17話 いただきます
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
「……食べていいのか?」
うっけが、小さく言った。
まるみが、ぱちっとまばたきした。
「食べるために、作ったんじゃないの?」
「そうだけど」
「じゃあ、食べようよ」
そのとき。
ことん。
配膳台の下から、小さな音がした。
三人は、そっちを見た。
木のトレイが、三つ。
スプーンも、三つ。
まるみのかおが、ぱっと明るくなった。
「給食トレイ!」
「出た」
カサネが、そっと言った。
うっけは、スプーンを見た。
「そこまで出るのかよ」
センセイが、入口のところでにこっとした。
「日直さんの出番です」
「いやいや、それいうなら給食係でしょ」
でも、うっけは、もうトレイを一つ持っていた。
カサネも、トレイを一つ持った。
まるみも、うなずいた。
「三人でやればいいんだね」
「そういうことだろ」
三人は、トレイを持って、教室へもどった。
教室へ入ると、三人の席がそこにあった。
二人のかおが見える席。
呼べば、ちゃんととどきそうな席。
そこに、給食トレイをならべた。
カサネは、牛乳を三つ、トレイに置いた。
「牛乳もある」
「今度は、いただきますだろ」
三人は、スプーンを持った。
そして、おさらにのったカレーを見た。
湯気が、上がっている。
いい、においが、する。
うっけは、もう、ほんとうにまちきれない気持ちになった。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
うっけは、スプーンを入れた。
ちゃんと、すくえた。
ニセカレー消しゴムじゃなかった。
スプーンの上には、ごはんと、カレーがのった。
うっけは、おおきく口に入れた。
もぐ。
一回。
もう一回。
もぐもぐ。
「……うまい」
まるみも、カレーを口に含んだ。
「あつ」
「ふうふうしろよ」
「はふはふ。食べちゃった」
「ほんとに、おいしい」
まるみは、口をおさえて、でも笑っていた。
「おいしいね、とってもおいしい」
カサネも、ふうふうしてから、少しだけ口に入れた。
「あー、あつあつ」
三人は、食べた。
ふうふうして。
すくって。
牛乳を少し飲んで。
また、食べた。
教室の中に、スプーンの音がした。
かちゃ。
こと。
かちゃ。
まどから、中庭が見えた。
光が、つくえの上にのっていた。
カレーは、おいしかった。
ここで食べるから、もっとおいしかった。
うっけは、最後の一口を食べた。
おなかの中が、あたたかかった。
まるみは、空になったおさらを見て、ほうっと息をはいた。
「あー、おいしかった。……だ!」
「だ! じゃなくて、ごちそうさまだろ」
まるみは、にこっとした。
「ごちそうさま」
カサネも、おさらを見た。
「ごちそうさま」
うっけも、少しだけ背すじをのばした。
「ごちそうさま」
まどの外。
光が、すこしだけ変わったことに、まるみが先に気づいた。
中庭の木のかげが、さっきより長くなっていることに、カサネも、気づいた。
うっけだけは、まだカレーのことを考えていた。
おなかがいっぱいで。
口の中に、まだカレーのにおいがあって。
まどの外が少し変わったことに、気づいていなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
18話は5月25日 1:00に更新します。




