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「いやぁ久々だよな、何年ぶりだっけ?」
「えっと、5年位ですかね、その節はご迷惑おかけして本当にすみませんでした。」
「いいよ気にすんな、なんだっけ、旅に出たって聞いたぞ、どんな所を回ったのか土産話でも聞かせてくれよ。」
落ち着きのある洒落た店内、デレクが昔働いていた店なのである。デレクは5年ほど前にこの店を辞めさせて欲しいと急に伝えたきり一度も尋ねることはなく、お世話になっていたからこそ心の片隅でずっと申し訳ないと感じていたのだ、だがケインはそんな事本当に何も気にしていないようにはにかみ、昔と変わらない様子にデレクはなんだか嬉しくなった。それからカウンター席で2人並んで珈琲を飲みながら語らった。
「公爵様がお前を紹介してきた時はどうしてこんなチビって思ってたんだけど思いの外働き者でさ、意外とやるじゃんて感心してたんだよな、て思ったら盛大にやらかす時もあったけどな、ははっ、」
「あの時のケインさんは尖ってたからしっかりしないとって気張ってたんですよ、めっちゃ怖いし、珈琲カップ割った時殺されるなこれって虚無ってましたよ、ははっ、…」
昔を懐かしむ2人、デレクは10歳の時にリザリーに頼み仕事を紹介してもらったのだ、ケインは聞くところによるとなんでもナーセン公爵家の元騎士団副団長をしていた程の腕前だったそうだが戦による負傷で現役復帰する事が不可能になり、元公爵のすすめで店を始めリザリーがデレクを紹介したそうだ。
「あ~あったな、10歳の子どもが熱い珈琲で手真っ赤かに火傷して青い顔で、弁償します、給料から引いてくださいすみませんつって、いやいや何歳だよこのマセガキがって感じだったよ本当に、子どもは子どもらしく泣くなり喚くなりしろこっちが心配だわってな。」
「あ~でも分かりますうちの子も4歳児なのにマセてるというか賢すぎて逆に不安って言うか、大人よりよっぽど賢くて、俺と違ってやらかすことも無いんです……」
「え?子どもいるのか?」
「………あ。」
口を滑らせたと分かっていてももう引き返すことは出来ない、デレクは気まずそうにケインの顔を確認すると、呆れた顔でケインはデレクをジトっと見つめていた。
「……あのな、お前のそう言う秘密主義的な処昔から理解はしてるけどさ、流石にそんな大事なことはしっかり言えよ!!」
「はい…すみません…えっと実は子どもができまして今年で4歳になりました~、はは~…」
「で…結婚相手は誰だよ、てか旅って嘘つかなくても結婚しましたって言うくらい別にいいだろ本当水臭いなお前はよ。」
「えっと…結婚相手は居なくて、その…子どもと2人で旅に出たというか、出ていったというか。」
「……おい誰だそいつ、俺が一発拳をお見舞いしてやるから言え。」
デレクの言葉を聞いた途端ケインは拳に力を入れて自分の掌に打ち付けて立ち上がった。
「いやいや、違うんです相手にも出来たこと言わずに出たんです、だから腰を下ろしてくださいケインさん~!!!」
デレクは怒るケインをなだめようと立ち上がるケインの腰に腕を回しどうどうと、興奮した馬を宥めるようにしがみついた。
そんな事をしているとドアベルがチリンと綺麗な音を立てた、入ってきた男は険しい顔をしてケインに抱きつくデレクを引き剥がすと、デレクが抱きついていた所をパッパッと手で振り払い、指の間接をポキポキと鳴らし始めた。
「いやいやあの待って下さい、違うんです…すみませんすみません…すみません。」
デレクは冷や汗を垂らし、今にも自分に襲いかかって来そうな男をどうしたらいいのかわからずただ謝り続けた。




