12話 おとなの人
このお話は全年齢向けの作品です。
気軽に読んでいただけたらうれしいです。
こつ。
こつ。
三人は、木の引き戸を見た。
「……だれか、来る」
まるみのこえが、ちいさくなった。
「カサネが言ってたやつか?」
「うん。センセイだと思う」
カサネが、引き戸を見たまま言った。
「思うってなんだよ」
こつ。
音が、その前で止まった。
がら。
引き戸が、開いた。
そこに、おとなの人が立っていた。
まるみが、ぽつんと言った。
「……ちょっとこわい、かも?」
おとなの人は、三人を見た。
カサネのところで、目を止めた。
それから、ほっとしたみたいに、息をはいた。
「カサネさん。目がさめたのですね」
カサネは、まばたきをした。
「……センセイ。なんとなく、おぼえてる」
うっけは、カサネと、その人を見くらべた。
「先生、なのか?」
おとなの人は、すこしだけ考えた。
「センセイで、いいと思います」
うっけは、え、とこえがでた。
「思います?」
「はい。カサネさんがそう、呼んでくれてますし」
「カサネが呼びかた、決めたのかよ。なんでそうなったんだよ」
カサネが、うっけを見た。
「たぶん、おとなの人だから」
「それ、てきとうすぎだろ」
「ねえ、センセイ。ひさしぶり、であってる?」
おとなの人は、カサネを見て、すこしだけ笑った。
「あってますよ。カサネさん」
カサネは、すこしだけ息をついた。
「はい」
まるみが、おとなの人を見上げた。
「わたしも、カサネみたいに呼んでいいですか」
「まるみさん。だいじょうぶですよ」
まるみのかおが、ぱっと明るくなった。
「え。こわくない気がしてきた」
「それなら、よかったです」
うっけが、すぐにつっこんだ。
「そこ、なんでだよ」
まるみが、ちょっとむっとした。
「じゃあ、センセイ!」
「はい。まるみさん」
うっけは、すこしだけまゆをよせた。
おとなの人は、うっけのほうを向いた。
「うっけさんも、センセイでいいですよ」
「ぼくは、まだ決めてない」
「そうですね」
「そこは、あっさりなんだな」
おとなの人は、うっけを見たまま、ゆっくりうなずいた。
「まだ決めていないなら、まだでいいです」
うっけは、すこしだけだまった。
「……まあ、それはそうだけど」
まるみが、あは、と笑った。
「うっけ、ちょっと負けたね」
うっけは、すぐにまるみを見た。
「負けてない!」
おとなの人が、にこっとした。
「うっけさん、負けていないのですね」
「そこ、まぜるな」
まるみが、また笑った。
それから。
まるみの笑いが、ぴたっと止まった。
「……え」
うっけも、止まった。
「ちょっと待って」
まるみが、うっけを見た。
「いま、というか、さっきから」
「うん、へん」
うっけは、おとなの人を見た。
「なんで、ぼくらの名前、知ってるんだよ」
「ああ」
おとなの人は、黒板の右下をゆびさした。
「そこです」
三人は、いっせいにそっちを見た。
黒板は、ずっとそこにあった。
でも、そこだけ、いまはじめて見たみたいだった。
まるみも、右下をゆびさした。
「……あった」
カサネも、黒板を見ていた。
「名前、ある」
うっけは、目をこらした。
白い字があった。
日直。
その下に、
うっけ。
まるみ。
カサネ。
三つの名前が、ならんでいた。
掲示板から消えていた名前が、そこにあった。
うっけは、目をはなせなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
13話は 5月20日 1:00に更新します。




