20話 月明かりの下で
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
三人は、放送室を出た。
うっけは、あかるいほうへ歩いた。
まるみとカサネも、ついてきた。
ろうかの先に、中庭へ出る戸があった。
戸のむこうが、白かった。
うっけは、戸を開けた。
がら。
暗い空気が、すうっと入ってきた。
そこは、中庭の広場だった。
足もとの木の板が、うすく白かった。
まんなかに、大きな木があった。
木のまわりだけ、白く光っていた。
「なんで、白いんだよ」
うっけが、小さく言った。
まるみは、こたえなかった。
上を見ていた。
「月」
うっけも、カサネも、上を見た。
木の葉っぱのあいだから、白い月が見えた。
「朝じゃないのかよ」
うっけのこえは、すこしだけ小さかった。
カサネが言った。
「でも、あかるい」
月の光が、木と、広場の板を白くしていた。
うっけは、すこしだけ息をはいた。
まるみは、月を見ていた。
「夜ってさ」
うっけは、まるみを見た。
「なに」
「ほんとは、おうちにいるじかんだよね」
うっけは、すぐには言えなかった。
まるみの目に、なみだがたまった。
「わたし、ここにいるのに」
まるみは、月の光の中に、しゃがみこんだ。
中庭の広場が、しんとしていた。
まるみは、手で目をこすった。
でも、なみだは、また出た。
うっけも、まるみのそばにしゃがんだ。
「さがしてるだろ」
まるみは、なみだの目で、うっけを見た。
「ほんと?」
「ぼくでも、さがす」
まるみは、うっけの手をにぎった。
「うっけのことも、さがしてるよ」
うっけは、下を見た。
「ぼくのことは、いいだろ」
まるみは、首をふった。
「よくないよ」
うっけは、目をこすった。
「なんだよ」
そう言ったこえが、もう、ないていた。
カサネは、ふたりを見ていた。
それから、月を見た。
白い月だった。
でも、どこで見たのか、だれと見たのか、思い出せなかった。
カサネは、自分の手を見た。
「……ぼくは」
うっけとまるみが、カサネを見た。
「だれがさがしてるか、思い出せない」
まるみが、手をのばした。
うっけも、なみだをこすった。
「わからなくても、さがされてろよ」
カサネは、うっけを見た。
「わからないよ」
「わからなくてもだよ」
まるみが言った。
「カサネも、きっと、さがされてるよ」
カサネは、まるみの手を見た。
うっけの手も見た。
それから、自分の手をのばした。
三人の手が、月の光の中でつながった。
まるみのこえ。
うっけのこえ。
カサネのこえ。
三つのこえが、中庭の広場にまざった。
ないて、ないて。
月の光が、なみだでにじんだ。
それでも、つないだ手だけは、ちゃんとあった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
21話は 5月28日 1:00に更新します。




