表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四年五組  作者: TOKEI-SU(とけい-す)
第三章
PR
32/40

32話 鳥居のむこう

うっけは、(しろ)いボールをかかえたまま、鳥居(とりい)見上(みあ)げていた。


()鳥居(とりい)は、石段(いしだん)(うえ)()もれ()(おく)に、しずかに()っていた。


(あか)かったのかもしれない(いろ)は、うすくなって、()そのものの(いろ)にまざっていた。


その()こうに、(ほそ)(みち)(つづ)いている。


でも、その(みち)は、まだ、だれも(ある)いていなかった。


「……ここからだな」


うっけが()った。


まるみは、鳥居(とりい)(おく)()ていた。


「ここ、なんか、ちょっとちがう」


「なにが?」


(まち)(みち)じゃないかんじ。ずっと(まえ)から、ここにあったみたい」


うっけも、石段(いしだん)()た。


たしかに、そこは、お米屋(こめや)さんの(まえ)(みち)とも、役場(やくば)()(みち)とも、ちがっていた。


(いし)


(こけ)


()()


(みじか)(くさ)


()()


(まち)(おと)は、もううしろにあった。


ここには、()()をゆらす(かぜ)(おと)だけがあった。


カサネが、鳥居(とりい)(はしら)にそっと()をあてた。


()のひらに、(ふる)()が、ぴた、とくっつくみたいだった。


「でも、ここも、(みち)


うっけは、カサネを()た。


カサネは、石段(いしだん)(うえ)を、じっと()つめていた。


(うえ)(つづ)いてる」


うっけは、(しろ)いボールをかかえなおした。


「じゃあ、()くか」


三人(さんにん)は、鳥居(とりい)をくぐった。


くぐったとたん、(みみ)(おく)が、つんとした。


うしろの(おと)が、すこし(とお)くなった()がした。


うっけは、ふり(かえ)った。


役場(やくば)のほうへ(つづ)(みち)は、()のあいだから、まだ()えていた。


でも、なんだか、あついガラスの()こうにあるみたいだった。


()えるけど、(とお)い」


まるみが、(ちい)さく()った。


「うん」


うっけは、(まえ)()いた。


「でも、(もど)ってない」


「うん」


三人(さんにん)は、石段(いしだん)をのぼった。


(いち)だん。


()だん。


(さん)だん。


ぬれているみたいに(いろ)()(いし)のあいだに、()たことのない(かたち)(くさ)がはえていた。


まるみは、つまずかないように、(あし)もとを()ていた。


カサネは、石段(いしだん)(よこ)()を、ずっと()ていた。


うっけは、(しろ)いボールを(むね)(ちか)づけた。


石段(いしだん)をのぼるたび、(まち)(おと)が、また(すこ)(とお)くなった。


うっけは、石段(いしだん)(さき)()た。


やがて、石段(いしだん)()わった。


石段(いしだん)(うえ)は、(やしろ)(まえ)だけ、すこし(ひら)けていた。


ぐるりと(たか)()にかこまれて、そこだけ()もれ()()ちていた。


(あし)もとには、(こけ)のついた(いし)と、()()と、(みじか)(くさ)がまじっていた。


ここは、(はい)るまえから、(こえ)(ちい)さくしたくなる場所(ばしょ)だった。


まん(なか)に、(ちい)さな(やしろ)があった。


(あめ)にぬれたことのありそうな、(ふる)()でできた、ちいさな(いえ)みたいなもの。


(まえ)には、(こけ)のついた、(ひく)(いし)(だい)がある。


(よこ)には、文字(もじ)()えかけた(ほそ)()(ふだ)何本(なんぼん)か、ななめに()っていた。


「ここ、神社(じんじゃ)?」


まるみが()った。


うっけは、あたりを見回(みまわ)した。


「たぶん」


「また、たぶん」


「だって、神社(じんじゃ)っぽいじゃん」


「ぽいね」


まるみは、(ちい)さくうなずいた。


カサネは、(やしろ)(まえ)()っていた。


「ここ、(まち)(おと)がない」


うっけは、(みみ)をすませた。


さらさら。


ころころ。


あの小川(おがわ)(おと)は、()こえなかった。


だれかの生活(せいかつ)気配(けはい)も、ここにはなかった。


ただ、()()がゆれる。


(とお)くのほうで、名前(なまえ)()らない(とり)一回(いっかい)だけ()いた。


それだけだった。


「しーんとしてる」


まるみが()った。


「しーん、だな」


うっけも()った。


でも、いやな(しず)かさではなかった。


こわいのに、そこにいられる(しず)かさだった。


カサネは、(やしろ)()こうを()ていた。


「まだ、(おく)がある」


うっけも、そっちを()た。


かさなった()のあいだに、すきまがあった。


()どもがひとり、やっと(とお)れそうな、(ほそ)いすきまだった。


「……あそこ?」


まるみが()った。


「たぶん」


うっけが()った。


今度(こんど)の「たぶん」は、(すこ)しだけ(ちい)さかった。


カサネは、じっと、その(くら)いすきまへ()()けていた。


「そこから、(なに)かする」


(なに)か?」


うっけが()いた。


()こえる、じゃない」


カサネは、(くび)(すこ)しだけ(よこ)にふった。


「でも、ある」


まるみが、うっけのそばへ()った。


「あるって、なに?」


カサネは、うまく(こた)えられないみたいだった。


ただ、()のかげの(おく)()ていた。


うっけは、()(なか)のボールを(むね)(ちか)づけた。


「じゃあ、()くしかないな」


うっけが()った。


まるみは、うなずいた。


カサネも、うなずいた。


三人(さんにん)は、(やしろ)(よこ)(とお)り、()のかげのすきまへ(ちか)づいた。


(あし)もとの()()が、かさ、と()った。


(こけ)のついた(いし)のすきまに、(みじか)(くさ)がはえていた。


まるみは、うっけのそばに()った。


カサネは、まっすぐ(まえ)()ていた。


そのとき。


(やしろ)(まえ)空気(くうき)が、ふっと(しろ)くなった。


うっけは、(あし)()めた。


カサネだけが、(かお)()げていた。


まぶしい(ひかり)(なか)で、なにかが、しずかにゆれていた。


(しろ)(ひかり)が、(すこ)しずつうすれていく。


(なが)(かみ)()えた。


その()は、地面(じめん)()れないまま、空中(くうちゅう)でねむっているみたいに、ゆっくり()りてきた。


うっけは、(いき)をのんだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


第三章はここでおわり

つづきはまたこんど!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ