6-1:可愛い息子に旅は似合わない。
とうとう始まった家族会議。
デレクは、出来ちゃったので迷惑かけたくないし家出しました。という説明を一通り済ませると、固唾を飲み込みこんだ。首を立てにゆっくりと振ったリザリー、これから一体なんとドヤされるのかと緊張が身体を走る、心拍数はまるで徒競走を走りきった後の速さで脈打っている。
「そうかわかった…それでいつからこっちに帰ってくるんだ?」
思っていた斜め上の返答にデレクは呆気らかんとして、目を丸くした、そして言葉を返そうとするがそこに割り込むヘイズ。
「荷物整理もあるだろうし来週位からはここでみんなで過ごせると思うわよ」
「次は私がデレク達に同行してもいいかな?どんな所で暮らしていたのかとても気になるんだ」
淡々と進む会話、デレクが黙って聞いているはずはなかった。
「ちょ!!…俺達がここに住むなんて一言も言ってない!!」
「ナーセン公爵…デレクの言う通りだろう、デレクとリアンはヴェーデルラで暮らすというのが順当な流れと言うものでは無いか。」
またまた隣から意味のわからないことを抜かす者がまた1名増えた、3対1となるとデレクが劣勢かと見受けられる。
「俺とリアンはまた隣国のあの街で暮らすつもりだ、だからその提案には乗れないよ。」
デレクの言葉に三人は暫く黙り込み、沈黙の間が続いた、そして次に発言した人物を誰も予想していなかった。
ーガチャー
デレク達のいる客間の扉が開くとそこには不安そうな顔をしたリアンが立っていた。
「父さん…僕はね叔母さん達の意見に賛成だよ。」
これで4対1だ…デレクはリアンのまさかの発言に驚きを隠せず、声を上げた。
「何言ってるんだリアン…」
「デレク、リアン君もこう言ってるんだから、こっちに帰ってきたらどう?」
ヘイズ達にそう声をかけられても、ただリアンだけを見つめて顔が青ざめていくデレク。
「父さん僕はね沢山考えたんだっ…」
「聞きたくないよ…すまないリアン、それは賛同できない。」
リアンの意見を遮り、デレクは自分の酷い顔を見せまいと下を向いた、そのままリアンの横を何も言わず素通りして部屋の外へと出ていった。
「…父さん…聞いてよ。」
ぼそっと呟くリアンの声はデレクに届く事は無く、意見を一つも聴くことなく、デレクに、父親に否定される事が初めてだったリアンは悲しみと共に一種の反抗心のようなものが芽生えた。
その日デレクは部屋に戻ってくることは無く、明日には帰ります。リアンをお願いします。と置き手紙を残し夕食にも就寝時間にも帰ってくることは無かった。
♢
あの子の話を聞く前に否定してしまった、きっと傷ついただろうな…だけど意見を聞いたところでどうにもならない、だって根本的にこの国が世界があの子を拒んでしまえば元も子も無いんだから。
背中を丸め下を向きながら歩くデレク、深いため息を付いていて、まるでお芝居でもしているのかと言うほど分かりやすい落ち込みようだった。
公爵邸に居るのも少し億劫で公爵領を練り歩くデレク、するととある男に声をかけられた。
「お前っ、デレクか!?」
黒い髪に黒い瞳、右目には縦に傷が入っている、人相の悪い男だがデレクは怯えること無くその男に返事をした。
「ケインさん!?…お、お久しぶりです!!」
頭を下げ何やら親しそうな雰囲気で会話を始めたのであった。
それもそのはず彼は昔デレクがお世話になっていたバイト先の店主なのだ。




