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4-1:夫夫喧嘩は犬も食わない。

「結婚しようデレク。」


目覚めてから暫く立った現在も続くアルの求婚にデレクは疲弊していた。


「アル頼むから俺達のことは放っておいてくれ、お前にはイヴが居るだろ。」


「だからどうして何時も彼奴の話になるんだ、彼奴とはお前が想像しているような関係には1度もなったことは無い」


言い合いが始まるとお互いこうと決めれば頑固になってしまう性分な為段々とエスカレートしていた。


「……ならなんであの子は…取り敢えず出て行ってくれ、リアンを家に戻した後はもう顔を見せないで欲しい。」


デレクは皺の寄った眉間を指でほぐし自分を落ち着かせていた。


此奴はいっつもそうだ急に現れて問題なんて一つもありません、みたいに真っ直ぐ話しかけてくる。何も知らないくせに分かってないくせに…

何も話していないせいだって本当は解ってる、だけど現状何も問題なんてなかったんだからこのままで良いだろ。


いいや …本当に問題は無かったのか?、今日だってリアンを迷子にさせた挙句見つけ出してきたのはアルだ、わかってる、俺の力じゃどう頑張ってもどうにか出来ない時もあるって、だけどアルの傍に居るのは駄目だ、駄目なんだよ。


デレクは混乱で思考がまとまらなかった、どうしたらいいか分からず取り敢えずアルから離れようと必死になった。


『そうよデリックさん、アルの傍に居ていいのは私だけなんだから、でないと息子さん消えちゃうわよ。』


デレクの脳裏に焼き付いている、綺麗だがそこはかとなく冷たい声がデレクの心に囁きかける、アルの傍に居るとリアンが消えてしまうぞと脅すように。


デレクはずっとそれを恐れているのだ。

予め抑制剤を服用していたらしいが発情期である彼の情緒が安定していないのは仕方の無い事だろう。

例えるならば細い針の上で何とか落ちないようバランスを取っているような精神状態なのだ。


「発情期に子どもの面倒が見られるのか。」


「……関係無いだろ俺とあの子の問題だ!!!」


カッとなりアルを力強く押して怒鳴り声を上げた、だが一つも動じることなくヒステリックなデレクを冷静に見つめるアル、そんな姿に無性に腹が立ち、アルと自分の差、未熟さを痛感して更に虚しくなったのか、目を背けたくなったのか、自分自身が家から出て行こうと、アルの元から離れようと玄関ドアを勢い良く開けた。


「待て行くな、話そうデレク…」


「話すことなんて無い…」


腕を掴まれたが振り切ってそのまま出て行こうとした、すると後ろから引き寄せ抱きしめられた。


「あの子は、リアンは俺達の子だろう。」


「離せ!!お前の子じゃない!!」


暴れてアルの腕を振り払おうとするがデレクの力では歯が立たなかった、さらに抱きしめる力は増して、デレクはあきらめたように脱力した。


「そんな嘘をついても無駄だ…どうして何も言わなかったんだ…」


耳元で囁く低いアルの声には、悲しみや怒り、また離れて消えてしまいそうなデレクへの恐怖心、様々な感情が入り乱れ少し震えているように聞こえた。


「違う、違うんだ、取らないでくれあの子を、俺から取り上げないでくれ…お願いだよ…アル…あの子が大切で仕方が無いんだ、幸せにしてあげたいんだよ。」


デレクの声は涙混じりで死に際の小鳥のようにか細い声になって行った。


「俺がいると幸せになれないと言う事か…そうなのかデレク。」


まるで殺人犯に命乞いするかのようなデレクの姿に、アルの力のこもった腕はだらんと落ちて、自分はここまで、愛した相手に拒絶されているのかと心を締め付けられた。


「ごめん…お前は悪くない、俺が臆病で仕方が無い人間だからだ。」


 デレクはアルの腕から抜け出し、心情を読み取ったのか下を向いたアルに謝罪の言葉を伝えた、だがアルの悲しみがそれだけで癒えるはずは無かった。


「……どうして理由を言わないんだ、どうしたらいいか教えてくれないとわからない、お前が居ないと耐えられない、たまに息が思う様に吸えなくなる。いっそこのまま連れ去って閉じ込めてしまおうか…」


 どうしてアルがここまで自分達にに執着するのかデレクは分からなかった、多少ではあるが好意を寄せてくれてることは理解していたものの、だがそれはあの日の夜に一度だけ体を重ねたデレクへのせめてもの配慮だとデレク自身は思っていた。


 俺は何かを見落としているのか、イヴを愛さないはずがないのに、どうしてこんな事を俺に言うんだよ。

血迷うな俺…イヴがあいつ本人が俺に公言してきたんだから。そしてあいつの言う通り…


『ねえデリックさん、私とアルは愛し合うのよ、だって神様がそう言っていたんですもの。貴方が神様の決めたお話を変えられると思っているの?、そんな恥知らずだからこうしてデリックさんに天罰が下ったのよ、本当に愚かな人』


 ヒロインとは思えない彼女の言動はまるで何かに取りつかれた様なうつろな目をしていた。デレクはそんなヒロインの言葉にずっと縛り付けられている。

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