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そのころリアンは魔法陣が床に大きく書かれた教会のような広間に一人座り込んでいた。
ここは果たして何処なのか、と辺りを見回すと荒々しい足取りが聞こえてきた、だんだんその音は近づき、扉の前まで来ると大きな開閉音が部屋に響き渡った。
「デレク無事に帰ってきたのか!!!多少無理やりだろうがヘイズを理解し…君は‥誰だい…転送札で送られてきたということはヘイズの知り合いなのかい⁇」
デレクが転送されたのだと思い込んでいた為、そうではない小さな少年を訝しげな顔で覗き込むリザリーにリアンは多少戸惑いはしたが深呼吸をして、真っ直ぐ目を合わせた。
「初めまして僕はデレクの息子のリアンです。あのここはいったい何処なのか教えてください…」
♢
一方その頃デレク一行は。
「ゔっ…馬車が久しぶりだからなのかな…酔う…」
激しい馬車の進行に揺られてデレクの三半規管はそれはもう…てんてこ舞いである、悪心が込み上げ、誰が見ても察するだろう、お世辞でも良いとは言えない顔色だ。
「酔い薬を持ってきたから飲んでデレク…吐きそうな時は馬車を停めてもらうわね…」
クタァ~っと弱るデレクの背中を摩り、ヘイズは久しぶりの弟の世話をしていると言う喜びと、デレクを心配する気持ちでなんとも言えない気分になっていた。
「いや…転送札も無いしなるべく急いで欲しい、リアン1人で怖がってるかも知れない…ゔェッ」
「おいおい、吐くなよ汚ぇから」
デレクの嘔吐反射に反応したロトは、デレクの前に座っていた腰を横にずらしてうぇ~と言う視線を送っていた。
「お前はなんでいるんだよ…早く降りて徒歩で移動しろ。」
デレクが鬱陶しそうににしているとロトは腕を伸ばし肩に手を絡ませ、冗談ぽく唇を尖らせてデレクの頬に近づけるとデレクは全力で抵抗していた。
「そんなこと言うなよ、お前たちの護衛だよ相棒。」
そう、アルは先にリアンの元へ急ぐ為に馬車ではなく馬を走らせ、ロトにデレクやヘイズの護衛を頼んでいた。
「ゔぇ…もう無理吐く」
「タイミング改めろこの野郎」
そんな会話が続き、デレクにとっては永遠のような時間が過ぎると、ナーセン公爵邸の門前に到着していた。
「お、ヴェーデルラの馬車はもうあるのか。」
ヴェーデルラ公爵家の馬車、つまりアルが正式にナーセン公爵邸に訪問しているということである。
ここからはデレクの胃が持つかもたまいかが勝負だ、数年前に何も言わず消えた挙句、実の息子がいること、家族との真剣な話し合いが予定よりもずっと早くやってきたことに気が滅入っている。




