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婚活相手が推しのエロゲ声優だった。気づいているとは言えないのに、隠し事ができない彼女がポンコツすぎる。  作者: 速水つばくろ


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20/23

幕間 秋葉原は狭いと言えど、鉢合わせするには都会すぎる

時系列は13話の時、美鳥サイドです。

 トイレから戻ると、いまだにひなちゃんは入り口前で呆然と突っ立っていた。


「なにしてんのひなちゃん、邪魔になっちゃうよー?」


「あ、ごめん……ふみちゃん。おかえり……」


 様子おかしくね?


「さっきのイケメンと冴えないおっさんはなんだったの?」


「えっ……!? あー、うん。そのー……」


 歯切れ悪いし。



 これはちょっと話を聞かないといけないかな?



「とりあえずじゃああっちのファミレスでも」


「あっちはだめ! 向こうの方行こう牛丼でもカツ丼でもいいから」


「いやそんなガッツリ食べんから。なにお腹すいたん?」



 結局、大通りを挟んで天丼屋へ。アキバって丼もの売ってるところ多いんだよね。男性向けって感じ。


 ブクロならオシャレなお店の方が割合多い気がするけど。



「んでー? どしたん、話きこかー?」



 座席に座ってひなちゃんに促してみるけど、ツッコミすら来ない。体調が悪い感じはしないけど……。


 しばらく待ってたら落ち着いて整理できたのか、ひなちゃんはぽつぽつ話し始めた。



「私ね、今婚活しててさ」



「ゴホッゴホッ」


 水飲みこんだ後で良かった!!


 危うく噴き出すところだったわー……。



「あー……結構重いかんじ?」


「いやいや! そんなことはないと思うんだけど」


 それにしては切羽詰まった顔してる気がする。


「で。婚活相手ってあのイケメンの若い子?」



「《《絶対違う》》」



 うわ怒った。なんでよ。


「あっちは弟なの!」


「あー……それはごめん。え、じゃあ婚活相手ってあの冴えない方?」


「冴えない方って言い方は失礼だと思う……」


「ああごめん」


 でも実際冴えないし。


 とはいえ、人間顔じゃない、か。


 ひなちゃんってそういう浮いた話全然興味持ってなさそうだったし。


 いや、友達でも普通わかんないんだけどねそういうの。オタクやってると余計わかんないと思う。


 なのに婚活してるってことは、関係が続いてるってことだと思うんだけど。



「で、何が問題?」


「うん……まさかこんなところで会うとは思ってなくて」


「あー……オタクって言ってなかったの?」


「ううん、言ってたよ。言ってたけど……こういうゲームやってるとは言ってなかったから……ドン引きされたかも……」


 そう言って手提げ袋を持ち上げるひなちゃん。


 そこに入っているのは私たちが出演してるゲーム作品だ。


 一応サンプルでは貰ってあるけど、オタクとしては買い支えたいってことで二人して買いに来ていた。


「あー……それは困るね……」



 ん? 待てよ?



「でもさ……その冴えない彼氏君も、さっきエロゲショップから出てきたんだよね?」


「だから冴えないは失礼だって。婚活相手だけど彼氏じゃないし……」


 ひなちゃんも冴えないの否定しないじゃん。彼氏は否定してるのに。


「その彼君はオタクなの?」


「えっと……違うけど、友達がそういうの詳しいから知ってるって言ってたよ? 私の弟も確かにオタクだし……」


「ふーん」


 自分は違うけど知り合いがオタクね……。


 それってオタク隠ししてる常套句じゃないの?



 普通、友達がオタクだからって一緒に秋葉原のエロゲショップについて行くかね?



「わかんないけどさ」


 私は関係ないし。あれこれ詮索しても仕方ないか。


「そういう友達がいるなら、別に引いたりもしないんじゃない?」


「そう……かなあ」


「だって今時オタクも何もないじゃん。アキバじゃなくても渋谷歩いてるギャルとかでもアニメ見てるしさ」


「ギャルって……」


「悪かったわね確かにアンタより年上のババアよあたしゃ」


 20代のピチピチ肌が羨ましいんだよちくしょう。


「そんなひた隠しして婚活とかできたもんじゃないでしょ。全然さらけ出してもいいと思うよ」


「そういうもんかなあ」


「知らない。でも一般論っぽくない?」


 仮にどっちだとしても、趣味を隠して上手くいったなんて聞いたことない。


 それは多分、男の方も同じだと思うけど。


 少なくとも言えることは。



 このままだったら破局するのは時間の問題ってこと。



「だから次チャンスあったらさ。いっそ思いっきりオタク全開にしたらいいよ」


 無責任かな?


 でも、友達としては適当にあしらえる話じゃないからね。


「わかった。やってみる。……でも怖いなあ」


 ……ふーん。


 ひなちゃんのその最後の呟きを聞いて、私は冴えない彼君のことを見直した。


 ひなちゃんがこんな風に怖がるってことは。


 もうひなちゃんにとってどうでもいい存在じゃない。



 ——これは、思ったより好感度高そうね。



 いつの間にかテーブルの上に届いていたお蕎麦を啜りながら、私はそんなことを思ったり。


 ……てか美味いな。チェーン店のくせに。

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