第35話 その勇者、お前かよ
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
《アルカ神殿》。
神官。
リホの前。
《叡智の書》。
淡く。
光る。
ページ。
一枚ずつ。
勝手に。
めくれる。
「…………」
リホ。
目。
閉じる。
光。
強くなる。
そして。
消えた。
神官。
「転職は完了した」
「今日から」
「あなたは《賢者》だ」
リホ。
目。
開ける。
「…………」
自分の。
手。
見る。
カンダ。
「どう?」
「どうって?」
「賢くなった?」
リホ。
「…………」
「殴るわよ」
「変わってない!」
アリス。
「仲間」
嬉しそう。
リホ。
「あなたと一緒にしないで」
「同じ賢者」
「認めたくない」
「ひどい」
ジュリア。
「レベルは?」
神官。
「当然」
「一からだ」
リホ。
「…………」
「やっぱり?」
アリス。
「楽しいよ」
リホ。
「あなたの場合」
「一日中魔物呼んでたからでしょ」
カンダ。
嫌な。
予感。
「まさか」
アリス。
笑う。
「吹く?」
全員。
「吹くな――」
ピィィィィィィィ!!
「遅い!!」
◇
森。
魔物。
出る。
一匹。
二匹。
五匹。
十匹。
リホ。
「多くない!?」
アリス。
「久しぶりだから」
「口笛に久しぶりとかあるの!?」
カンダ。
魔神の斧。
構える。
「来るぞ!」
ジュリア。
消える。
一匹。
蹴る。
もう一匹。
フレイムダガー。
斬る。
アリス。
杖。
上げる。
「《フュランド》!」
風。
魔物。
吹き飛ぶ。
リホ。
弓。
構える。
《聖弓ルミナス》。
矢。
放つ。
シュッ!
命中。
「お」
カンダ。
「いいじゃん!」
「まだ弓しか使ってない!」
「賢者要素ゼロ!」
「うるさい!」
魔物。
迫る。
リホ。
咄嗟。
手。
向ける。
「《ボア》!」
ボッ!
小さな。
炎。
魔物。
怯む。
リホ。
「…………」
カンダ。
「出た!」
アリス。
「ボア仲間」
カンダ。
「俺をそっちに入れるな!」
「カンダもボア」
「俺の方が先輩!」
◇
数日。
レベル上げ。
アリス。
吹く。
魔物。
来る。
倒す。
また。
吹く。
また。
来る。
リホ。
「ねえ」
「何?」
「あなた」
「前もこれやったの?」
「うん」
「よく心折れなかったわね」
「楽しかったよ」
「理解できない」
リホ。
少しずつ。
覚える。
《ヒル》。
《クルスト》。
《アクセ》。
《フュラ》。
そして。
魔法を。
覚えるたび。
止まる。
考える。
「なるほど」
カンダ。
「何が?」
「クルストって」
「ただ防御力を上げてるわけじゃないのね」
「魔力を薄く広げて」
「衝撃を逃がしてる」
アリス。
「へえ」
リホ。
「あなた知らないの?」
「使えるよ」
「仕組みは?」
「なんとなく」
「…………」
リホ。
頭。
押さえる。
「参考にならない」
アリス。
「使えればいいじゃん」
「私は理解したいの!」
ジュリア。
「性格出るね」
カンダ。
「同じ賢者なのにな」
アリス。
「私は感覚派」
リホ。
「あなたは適当派」
「ひどい」
◇
さらに。
数日。
アリス。
口笛。
ピィィィィ!!
カンダ。
「もう音聞くだけで嫌になってきた!」
茂み。
揺れる。
今度は。
多い。
「ちょっと待て!」
魔物。
左右。
前。
後ろ。
囲まれる。
カンダ。
「アリス!」
「何?」
「呼びすぎ!」
「今日は当たり」
「外れだよ!」
魔物。
一斉。
飛びかかる。
カンダ。
斧。
振る。
《豪薙ぎ》。
前方。
吹き飛ぶ。
だが。
後ろ。
別の魔物。
「カンダ!」
ジュリア。
叫ぶ。
カンダ。
振り向く。
近い。
「うわっ!」
咄嗟。
思う。
離れたい。
もっと。
向こう。
一瞬。
魔力が。
身体。
包む。
「――っ!」
シュン。
「…………」
カンダ。
消える。
魔物。
空振り。
アリス。
「…………」
ジュリア。
「…………」
リホ。
「…………」
百メートルほど。
離れた。
丘。
カンダ。
立っている。
「…………」
自分。
見る。
周囲。
見る。
遠く。
仲間。
見る。
「…………」
「何これぇぇぇぇ!?」
声。
届く。
アリス。
「カンダが飛んだ」
ジュリア。
「飛んだね」
リホ。
「何したのよ!」
カンダ。
遠くから。
叫ぶ。
「知らなぁぁぁい!!」
◇
戦闘。
終了。
カンダ。
走って。
戻る。
「はぁ……」
「はぁ……」
「遠い!」
リホ。
「飛んだのに戻りは走るのね」
「行き方わかんないんだよ!」
アリス。
「もう一回やって」
「簡単に言うな!」
カンダ。
集中。
前。
見る。
「……あっち」
魔力。
込める。
「…………」
シュン。
消える。
八十メートル。
先。
出る。
「できた!」
アリス。
「ラルー?」
リホ。
首。
振る。
「違う」
カンダ。
戻ってくる。
「何が?」
「ラルーなら」
「町単位で移動できる」
「これは」
「せいぜい百メートルくらい」
カンダ。
「…………」
「劣化ラルー?」
ジュリア。
「勇者ラルー」
アリス。
「ちっちゃいラルー」
カンダ。
「もっといい言い方ない!?」
リホ。
少し。
考える。
「《ラル》でいいんじゃない?」
カンダ。
「短くなった!」
「性能も短いから」
「ひどい!」
ジュリア。
「でも」
「使えるんじゃない?」
カンダ。
「百メートルだぞ?」
ジュリア。
「一瞬で」
「でしょ?」
「…………」
カンダ。
少し。
考える。
魔神の斧。
見る。
「…………」
「まあ」
「使い道はありそう」
アリス。
「逃げる時?」
「戦う時に使う!」
「逃げてもいいよ」
「勇者だぞ俺!」
◇
それから。
さらに。
レベル上げ。
リホ。
魔法。
増える。
弓。
魔法。
組み合わせる。
矢。
放つ。
その先。
《ボア》。
着弾。
同時。
炎。
「おお」
カンダ。
「それ格好いい」
リホ。
「でしょ?」
聖弓ルミナス。
淡く。
光る。
リホ。
少し。
笑う。
「これ」
「かなりいいわね」
カンダ。
「選んだ俺に感謝して」
「王様の宝箱でしょ」
「選んだのは俺!」
ジュリア。
「開けただけじゃない?」
「細かい!」
◇
数日後。
リホ。
「もういいと思う」
カンダ。
「レベル上げ?」
「うん」
アリス。
口。
尖らせる。
「もう吹かない?」
「吹かない」
「ちょっとだけ」
「吹かない」
「一回」
「吹かない!」
アリス。
しょんぼり。
カンダ。
「なんで口笛好きなんだよ」
「便利だから」
「便利だけど!」
◇
一行。
向かう。
《エミール村》。
今では。
以前より。
明るい。
人。
笑う。
泣く。
怒る。
普通に。
生きている。
カンダ。
「久しぶりだな」
ジュリア。
「前より自然」
アリス。
「笑ってる」
カンダ。
「今度は本物だな」
村。
抜ける。
森。
奥。
精霊女王の。
もとへ。
◇
精霊女王。
カンダたち。
見る。
「戻りましたか」
カンダ。
荷物。
降ろす。
「戻りましたよ」
「火蜜の実」
出す。
「あります」
さらに。
箱。
開ける。
「天雲樹の枝」
少し。
「三割くらいあります」
女王。
「…………」
「足りませんね」
カンダ。
「知ってるよ!」
「だから来たんだよ!」
女王。
「そうですか」
「そうですかじゃない!」
リホ。
「今年の枝は」
「もう別の勇者が受け取ったそうです」
女王。
「ああ」
カンダ。
止まる。
「…………」
「今」
「ああって言った?」
女王。
「言いました」
「何か知ってる!?」
その時。
後ろ。
声。
「カンダ?」
「…………」
振り向く。
レオン。
「やっぱりカンダか」
フィーネも。
一緒。
「久しぶり」
アリス。
「結婚した人」
レオン。
「その覚え方?」
カンダ。
「レオン」
「何してんの?」
「女王に用があって」
レオン。
背負っていた。
長い。
包み。
下ろす。
カンダ。
なんとなく。
見る。
「それ何?」
「これ?」
レオン。
紐。
ほどく。
布。
開く。
淡い。
光。
木。
太い。
枝。
「…………」
カンダ。
止まる。
リホ。
止まる。
ジュリア。
止まる。
アリス。
「あ」
カンダ。
ゆっくり。
近づく。
「…………」
「レオン」
「何?」
「これ」
指。
差す。
「何?」
「天雲樹の枝」
「…………」
カンダ。
顔。
引きつる。
「どこで手に入れた?」
「西方大陸」
「…………」
「天雲樹の守人から?」
「うん」
「…………」
レオン。
首。
傾げる。
「どうした?」
カンダ。
思い出す。
『今年の分は』
『先に来た勇者へ渡した』
「…………」
カンダ。
震える。
「お前か」
「え?」
「お前かぁぁぁぁぁぁ!!」
鳥。
飛ぶ。
レオン。
「何が!?」
カンダ。
枝。
指差す。
「それ!」
「俺ら!」
「それ取りに!」
「一か月歩いたんだよ!」
「一か月!?」
「着いたら!」
「もう勇者に渡したって!」
レオン。
「…………」
カンダ。
「その勇者!」
「お前かよぉぉぉぉ!!」
アリス。
「勇者が勇者に怒ってる」
ジュリア。
「枝を取った勇者と」
「枝を取りに行った勇者」
リホ。
「ややこしいわね」
レオン。
困る。
「いや」
「俺も必要だったわけじゃない」
カンダ。
「じゃあなんで持ってんの!?」
「旅の途中で」
「守人に会って」
「精霊と縁があるなら」
「持っていけって」
「渡されたんだ」
カンダ。
「使う予定は?」
「特にない」
「返せぇぇぇぇ!!」
レオン。
「俺のじゃないの!?」
◇
精霊女王。
枝。
見る。
リホが。
集めた。
古い枝。
見る。
「これなら」
全員。
止まる。
カンダ。
「…………」
「これなら?」
「足ります」
「…………」
カンダ。
「足りる?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
リホ。
量。
比べる。
「私の分が三割」
「レオンの枝で」
「残りもいけそうね」
カンダ。
膝。
つく。
「…………」
アリス。
「どうしたの?」
「長かった……」
ジュリア。
「火蜜の実」
「火山」
リホ。
「天雲樹」
「山」
アリス。
「海」
カンダ。
「クラーケン」
ジュリア。
「夜魔」
カンダ。
「町」
リホ。
「賢者」
カンダ。
「全部!」
「枝一本のために!」
精霊女王。
「一本ではありませんよ」
カンダ。
「そういう話じゃない!」
◇
レオン。
枝。
差し出す。
「使うなら」
「持っていけ」
カンダ。
「いいの?」
「俺は使わないし」
カンダ。
受け取る。
少し。
黙る。
「…………」
「ありがとう」
レオン。
笑う。
「どういたしまして」
カンダ。
「でも一か月は返して」
「無理だ」
「だよね!」
◇
精霊女王。
火蜜の実。
天雲樹。
枝。
前。
並べる。
風。
吹く。
空気。
変わる。
「では」
女王。
両手。
広げる。
「必要なものは」
「すべて揃いました」
カンダ。
「…………」
アリス。
目。
輝く。
「鳥?」
「はい」
ジュリア。
「やっと」
リホ。
「不死鳥」
女王。
空。
見る。
「《フェルニア》を」
「呼びましょう」
カンダ。
拳。
握る。
「やっと!」
アリス。
「焼き鳥?」
カンダ。
振り向く。
「まだ言うの!?」
――第35話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




