19話 ほうそうがかり
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
「いくぞ」
まるみは、まどの外をもう一回見た。
「どこいくの?」
「カレーが出たところ」
「給食室?」
うっけは、うなずいた。
「カレーが出たんだ。朝も出るかもしれないだろ」
「朝って、出るの?」
「出してみなきゃ、わからないだろ」
三人は、給食室へむかった。
ろうかは、暗かった。
まるみは、まどの外を見ないようにして、それでも、ちょっとだけ見た。
カサネは、外を気にしながら、ついてきた。
がら。
給食室の引き戸を開けると、中はしんとしていた。
さっきまで、カレーのにおいでいっぱいだったのに、いまは、すこしだけにおいが残っているだけだった。
うっけは、配膳台の前に立った。
銀色のドーム型のふたが、そこにあった。
「ここで、朝が出るの?」
まるみが聞いた。
「カレーは出た」
「朝はカレーじゃないよ」
カサネが言った。
「わかってる。やってみる」
うっけは、ふたの前で、すうっと息をすった。
「朝になれー!」
まるみも、カサネも、ふたの前に立った。
「朝になあれ」
「朝になってください」
「ていねいだな」
「おねがいしてるから」
うっけは、ふたに手をかけた。
かちゃん。
三人は、いっせいに、のぞきこんだ。
からっぽだった。
まるみが、そっと言った。
「朝、入ってないね」
「朝が、入ってると思って開けたわけじゃない」
「でも、見たよね」
うっけは、すこしだまった。
「見た」
まどの外は、まだ暗いままだった。
うっけは、ふたをそっと戻した。
「まだ、終わってないぞ」
「まだあるの?」
「学校なら、ほうそうするへやがあるはず」
まるみが、ぱちっとまばたきした。
「朝のほうそう?」
カサネが言った。
「おはようございます、って言ってみる?」
うっけは、カサネを見た。
「それだ」
三人は、給食室を出た。
カサネが、先に見つけた。
「放送室」
放送室は、小さなへやだった。
つくえとマイクがあった。
うっけは、マイクの前に立って、せすじをのばした。
かち。
つまみをひねると、
きーん。
音がした。
まるみは、うっけを見た。
「なんで、やりかたしってるの?」
「放送係だったから」
「……あ、あ」
うっけは、マイクにむかって言った。
「おはようございます!」
うっけのこえは、学校中にひびいた。
でも、なにもかわらなかった。
外は、暗いままだった。
カサネが言った。
「三人で言えば、なにかちがうかも」
うっけは、すこしだけ考えた。
「……言うぞ」
まるみとカサネも、マイクに近づいた。
「せーの」
「おはようございます」
三人のこえが、学校中にひびいた。
でも、それだけだった。
まるみは、まどの外を見た。
「ならないね」
うっけは、外をにらんだ。
「……朝になれよ」
そのとき。
まるみが、外を見た。
「あそこ、あかるい」
うっけは、ぱっとかおを上げた。
「朝?」
カサネも、外を見た。
「朝じゃないと思う。でも、外のほうがあかるい」
まるみが、まどに近づいた。
「ほんとだ」
中庭の方だった。
暗い中庭のまんなかが、すこしだけ白かった。
まるみは、うっけとカサネを見た。
「いってみよう!」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
20話は 5月27日 1:00に更新します。




