第34話 商人、やりきりました
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
《リホタウン》。
入口。
看板。
大きく。
書いてある。
《ようこそ! リホタウンへ!》
カンダ。
看板。
見る。
リホ。
見る。
もう一度。
看板。
見る。
「…………」
「これ」
「自分で付けた?」
リホ。
眉。
ひそめる。
「付けるわけないでしょ」
「よかった」
「何が?」
「ちょっと心配した」
「何を?」
ジュリア。
看板。
見上げる。
「じゃあ誰が付けたの?」
リホ。
ため息。
「知らない」
「知らないの!?」
「最初は」
「旅商人が」
「リホさんのところ」
「って呼んでたのよ」
「それが」
「リホの村」
「リホの町」
「いつの間にか」
「リホタウン」
カンダ。
「育ってる」
アリス。
「町と一緒に」
リホ。
「名前は育たなくていいの」
セイン。
「もう定着しているようだが」
リホ。
看板を見る。
「変えたい」
町人。
通りすがる。
「リホさん!」
「東の商隊入りました!」
リホ。
「倉庫二番!」
「荷下ろし終わったら宿へ案内して!」
「はーい!」
別。
町人。
「リホさーん!」
「橋の補修終わりました!」
「じゃあ午後から荷馬車通して!」
「了解!」
カンダ。
「…………」
「無理じゃない?」
リホ。
「何が」
「名前変えるの」
「…………」
リホ。
看板を見る。
「変える」
アリス。
「無理そう」
「変える!」
◇
町。
歩く。
カンダ。
ずっと。
周囲。
見る。
「…………」
「本当に町じゃん」
ジュリア。
「昨日も言ってた」
「だって」
「前ここ来た時」
「家十軒くらいだっただろ?」
「うん」
「畑あって」
「倉庫一個あって」
「建てかけの家があって」
「うん」
カンダ。
指。
差す。
「今」
「宿屋ある」
「市場ある」
「鍛冶屋ある」
「倉庫増えてる」
「道広い」
「橋ある」
「何したの?」
リホ。
「言ったでしょ?」
「何を?」
「道を直す」
「橋を作る」
「倉庫を増やす」
「宿を作る」
「商人を呼ぶ」
「市場を作る」
「全部やっただけ」
「全部やったの!?」
リホ。
「やるって言ったもの」
セイン。
「それで」
「ここまで人が集まるのか?」
リホ。
「集まるわ」
即答。
「人が来る理由を作れば」
「人は来る」
カンダ。
「…………」
リホ。
指。
差す。
「西と東をつなぐ街道」
「近くに川」
「農地」
「木材」
「小さいけど鉱石も取れる」
「元々」
「場所は悪くなかったの」
「ただ」
「通る理由がなかった」
「だから」
「通る理由を作った」
ジュリア。
「橋」
「そう」
「宿」
「そう」
「市場」
「そう」
アリス。
「ご飯」
「大事」
カンダ。
「そこだけ反応早いな」
リホ。
「定期市を始めて」
「商人に声をかけて」
「最初の一か月は」
「倉庫代を安くした」
セイン。
「一か月?」
「そう」
カンダ。
「俺ら」
「一か月かけて木見に行ってたんだけど」
リホ。
「知ってる」
「その一か月でこれ!?」
「忙しかったわ」
「忙しいで済む!?」
◇
広場。
ロイド。
木材。
運んでいる。
「お」
「戻ったか」
カンダ。
「ロイド!」
ロイド。
魔神の斧。
見る。
「また斧変わってないか?」
「変わった」
「でかいな」
「重い」
「お前が?」
「そこ驚くよな」
ミレナ。
宿。
出てくる。
「あら!」
「おかえり!」
アリス。
「ただいま」
ミレナ。
リホを見る。
「もう説明した?」
「町のこと?」
「うん」
「だいたい」
ミレナ。
笑う。
「この子」
「本当に全部やったのよ」
リホ。
「みんなもやったでしょ」
「指示したのあなた」
ロイド。
「俺は」
「護衛と」
「揉め事の処理」
ミレナ。
「私は宿と酒場」
ノエル。
向こうから。
歩いてくる。
「私は診療所まわり」
カンダ。
「ノエル!」
「久しぶり」
ノエル。
笑う。
「おかえりなさい」
セイン。
「俺もいる」
ノエル。
「あら」
セイン。
「……それだけか?」
「何を期待してるの?」
カンダ。
「レンタル終了できるぞ」
セイン。
「その言い方やめろ」
◇
ロイド。
町。
見渡す。
「最初は」
「橋だけ直す予定だったんだ」
ミレナ。
「それが」
「橋を直したら商人が来る」
「商人が来たら泊まる場所がいる」
「宿を作ったら食材がいる」
「市場を開いたら職人も来る」
ノエル。
「人が増えたから」
「診療所も必要になって」
ロイド。
「気づいたらこうなってた」
カンダ。
「怖い」
リホ。
「何が?」
「商人」
「失礼ね」
ジュリア。
「でも」
「リホらしい」
リホ。
少し。
笑う。
◇
カンダ。
「あ」
「そうだ」
荷物。
探る。
「リホ」
「何?」
「これ」
白銀。
弓。
差し出す。
リホ。
止まる。
「…………」
「何これ」
「《聖弓ルミナス》」
「王都の宝箱」
セイン。
「そこだけ聞くと盗品だな」
カンダ。
「王様にもらった!」
「一応な」
リホ。
弓。
受け取る。
軽く。
弦。
触る。
淡い。
光。
「……すごい」
カンダ。
「魔力と相性いいらしい」
「今の弓より」
「たぶん強い」
リホ。
「私に?」
「うん」
「帰ったら渡そうと思って」
リホ。
少し。
黙る。
「…………」
「ありがとう」
カンダ。
「おう」
アリス。
「カンダが選んだ」
「言わなくていい!」
ジュリア。
「ちゃんとリホのこと考えてた」
「やめろ!」
リホ。
笑う。
「大事にする」
カンダ。
「それならよし」
◇
夜。
宿。
カンダ。
机。
突っ伏す。
「それでさ」
リホ。
「何?」
「天雲樹」
「うん」
「一か月かけて」
「行ったんだよ」
「うん」
「ちゃんとあった」
「よかったじゃない」
「でも」
「枝なかった」
「…………」
リホ。
「木はあったのに?」
「今年の分」
「勇者に渡したって」
「…………」
ジュリア。
「先に来てたらしい」
アリス。
「勇者」
カンダ。
「勇者多すぎ!」
リホ。
「それで?」
「来年まで待てって」
リホ。
「待つの?」
「待つわけないだろ!」
「よね」
カンダ。
「王都戻って」
「情報集めて」
「ここに来た」
リホ。
「天雲樹の枝」
「そんなに必要なの?」
カンダ。
「フェルニアの巣に使う」
「量?」
「結構いる」
リホ。
考える。
「…………」
「それなら」
「少しあるわよ」
「…………」
カンダ。
顔。
上げる。
「何が?」
「天雲樹の枝」
「…………」
「は?」
◇
倉庫。
リホ。
鍵。
開ける。
箱。
出す。
「これ」
蓋。
開く。
淡く。
光る。
木。
欠片。
細い。
枝。
加工前。
加工済み。
いろいろ。
カンダ。
「…………」
「なんで?」
リホ。
「市場に」
「珍しい木材を扱う商人が来たの」
「その中に」
「天雲樹の古い端材があった」
ジュリア。
「端材?」
「昔」
「護符とか」
「杖とか」
「装飾品に使われてたみたい」
セイン。
一本。
手に取る。
「魔力は残っているな」
リホ。
「他にも」
「薬師」
「家具職人」
「古物商」
「持ってる人から」
「少しずつ買った」
カンダ。
「…………」
「どのくらい?」
セイン。
量。
見る。
「必要量が」
「以前聞いた程度なら」
少し。
考える。
「三割ほどだ」
カンダ。
「三割!?」
リホ。
「たぶん」
カンダ。
両手。
頭。
抱える。
「俺ら!」
「一か月歩いて!」
「ゼロだったの!」
リホ。
「大変だったわね」
「お前は!」
「町作りながら!」
「三割集めたの!?」
リホ。
首。
傾げる。
「商人だから」
「商人すげえな!!」
アリス。
「便利」
リホ。
「便利って言わない」
ジュリア。
「でも便利」
「ジュリアまで」
◇
カンダ。
箱。
見る。
「あと七割か」
リホ。
「そうね」
「でも」
「天雲樹そのものがなくても」
「昔流通した物を集めれば」
「いけるかもしれない」
セイン。
「時間はかかるな」
リホ。
「情報は残してある」
「どこに?」
リホ。
帳簿。
出す。
厚い。
「ここ」
カンダ。
「…………」
「リホ」
「何?」
「帰ってきて」
「本当に助かる」
リホ。
「まだ帰るって言ってないけど」
カンダ。
「え?」
「え?」
◇
夜。
町。
灯り。
窓。
宿。
酒場。
市場。
まだ。
人。
歩いている。
リホ。
丘。
立つ。
カンダ。
隣。
「どうした?」
「見てた」
「町?」
「うん」
少し。
沈黙。
リホ。
「最初」
「本当に」
「何もなかったの」
「知ってる」
「橋も」
「半分壊れてた」
「宿もなかった」
「商人なんて」
「ほとんど通らなかった」
カンダ。
町。
見る。
「今は」
「うるさいくらいいるな」
「そうね」
リホ。
少し。
笑う。
「もう」
「私がいなくても」
「回ると思う」
カンダ。
「…………」
「いいの?」
「うん」
「ロイドたちに」
「全部引き継ぐ」
「全部?」
「帳簿」
「商人との契約」
「市場」
「倉庫」
「橋」
「街道」
「宿」
カンダ。
「多いな」
「作ったからね」
ロイド。
後ろ。
「任せろ」
ミレナ。
「宿と市場は任せて」
ノエル。
「困ったら」
「みんなで考えるわ」
リホ。
三人を見る。
「お願い」
ロイド。
「おう」
リホ。
町へ。
視線。
戻す。
「仕組みは作ったから」
「後は」
「ここにいる人たちで」
「回せる」
カンダ。
「…………」
「やりきった?」
リホ。
少し。
考える。
「うん」
「やりきった」
◇
その夜。
久しぶり。
四人。
同じ。
テーブル。
カンダ。
ジュリア。
アリス。
リホ。
そして。
端。
セイン。
「俺もいる」
カンダ。
「レンタルだから」
「まだ言うのか」
リホ。
「ねえ」
三人。
見る。
「私」
少し。
間。
「賢者になろうと思う」
カンダ。
止まる。
ジュリア。
見る。
アリス。
目。
輝く。
「賢者!」
リホ。
「まだなってない」
アリス。
「仲間」
「まだ」
カンダ。
「…………」
「もういいのか?」
リホ。
カンダを見る。
「うん」
「商人として」
少し。
笑う。
「やりたいこと」
「ちゃんとやったから」
カンダ。
何も。
言わない。
リホ。
続ける。
「前は」
「みんなが強くなって」
「私だけ」
「何も変わってない気がした」
「だから」
「賢者になった方がいいのかなって」
ジュリア。
「うん」
「でも」
リホ。
町。
見る。
「ここに残って」
「わかった」
「私」
「商人でも」
「できること」
「いっぱいあった」
カンダ。
「町作ったしな」
「そう」
リホ。
笑う。
「だから」
「逃げるためじゃなくて」
「次に進みたい」
「もっと」
「できることを増やしたい」
アリス。
「じゃあ」
「賢者?」
リホ。
「うん」
「今度は」
「ちゃんと」
「なりたい」
カンダ。
少し。
笑う。
「そっか」
「じゃあ行くか」
リホ。
「どこへ?」
「アルカ神殿」
セイン。
「遠いぞ」
全員。
「…………」
カンダ。
アリスを見る。
アリス。
杖。
持つ。
「ラルー?」
カンダ。
「使えるところまで」
「全部魔法で行く」
ジュリア。
「歩かない?」
「歩かない」
「もう一か月歩いた!」
リホ。
「何があったのよ」
「木!!」
◇
数日後。
《アルカ神殿》。
神官。
カンダたちを見る。
「おや」
アリス。
見る。
「あの時の」
「遊び人か」
アリス。
「賢者です」
「そうだったな」
「ちゃんと覚えて」
神官。
リホを見る。
「今度は」
「そちらか」
リホ。
一歩。
前。
荷物。
開く。
取り出す。
一冊。
《叡智の書》。
神官。
目。
細める。
リホ。
本。
両手。
持つ。
「お願いします」
少し。
間。
そして。
まっすぐ。
「今度は」
「私が賢者になります」
――第34話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




