


(かみ)(うえ)から、ほんの(すこ)しだけ湯気(ゆげ)()がった。


(ちい)さなお(さら)にのって、(みっ)つの温泉(おんせん)まんじゅうが()ていた。


うっけは、いちばん(ちか)(ひと)つに()()ばした。


「あつっ」


まるみが(わら)った。


「だから、あったかいまんじゅうなんでしょ」


うっけは、まんじゅうに、ふうっと(いき)をかけた。


まるみは、自分(じぶん)のまんじゅうを両手(りょうて)()った。


カサネも、まんじゅうを()った。


「まだ、あったかい」


カサネが()った。


うっけは、まんじゅうを半分(はんぶん)()った。


(なか)から、あまいにおいがした。


「あんこだ」


まるみが()った。


うっけは、すぐに()べようとした。


まるみが、うっけを()た。


「ちゃんと(あじ)わって」


(あじ)わう」


うっけは、まんじゅうをひとくちかじった。


「あまい」


まるみも、ひとくちかじった。


「あまいね」


カサネは、まんじゅうを両手(りょうて)()ったまま、すこしだけうなずいた。


りっかは、自分(じぶん)のまんじゅうを()ていた。


それから、ほんの(ちい)さく、かじった。


りっかの()が、すこしだけ(ひら)いた。


「……あまい」


まるみは、うれしそうに(わら)った。


「うん。あまい」


うっけは、まんじゅうをもう一口(ひとくち)かじった。


「ちゃんと、あまい」


まるみが、うっけを()た。


「それ、うっけが()いたいだけでしょ」


大事(だいじ)だろ。ちゃんと、あまいって」


りっかは、お(さら)両手(りょうて)()ったまま、まんじゅうを()ていた。


湯気(ゆげ)は、もうほとんど()えていた。


でも、りっかの()(なか)は、まだ、あたたかかった。


しばらくして、りっかが、ぽつんと()った。


「ほんとうに、()るんだ」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次回は


6月16日 1:00に更新します。

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