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四年五組  作者: TOKEI-SU(とけい-す)
第三章
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31/40

31話 まだ行ってないとこ

三人は、図工室(ずこうしつ)()た。


うっけは、白いボールをかかえていた。


まるみは、マーカーを()っていた。


ボールの裏側(うらがわ)には、まだ、(なに)もかいていない白いところがあった。


うっけは、そこを(ゆび)でたたいた。


「ここだな」


まるみが、ボールをのぞきこんだ。


「でも、そこへ()(みち)、まだかいてないよ」


「だから、(ある)く」


(ある)く?」


(ある)いたら、かけるだろ」


まるみは、ちょっとだけ(わら)った。


「うっけっぽい」


「なんだよ、それ」


カサネは、ボールの白いところを見た。


「でも、たぶん()ってる。かいてないのは、まだ見てないからだと(おも)う」


「だろ」


うっけは、(かお)を上げた。


「見に()くぞ」


三人は、昇降口(しょうこうぐち)()て、校庭(こうてい)横切(よこぎ)った。


(もん)の外には、佐々江町(ささえまち)が、しずかに(ひろ)がっていた。


米屋(こめや)さん。


八百屋(やおや)さん。


児童館(じどうかん)


ボールにかいた(まち)と、(おな)順番(じゅんばん)だった。


まるみが、小さく()った。


()ってる」


うっけは、すこし(むね)()った。


「な」


三人は、()()(まえ)()まった。


(おお)きな木のかげが、草の上に()ちていた。


ボールの上にも、小さな木のかげがあった。


その下に、小さな(まる)が三つならんでいた。


「おにぎり()べたところだ」


まるみが()った。


うっけは、()()(おく)を見た。


草に半分(はんぶん)かくれた、(ほそ)(みち)があった。


(まえ)()たときは、そこまで見ていなかった。


「これ、(みち)かな」


まるみが、そっと(ちか)づいた。


(みち)っぽい」


「っぽいなら、()ける」


「それ、だいじょうぶ?」


カサネは、ボールをのぞきこんだ。


「白いところ、こっちがわだと(おも)う」


「よし」


うっけは、すぐに()めた。


「こっちだ」


まるみは、マーカーのふたを()けた。


きゅぽん、という小さな(おと)がした。


()()(まる)から、白いところへ、(ほそ)(せん)一本(いっぽん)()く。


白かったところに、(みち)ができた。


うっけは、その(せん)を見た。


ただの(せん)なのに、そこから(さき)()けそうに見えた。


「いいじゃん」


「まだ、ちょっとだけだよ」


「ちょっとでいい。(つづ)きは、(ある)けばいい」


三人は、()()(おく)(ほそ)(みち)へ入った。


草が、くつにさわった。


右には、(いえ)(うら)があった。


左には、(はたけ)のすみが見えた。


(おもて)(みち)より、ずっとしずかだった。


まるみが、小さな(こえ)()った。


「ここ、()ってる(まち)なのに、()らない(まち)みたい」


うっけは、(まえ)を見た。


(うら)だからだろ」


(まち)にも、(うら)ってあるんだね」


「あるだろ。(いえ)にも(うら)あるし」


カサネが、(はたけ)のほうを見た。


「でも、こっちは、あんまり(とお)られてない(かん)じがする」


うっけは、ボールを見た。


まるみが足した(ほそ)(せん)(さき)は、まだ白かった。


「じゃあ、(とお)る」


うっけは()った。


「おれたちが(とお)ったら、(みち)になる」


まるみは、うっけを見た。


「それ、いいね」


「だろ」


三人は、さらに(すす)んだ。


(ほそ)(みち)は、役場(やくば)(うら)へ出た。


(まえ)から見た役場(やくば)とは、すこしちがって見えた。


まどが(たか)い。


裏口(うらぐち)がある。


それだけで、()らない建物(たてもの)みたいだった。


まるみは、ボールを出した。


「ここも?」


「かく」


まるみは、役場(やくば)(うら)に、小さな(せん)を足した。


白いところが、またすこしへった。


カサネが、役場(やくば)(うら)から(つづ)(みち)を見つけた。


「こっちにもある」


(はたけ)(よこ)(とお)って、山のほうへ入っていく(みち)だった。


うっけは、(あし)で土をふんだ。


すこしだけ、くつの下がしずんだ。


「こっちだ」


「また、すぐ()める」


まるみが()った。


「だって、こっちっぽいだろ」


「うん。こっちっぽい」


三人は、役場(やくば)(うら)から(つづ)(みち)へ入った。


草が、くつにさわる。


(いし)が、ごろ、と(ころ)がる。


山が、(まえ)より(ちか)く見えた。


うっけは、うしろを見た。


役場(やくば)が、木のあいだから、小さく見えていた。


「まだ、学校(がっこう)(もど)ってない」


まるみも、うしろを見た。


「ほんとだ」


三人は、さらに(すす)んだ。


(まち)(いえ)は、もうほとんど見えなかった。


木のかげが、すこしずつ()くなっていく。


まるみが、うっけの(ちか)くへ()った。


「ここ、ほんとに(まち)?」


うっけは、(あし)もとの土と、草と、(いし)を見た。


どれも、ちゃんとそこにある。


でも、さっきまでの(まち)とは、空気(くうき)がちがっていた。


「わかんない」


うっけは、正直(しょうじき)()った。


「でも、ボールの白いところは、こっちだ」


そのとき、カサネが(まえ)(ゆび)さした。


「うっけ」


「なに」


草にかくれかけた石段(いしだん)があった。


その上に、木の鳥居(とりい)()っていた。


三人は、石段(いしだん)(まえ)()まった。


まるみが、そっと(いき)()った。


「ここ……?」


カサネは、鳥居(とりい)のむこうを見ていた。


「ここから先、まだかいてない」


うっけは、ボールを見た。


まるみが足した(ほそ)(せん)は、石段(いしだん)(まえ)()まっていた。


そこから先は、まだ白かった。


うっけは、ボールの白いところを手のひらでおさえた。


「じゃあ、ここだ」


(かぜ)が、山の()を、さわ、とゆらした。


三人は、鳥居(とりい)(まえ)(なら)んだ。


ボールの白いところは、うっけの手の下で、まだ(なに)もかかれていなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次回は


6月13日 1:00に更新します。

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