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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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38/43

第38話 昨日助けた村がありません

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!

38話は、不気味さをしっかり出しつつ、最後にカンダの《闘神の加護》へつながる**「物理攻撃に魔力が宿り始めた」変化**まで入れる。ガルバスの情報は「嘘だった」で消さず、真偽不明のまま残すね。


第38話 昨日助けた村がありません


「《魔王ガルバス》」


老人。


そう。


言った。


カンダ。


動かない。


「…………」


リホ。


ジュリア。


アリス。


誰も。


口。


開かない。


カンダ。


ようやく。


「親父が」


「魔王……?」


老人。


「親父?」


「あ」


カンダ。


老人。


見る。


「ガルバス」


「俺の親父なんです」


「…………」


今度は。


老人が。


止まる。


「魔王の……」


「息子?」


カンダ。


「その言い方やめて」


周囲。


村人。


ざわつく。


「魔王の息子……」


「勇者なのに?」


「本当に?」


カンダ。


頭。


抱える。


「まだ決まってないから!」


「親父が魔王って」


「まだ決まってないから!」


ジュリア。


「村長が言っただけだしね」


リホ。


「詳しく聞きましょう」


カンダ。


老人へ。


向き直る。


「教えてください」


「魔王ガルバスって」


「いつからこの辺にいるんですか?」


老人。


「…………」


考える。


「十年ほど前から」


カンダ。


「十年?」


リホ。


眉。


動く。


「十年……」


老人。


「はい」


「魔王ガルバスが現れてから」


「この地では」


「魔物の襲撃が増えました」


カンダ。


「本人を見たことは?」


「私はありません」


「じゃあ」


「誰から聞いたんですか?」


老人。


「それは……」


止まる。


「…………」


カンダ。


「村長?」


「いや」


老人。


困る。


「皆」


「知っております」


「誰に聞いたかは」


「…………」


「わからぬ」


四人。


顔。


見合わせる。


◇


その夜。


村。


壊れた。


家。


片づけ。


終わる。


カンダたちは。


無事だった。


家。


一軒。


借りる。


机。


囲む。


カンダ。


腕。


組む。


「親父が魔王」


リホ。


「まだわからない」


「わかってる」


「でも」


頭。


掻く。


「最悪の情報だよな」


ジュリア。


「本人を見た人はいない」


アリス。


「名前だけ」


カンダ。


「でも全員知ってる」


リホ。


「そこが変なのよ」


「ん?」


リホ。


机。


指。


軽く。


叩く。


「村長は」


「十年前からって言った」


「うん」


「でも」


「治療した女性に聞いたら」


「魔王ガルバスが現れたのは」


「三年前って言った」


カンダ。


「…………」


ジュリア。


「私が聞いた男は」


「去年って言ってた」


カンダ。


「は?」


アリス。


手。


上げる。


「私は」


「ずっと前から」


「ずっと前って?」


「ずっと前」


「参考にならねえ!」


アリス。


「村の人がそう言ったの」


「あっちか!」


リホ。


「おかしいでしょ?」


カンダ。


「…………」


「全員」


「嘘ついてる?」


ジュリア。


首。


振る。


「そういう感じじゃなかった」


「みんな」


「本気で言ってた」


カンダ。


「…………」


沈黙。


アリス。


「ねえ」


「何?」


「この村」


「静かだね」


カンダ。


「夜だからだろ」


「そうじゃなくて」


アリス。


窓。


開ける。


外。


見る。


「虫」


「鳴いてない」


「…………」


風。


吹く。


「犬も」


「猫も」


「鳥も」


「いない」


ジュリア。


「そういえば」


リホ。


顔。


上げる。


アリス。


鼻。


少し。


動かす。


「あと」


「匂い」


カンダ。


「匂い?」


「ご飯の匂い」


「土の匂い」


「人の匂い」


「何もない」


カンダ。


鼻。


使う。


「…………」


「俺には」


「よくわからん」


リホ。


「私は」


「別のところが気になる」


「何?」


「昨日」


「襲撃された家」


カンダ。


「うん」


「明日」


「もう一度見に行きましょう」


◇


翌朝。


カンダ。


外。


出る。


伸び。


する。


「…………」


止まる。


「ん?」


昨日。


魔物。


突っ込んだ。


家。


見る。


「…………」


普通。


建っている。


カンダ。


目。


擦る。


「…………」


もう一回。


見る。


普通。


「リホ」


「何?」


「家」


「そう」


「昨日」


「壁なくなってたよな?」


「なくなってた」


ジュリア。


近づく。


壁。


触る。


「新しく直した感じじゃない」


「古いまま」


カンダ。


「…………」


「一晩で」


「元に戻った?」


リホ。


「そんなわけないでしょ」


アリス。


「あ」


「何?」


昨日。


助けた。


子ども。


歩いている。


カンダ。


手。


上げる。


「おーい」


子ども。


見る。


「昨日」


「大丈夫だったか?」


「昨日?」


「家の下に」


「挟まってただろ」


子ども。


首。


傾げる。


「僕?」


「うん」


「ずっと家にいたよ」


「…………」


カンダ。


止まる。


母親。


出てくる。


「あら」


「旅の方」


カンダ。


「昨日」


「この子」


「助けましたよね?」


母親。


「何のことでしょう?」


「…………」


「家」


「燃えて」


「柱が倒れて」


「…………」


母親。


不思議そうに。


家。


見る。


「この家は」


「何もありませんでしたよ?」


カンダ。


ゆっくり。


リホを見る。


リホ。


頷く。


「やっぱり」


「おかしい」


◇


四人。


村。


歩く。


昨日。


荒れた。


畑。


元通り。


燃えた。


納屋。


元通り。


魔物が。


吹き飛んだ。


場所。


痕跡。


ない。


カンダ。


「…………」


「俺」


「昨日」


「《豪薙ぎ》したよな?」


ジュリア。


「した」


「木倒したよな?」


「倒した」


木。


立っている。


カンダ。


「…………」


「俺の一か月の稽古」


「幻だった?」


リホ。


「そこ?」


「大事だろ!」


ジュリア。


「稽古は本物でしょ」


「よかった」


アリス。


立ち止まる。


「リホ」


「うん」


二人。


同じ。


方向。


見る。


村。


中央。


井戸。


リホ。


「魔力」


アリス。


「あるね」


カンダ。


「何が?」


リホ。


「村全体」


「薄い魔力で覆われてる」


カンダ。


「昨日わからなかったの?」


リホ。


「襲撃直後だったし」


「私も賢者になったばかり」


アリス。


「私も」


「なんとなく変だなって」


カンダ。


「言ってよ!」


「なんとなくだったから」


ジュリア。


「で」


「何の魔力?」


リホ。


「幻術」


アリス。


「たぶん」


リホ。


「かなり大きい」


「村全体を」


「ずっと包んでる」


カンダ。


周囲。


見る。


普通に。


生活する。


村人たち。


「じゃあ」


「この村」


「全部幻?」


リホ。


「確かめる」


◇


井戸。


前。


リホ。


アリス。


並ぶ。


リホ。


「アリス」


「何?」


「《ルミ》を」


「村全体に」


「できる?」


「やってみる」


杖。


上げる。


リホ。


目。


閉じる。


魔力。


感じる。


「ただ光らせるんじゃなくて」


「この魔力の流れに」


「ぶつけて」


アリス。


「…………」


「難しい」


「できる?」


アリス。


笑う。


「たぶん」


「たぶん!?」


リホ。


「やるわよ」


二人。


杖。


上げる。


アリス。


「《ルミ》!」


光。


広がる。


リホ。


その光へ。


自分の。


魔力。


重ねる。


「そこ」


「もっと外」


「こう?」


「そう!」


光。


村。


覆う。


一瞬。


何も。


起きない。


カンダ。


「…………」


次。


世界。


揺れる。


「うわっ!」


家。


歪む。


道。


揺れる。


空。


一瞬。


暗くなる。


村人。


「な、何だ!?」


「地震!?」


さらに。


光。


強くなる。


バキン。


何かが。


割れる。


音。


◇


家。


消える。


畑。


消える。


井戸。


崩れる。


道。


石。


割れる。


綺麗だった。


村。


一瞬で。


朽ちる。


「…………」


カンダ。


言葉。


出ない。


そこに。


あったのは。


廃墟。


屋根。


ない。


家。


枯れた。


井戸。


草。


覆う。


道。


そして。


村人。


だけ。


残っている。


「…………」


老人。


自分の。


手。


見る。


「これは……」


手。


透けている。


女。


腕。


見る。


「なに……?」


子ども。


母親へ。


走る。


「お母さん!」


抱きつく。


でも。


二人の。


身体。


半透明。


「…………」


カンダ。


リホを見る。


リホ。


顔。


固い。


ジュリア。


小さく。


「ゴースト」


アリス。


「みんな?」


リホ。


「…………」


「たぶん」


村長。


震える。


「違う」


「我々は」


「ここで」


「暮らして」


「…………」


周囲。


見る。


廃墟。


自分たち。


見る。


「…………」


「いつから?」


誰も。


答えられない。


◇


一人の。


村人。


頭。


抱える。


「違う」


「違う……」


別。


村人。


「昨日」


「魔物が」


「村を……」


別。


老人。


「昨日?」


「十年前だ」


女。


「三日前よ!」


男。


「違う!」


「今日だ!」


声。


重なる。


カンダ。


「…………」


リホ。


「記憶も」


「混ざってる」


ジュリア。


「同じ出来事を」


「繰り返してた?」


アリス。


「ずっと?」


村長。


頭。


押さえる。


「魔王」


「ガルバス……」


カンダ。


反応。


する。


「その名前」


「どこで聞いた?」


「…………」


「わからない」


「思い出せ」


「…………」


老人。


苦しそうに。


顔。


歪める。


「ガルバス」


「ガルバスが」


「…………」


「違う」


「誰だ?」


カンダ。


「…………」


リホ。


カンダを見る。


「無理に聞かない方がいい」


「でも!」


「この人たちの記憶」


「壊れてる」


「今聞いても」


「本当かどうかわからない」


カンダ。


拳。


握る。


「…………」


「くそ」


◇


その時。


村人。


一人。


叫ぶ。


「違う!!」


身体。


黒く。


染まる。


「俺は!」


「まだ!」


形。


崩れる。


黒い。


霧。


目。


赤い。


ゴースト。


変わる。


次。


一人。


また。


一人。


「いやぁぁぁ!」


「消えたくない!」


「まだここに!」


次々。


姿。


変わる。


ジュリア。


短剣。


抜く。


「来る!」


リホ。


「待って!」


ゴースト。


一斉。


こちら。


向く。


理性。


ない。


怨念。


だけ。


残る。


アリス。


杖。


構える。


「数多い!」


ジュリア。


「物理」


「効かないよね?」


カンダ。


嫌な。


顔。


「またそれ?」


リホ。


「普通なら」


「効きにくい!」


「普通なら?」


「カンダは魔法で!」


カンダ。


「わかった!」


手。


上げる。


「《ライ》!」


雷。


走る。


数体。


消える。


でも。


多い。


「多っ!」


アリス。


「《ルミ》!」


光。


数体。


吹き飛ぶ。


リホ。


聖弓ルミナス。


構える。


魔力。


込める。


「《ボア》!」


炎の矢。


ゴースト。


貫く。


ジュリア。


フレイムダガー。


振る。


炎。


まとった。


刃。


ゴースト。


切る。


カンダ。


周囲。


見る。


まだ。


数十。


「…………」


「面倒くせえ」


リホ。


「何する気?」


カンダ。


魔神の斧。


両手。


握る。


「まとめて」


「終わらせる」


「待って!」


ジュリア。


「物理効かないって!」


カンダ。


踏み込む。


「――《豪薙ぎ》!!」


ブオォォォォォォン!!


魔神の斧。


横。


振り抜く。


衝撃。


走る。


ゴースト。


一体。


二体。


十体。


二十体。


全部。


光。


弾ける。


そして。


消えた。


「…………」


静寂。


カンダ。


斧。


止める。


「…………」


「終わった?」


アリス。


「終わった」


ジュリア。


「…………」


リホ。


魔神の斧。


見る。


カンダ。


「何?」


リホ。


「今」


「何した?」


「豪薙ぎ」


「そうじゃなくて」


「魔法」


「使った?」


「使ってない」


リホ。


近づく。


斧。


見る。


「…………」


ジュリア。


「物理」


「効いたよね」


アリス。


「全部」


カンダ。


「…………」


「魔神の斧だから?」


リホ。


首。


振る。


「違うと思う」


「じゃあ?」


リホ。


カンダの。


腕。


見る。


斧。


見る。


「魔力」


「何?」


「今」


「斧に」


「カンダの魔力が流れてた」


カンダ。


「…………」


「俺の?」


「うん」


「無意識に」


「身体から」


「斧へ」


アリス。


目。


細める。


「いっぱい」


カンダ。


「いっぱい?」


リホ。


少し。


考える。


「前より」


「明らかに増えてる」


「魔力が?」


「それだけじゃない」


カンダの。


腕。


見る。


「身体能力も」


「ずっと上がってる」


ジュリア。


「前からだね」


「そう」


リホ。


「でも最近」


「魔力まで」


「同じように伸び始めてる」


カンダ。


「…………」


「なんで?」


誰も。


答えない。


アリス。


ふと。


「加護」


カンダ。


見る。


「…………」


リホも。


止まる。


ジュリア。


「あ」


精霊女王。


以前。


言った。


カンダには。


すでに。


何かの。


加護がある。


だが。


何の加護か。


教えなかった。


そして。


イフリート。


最後。


残した。


言葉。


『また……お前か――』


カンダ。


魔神の斧。


見る。


「…………」


「俺の加護」


リホ。


「たぶん」


「関係ある」


カンダ。


「…………」


「やっぱり」


「精霊女王」


「何か知ってるよな」


アリス。


「知ってると思う」


カンダ。


「次会ったら」


「絶対聞く」


ジュリア。


「教えてくれる?」


カンダ。


「今度は逃がさない」


アリス。


「女王を?」


「言い方!」


◇


朝。


霧。


晴れる。


村。


だった場所。


完全な。


廃墟。


誰も。


いない。


家。


ない。


畑。


ない。


昨日。


助けた。


人々。


誰も。


いない。


カンダ。


立つ。


「…………」


「昨日」


「俺たち」


「何してたんだ?」


リホ。


「幻の中で」


「過去を見てた」


「たぶん」


ジュリア。


「じゃあ」


「魔物も?」


「幻」


アリス。


「助けた人も」


「ゴースト」


カンダ。


「魔王ガルバスも?」


沈黙。


リホ。


首。


振る。


「それは」


「わからない」


「幻の中に」


「本当の記憶が混ざってた可能性もある」


ジュリア。


「逆に」


「全部間違ってるかもしれない」


カンダ。


「…………」


空。


見る。


「昨日より」


「情報減ってない?」


アリス。


「減ったね」


「減ったよな!?」


リホ。


「でも」


「一つ増えた」


カンダ。


「何?」


リホ。


カンダを見る。


「あなた」


「また変になってる」


「増えた情報それ!?」


ジュリア。


「大事」


アリス。


「かなり」


カンダ。


魔神の斧。


担ぐ。


「…………」


「親父は魔王かもしれない」


「村は幻」


「俺はゴースト殴れるようになった」


少し。


考える。


「…………」


「山越えてから」


「わけわかんなくない?」


三人。


「うん」


カンダ。


ため息。


つく。


「帰りたい」


アリス。


「フェルニアいるよ」


「まだ帰らねえよ!」


廃墟。


背に。


四人。


歩き出す。


魔王ガルバス。


その名が。


本当なのか。


幻なのか。


まだ。


誰にも。


わからない。


――第38話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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