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四年五組  作者: TOKEI-SU(とけい-す)
第三章
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26/40

26話 ぐるっと、したのかな

三人は、(まる)いベンチをさがしに、(はし)のほうへ(ある)いていった。


さらさら。


ころころ。


水の(おと)は、さっきより(ちか)かった。


(くさ)のあいだから、小川(おがわ)(ひか)って()えた。


そのむこうに、小さな(はし)がかかっていた。


まるみが、(すこ)(あし)()めた。


「ここから、(まち)(はい)るんだね」


うっけは、(はし)のむこうを()た。


屋根(やね)があった。


(みち)があった。


()らない(まち)が、そこから(はじ)まっていた。


(はい)るだろ」


うっけは、そう()って、(はし)(あし)をのせた。


こつ。


(はし)(ひく)かった。


水が、すぐ下を(なが)れていた。


さらさら。


ころころ。


(おと)が、(あし)の下から()た。


まるみが、(はし)の上で、ちょっとだけ(かた)をすくめた。


「三人だと、ぎゅってなるね」


「ぎゅってならないだろ」


うっけが()った。


カサネは、(はし)のふちから水を()ていた。


「下、すぐ水」


「おちないから」


そう()ったうっけが、よろっとした。


まるみが、ぱっと()()した。


うっけは、その()をつかまなかった。


でも、ちょっとだけ(かた)がまるみにぶつかった。


「ほら」


「ほらじゃない」


まるみが(わら)った。


カサネも、(すこ)しだけ(わら)った。


(はし)がせまいんだよ」


「せまいのは、(はし)のせい」


「そう。おれのせいじゃない」


うっけは、(まえ)()きなおした。


水の(おと)が、(あし)の下でころころ()った。


まるみは、(はし)のまんなかから、下をのぞいた。


小川(おがわ)(ちか)いね」


カサネが、うなずいた。


「うん。(おと)が、下から()る」


三人は、(はし)をわたった。


こつ。


こつ。


ざり。


(あし)の下の(おと)が、かわった。


木ではなく、土だった。


まるみが、(あし)もとを()た。


「こっち、やわらかい」


うっけも、土を()んだ。


さっきまでの校庭(こうてい)とも、(はし)の上とも、ちがった。


(まち)の土だった。


うっけは、うしろを()た。


(はし)のむこうには、さっきまでいた(みち)があった。


木のあいだから、阿波瀬小学校(あわせしょうがっこう)屋根(やね)が、(すこ)しだけ()えた。


うっけは、まばたきをした。


阿波瀬小学校(あわせしょうがっこう)


それは、()っている名前(なまえ)だった。


でも、()えている屋根(やね)は、うっけの()っている屋根(やね)ではなかった。


()っている名前(なまえ)の、()らない屋根(やね)だった。


まるみも、うしろを()ていた。


「……あわ(しょう)なのにね」


「だな」


うっけは、(まえ)()いた。


(まえ)には、もう(まち)があった。


(いえ)のかべ。


(ほそ)(みち)


小川(おがわ)


(やま)のにおい。


まるみが、小さく(いき)をすった。


()らない(まち)なのに、ちょっと()たい」


「だろ」


うっけは、お弁当(べんとう)()ちなおした。


「じゃあ、(まる)いベンチのとこ、あるか()ようぜ」


「阿波瀬公園(こうえん)?」


「そう。あれがあったら、そこだろ」


三人は、小川(おがわ)ぞいの(みち)(ある)いた。


(みち)は、(いえ)(いえ)のあいだをぬけて、(すこ)しずつ(のぼ)(ざか)になっていった。


小川(おがわ)は、(みち)のよこで(ひか)ったり、(くさ)のかげにかくれたりした。


さらさら。


ころころ。


まるみが、(かお)()げた。


「あっち、(とお)くまで()えそう」


うっけも、つられて(かお)()げた。


(まる)いベンチも、()えるかも」


まるみが、うっけを()た。


「もう(はし)りそう」


(はし)ってない」


「でも、(あし)(まえ)()きたそう」


(あし)は、そうかも」


()っちゃった」


まるみが(わら)った。


三人は、(さか)(のぼ)りはじめた。


(さか)は、(おも)ったより(なが)かった。


一歩(いっぽ)(のぼ)るたびに、屋根(やね)(すこ)しだけ(した)()がった。


もう一歩(いっぽ)(のぼ)ると、さっき(とお)った(みち)が、(いえ)のあいだから(ほそ)()えた。


さらさら。


ころころ。


小川(おがわ)(おと)は、だんだん(した)のほうから()こえるようになった。


まるみが、(いき)をはずませた。


(まち)、下にある」


「おれたちが(のぼ)ってるからだろ」


「うん。でも、(まち)が、下に()ってるみたい」


カサネは、(さか)途中(とちゅう)(あし)()めた。


(おと)も、下に()った」


うっけも、小川(おがわ)のほうを()た。


水は()えたり、()えなかったりした。


でも、(おと)はあった。


「まだ、いるな」


まるみが()った。


「うん」


うっけは、もう一歩(いっぽ)(のぼ)った。


(さか)(うえ)で、(かぜ)(すこ)(ひろ)くなった。


三人は、そこで(あし)()めた。


(まち)が、見えた。


さっき(わた)った(はし)が、小さく()えた。


(はし)のそばに、小川(おがわ)(ひか)っていた。


屋根(やね)が、ひとつ、ふたつ、三つ。


そのむこうにも、まだあった。


(みち)は、(いえ)のあいだを()がっていた。


まるみが、ぽつんと()った。


「……すごい」


うっけは、(まち)見下(みお)ろした。


(まる)いベンチ、どこだ」


「そこ?」


まるみが、(ゆび)をさした。


屋根(やね)のあいだに、木が(あつ)まっているところがあった。


うっけの(かお)が、ぱっと(あか)るくなった。


公園(こうえん)っぽい!」


カサネは、その場所(ばしょ)をじっと()ていた。


「でも、(おと)は、あっちからもする」


「小川?」


「うん。(まち)の中を、まだ()ってる」


さらさら。


ころころ。


(おと)は、下のほうで、(いえ)のあいだを(とお)っていた。


「たしかめてみる?」


まるみが()いた。


うっけは、うなずいた。


「行こう」


三人は、(さか)を下りはじめた。


下りは、(のぼ)りより(はや)かった。


うっけの(あし)が、どんどん(まえ)()る。


「うっけ、お弁当(べんとう)、ゆれるよ」


カサネが()った。


(はし)ってないだろ」


「でも、ちょっと(はし)りたいって(あし)()ってる」


まるみが()った。


(あし)()わない」


「さっき、(あし)はそうかもって()ったよ」


「それは、それ」


(さか)を下りると、ひらけた場所(ばしょ)()た。


そこは、公園(こうえん)ではなかった。


(くさ)があった。


木もあった。


小川(おがわ)(ちか)かった。


けれど、すべり(だい)はなかった。


ブランコもなかった。


砂場(すなば)もなかった。


もちろん、(まる)いベンチもなかった。


うっけは、(くさ)(うえ)()まった。


公園(こうえん)じゃない!」


まるみも、まわりを()た。


(くさ)が、(かぜ)でゆれていた。


木の下に、(すこ)しだけ()かげがあった。


小川(おがわ)(おと)が、(くさ)のむこうから()こえた。


さらさら。


ころころ。


まるみは、(すこ)しだけ(わら)った。


「でも、ここ、すきかも」


カサネは、木の下を()た。


「ここでお弁当(べんとう)()べたら、おいしそう」


まるみの(かお)が、ぱっと(あか)るくなった。


「じゃあ、ここで()べようよ」


「いいけど、ベンチないぞ」


「木の下、あるもん」


うっけは、木の下を()た。


たしかに、すわったら気持(きも)ちよさそうだった。


弁当(べんとう)(ひろ)げたら、(かぜ)()そうだった。


小川(おがわ)(おと)()こえそうだった。


「……それは、ちょっといい」


うっけは、(すこ)しだけだまった。


まるみが、木の下を()ていた。


カサネも、そこを()ていた。


三人とも、(すこ)しだけ、そこにすわった(とき)のことを(かんが)えていた。


でも、()()のむこうに、まだ(みち)(つづ)いていた。


うっけは、その(さき)()た。


「でも」


まるみが、うっけを()た。


「うん」


「もうちょっとだけ(さき)()たい。(まる)いベンチ、あるかもしれないし」


まるみは、(すこ)しだけ(くび)をかしげた。


「もうちょっとだけ?」


「うん。もうちょっとだけ」


カサネは、小川(おがわ)(おと)()いていた。


(おと)も、まだ(さき)にある」


まるみが、木の下をもう一回(いっかい)()た。


「じゃあ、お弁当(べんとう)は、あとで」


「あとで」


うっけが()った。


三人は、()()のむこうへ(ある)()した。


(みち)は、さっきより(すこ)(ひろ)かった。


小川(おがわ)は、()えたり()えなかったりした。


姿(すがた)はかくれるのに、(おと)だけはずっと()こえていた。


さらさら。


ころころ。


(みち)(さき)が、(すこ)しずつ(あか)るくなってきた。


うっけは、(あし)(すこ)(はや)めた。


まるみも、となりに()た。


カサネは、(すこ)しだけ(うし)ろから、(おと)()いていた。


「……あれ」


うっけが()った。


まるみが、(あし)()めた。


「……うっけ」


「なに」


まるみは、(まえ)()ていた。


「あの(なが)屋根(やね)、さっき()た」


うっけは、(まえ)()た。


(なが)屋根(やね)


ならんだまど。


(ふる)い木のかべ。


カサネが、小さく()った。


校舎(こうしゃ)屋根(やね)


うっけの(あし)が、そこで()まった。


まるみも、カサネも、()まった。


(みち)(さき)に、学校の(もん)があった。


さっき()(もん)だった。


うっけは、(もん)()た。


それから、うしろを()た。


(さか)()えなかった。


()()()えなかった。


(はし)()えなかった。


でも、三人の(あし)は、たしかにそこを(ある)いてきた。


「……なんで」


うっけの(こえ)は、小さかった。


まるみは、学校の(もん)()ていた。


それから、ゆっくり、うしろをふりかえった。


(はし)、わたったよね」


「わたった」


(さか)(のぼ)ったよね」


(のぼ)った」


()()、あったよね」


公園(こうえん)じゃなかったけど、あった」


まるみは、もう一回(いっかい)、学校の(もん)()た。


それから、小さく()った。


「ぐるっと、したのかなぁ」


うっけが、まるみを()た。


「ぐるっと?」


まるみは、(ゆび)で、小さく(まる)をかいた。


「うん。まっすぐ()ったつもりだったけど、ぐるっとまわって、もどってきちゃったのかなって」


カサネも、うしろを()た。


「でも、そんなに()がった(かん)じはしなかった」


うっけは、(すこ)しだまった。


さらさら。


ころころ。


学校の(まえ)で、小川(おがわ)(おと)がした。


まるみが、耳をすました。


(おと)も、もどってる?」


カサネは、小川(おがわ)のほうを()た。


「わからない。でも、まだ(つづ)いてる」


うっけは、(もん)(そと)()た。


「じゃあ、もう一回(いっかい)だ」


まるみが、うっけを()た。


「もう一回(いっかい)?」


「たまたま、ぐるっとしただけかもしれないだろ」


「たまたま、ぐるっと?」


「そう」


うっけは、(すこ)しだけ(くち)をむすんだ。


「こんどは、ちゃんと()る。(はし)も、(さか)も、()()も。どこでぐるっとしたのか、()つける」


まるみとカサネは、うなずいた。


さらさら。


ころころ。


(おと)は、まだ(もん)(そと)にあった。


三人は、学校の(もん)(そと)へ、もう一回(いっかい)(ある)()した。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次回は


6月8日 1:00に更新します。

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