第33話 町じゃん
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
王都ヴェルグ。
王城。
「では」
王。
地図。
指す。
「天雲樹はここだ」
カンダ。
「遠い」
「遠いな」
「どのくらい?」
「徒歩なら」
王。
少し。
考える。
「一月ほどか」
「一か月!?」
アリス。
「遠足?」
「旅行だよ!」
ジュリア。
「帰りも入れたら二か月だね」
「言うな!」
セイン。
地図を見る。
「途中までは街道がある」
「その先は?」
「山道だ」
「やっぱり山かよ!」
カンダ。
頭。
抱える。
王。
「急ぐのか?」
「急ぎますよ!」
「不死鳥呼ばなきゃいけないんです!」
「そのために」
「火山行って!」
「山登って!」
「海渡って!」
「クラーケン倒して!」
「夜魔まで倒したんです!」
王。
「苦労しているな」
「他人事ぉ!」
◇
謁見。
終了。
カンダたち。
廊下。
歩く。
「一か月かぁ……」
アリス。
「ご飯いっぱい必要だね」
カンダ。
止まる。
「…………」
「リホ」
「食料――」
「いない」
ジュリア。
「四回目」
「もうやめよう!」
セイン。
「いい加減慣れろ」
カンダ。
「お前ら冷たくない!?」
歩く。
曲がる。
そして。
カンダ。
止まる。
「…………」
扉。
見る。
「何だ?」
セイン。
カンダ。
扉。
見る。
その横。
宝箱。
見る。
「…………」
「宝箱」
セイン。
「そうだな」
「王城」
「ああ」
「宝箱」
「ああ」
「開ける」
「なぜ!?」
カンダ。
不思議そうな。
顔。
「勇者だから」
「理由になってない!」
アリス。
「勇者は宝箱開けるよ」
ジュリア。
「基本」
「どこの基本だ!」
カンダ。
宝箱へ。
手。
伸ばす。
「待て!」
セイン。
掴む。
「人の城だぞ!」
「前もあった!」
「前が異常なんだ!」
「王様にもらった!」
「今回は許可取ってないだろ!」
カンダ。
「じゃあ」
振り向く。
兵士。
「これ開けていいですか?」
兵士。
「陛下に確認します」
「確認するのか!?」
セイン。
頭。
抱える。
◇
数分後。
王。
来た。
「何をしている」
カンダ。
宝箱。
指す。
「開けていいですか?」
「…………」
王。
宝箱。
見る。
カンダ。
見る。
「なぜ?」
「勇者だから」
「…………」
王。
側近を見る。
側近。
首を。
横に振る。
王。
「まあよい」
「いいの!?」
セイン。
「王!?」
カンダ。
「やった!」
開ける。
ガチャ。
「…………」
入っていたのは。
斧。
「また斧」
アリス。
「斧だね」
ジュリア。
「カンダ用だね」
セイン。
「なぜ都合よく入っている」
巨大な。
斧。
黒い。
刃。
柄には。
古い。
文字。
大きさは。
大地の戦斧と。
それほど。
変わらない。
カンダ。
手。
伸ばす。
持つ。
「…………」
止まる。
ジュリア。
「どうしたの?」
カンダ。
両手。
使う。
ゆっくり。
持ち上げる。
「…………重っ!!」
三人。
「え?」
カンダ。
「重い!」
アリス。
「カンダが?」
ジュリア。
「重いって言った」
セイン。
「珍しいな」
カンダ。
「俺だって重い物くらいあるわ!」
王。
目。
見開く。
「持ち上げたか」
「え?」
「それは」
王。
斧を見る。
「《魔神の斧》」
「魔神」
「古くから王家に伝わる武器だ」
「極端に重く」
「歴代の騎士」
「戦士」
「誰一人として」
「まともに振るえなかった」
カンダ。
「…………」
斧。
見る。
試しに。
振る。
ブオンッ!!
空気。
鳴る。
兵士。
後ろへ。
下がる。
王。
「振れるのか」
カンダ。
「重いけど」
もう一度。
ブンッ!
「振れます」
「…………」
王。
考える。
「なら」
「やる」
「え?」
「持っていけ」
カンダ。
「いいの!?」
セイン。
「本当にいいのか!?」
王。
「誰も使えぬ武器を」
「宝箱に入れておくよりはよい」
カンダ。
魔神の斧。
見る。
「王様……」
「なんだ」
「いい人ですね」
「今さらか」
「依頼してこなければもっと好きです」
「それは無理だ」
「やっぱり嫌いです」
◇
もう一つ。
小さな。
宝箱。
ジュリア。
「こっちもある」
セイン。
「まだ開けるのか!?」
王。
「もう好きにしろ」
「王が諦めた!」
開ける。
中。
白銀。
弓。
細い。
装飾。
光を。
受けると。
弦が。
淡く。
輝く。
王。
「《聖弓ルミナス》か」
カンダ。
「強い?」
「魔力との相性がよい」
「魔力を持つ者が扱えば」
「矢へ力を乗せることもできる」
カンダ。
弓。
持つ。
「…………」
ジュリア。
「使うの?」
「いや」
弓を見る。
「これ」
「リホに良くない?」
アリス。
「あ」
ジュリア。
「いいかも」
セイン。
「本人はいないぞ」
カンダ。
「帰ったら渡す」
アリス。
「お土産」
カンダ。
「まあ」
「そんな感じ」
ジュリア。
「私には?」
カンダ。
「お前」
「フレイムダガー持ってるだろ」
「拾った」
「イフリートから!」
「落ちてた」
「俺が倒した後にな!」
「だから拾った」
セイン。
「まだ揉めていたのか」
◇
王都。
外。
試し振り。
カンダ。
魔神の斧。
構える。
「重い」
でも。
今までとは。
違う。
重さ。
振れば。
重さそのものが。
力になる。
前方。
訓練用。
木人。
五体。
カンダ。
腰。
落とす。
横。
一閃。
「――《豪薙ぎ》!」
ブオォォォン!!
轟音。
一体。
二体。
三体。
四体。
五体。
まとめて。
吹き飛ぶ。
さらに。
後ろの。
柵。
バキバキバキッ!!
「…………」
カンダ。
「おお」
アリス。
「広い」
ジュリア。
「便利」
セイン。
「柵まで壊れたぞ」
カンダ。
「…………」
王。
「弁償はいらぬ」
「やっぱりいい王様!」
セイン。
「評価が軽い!」
カンダ。
魔神の斧。
肩へ。
担ぐ。
ずしり。
「よし」
「これで行く」
大地の戦斧。
そして。
聖弓ルミナス。
王へ。
振り返る。
「こっちは?」
王。
「置いていけ」
「ですよね」
大地の戦斧。
役目。
終える。
カンダ。
少しだけ。
見る。
「世話になったな」
アリス。
「斧に言ってる」
「いいだろ別に!」
◇
そして。
一か月。
長かった。
魔物。
出た。
《豪薙ぎ》。
吹っ飛んだ。
盗賊。
出た。
魔神の斧を。
見た。
逃げた。
雨。
降った。
濡れた。
山。
登った。
また。
山だった。
カンダ。
「なんで俺の旅」
「山ばっかりなの?」
アリス。
「勇者だから?」
「勇者って登山家なの!?」
セイン。
「知らん」
ジュリア。
「でも」
「もうすぐ」
木々。
開ける。
カンダ。
顔。
上げる。
「…………」
巨大な。
木。
雲へ。
届くほど。
高い。
幹。
何人。
並んでも。
囲めない。
葉。
淡く。
光る。
風。
吹くたび。
鈴のような。
音。
「…………」
カンダ。
震える。
「木」
アリス。
「木だね」
「ある」
ジュリア。
「あるね」
「本当にある!!」
カンダ。
両手。
上げる。
「天雲樹あったぁぁぁぁ!!」
セイン。
「木を見つけただけで喜びすぎだ」
カンダ。
「前回なかったんだよ!」
アリス。
「今回はあったね」
「それだけで嬉しい!」
◇
天雲樹。
守る。
小さな。
集落。
カンダたち。
事情。
話す。
年老いた。
守人。
頷く。
「不死鳥フェルニア」
「その巣を作るためか」
カンダ。
「はい!」
「枝一本!」
「一本でいいんです!」
「ください!」
守人。
「ない」
「…………」
カンダ。
天雲樹。
見る。
枝。
いっぱい。
見る。
守人。
見る。
「…………」
「あるじゃん」
「採取できる枝はない」
「いっぱいあるじゃん!」
守人。
「天雲樹の枝は」
「勝手に切ることはできぬ」
「木を弱らせる」
「年に一度」
「十分な力を蓄えた枝が」
「自然に落ちる」
カンダ。
「なるほど」
「それください」
「もうない」
「…………」
「なんで?」
守人。
「先に来た勇者へ渡した」
「…………」
カンダ。
止まる。
「勇者?」
「ああ」
「勇者だ」
「…………」
カンダ。
空。
見る。
「勇者ぁぁぁぁぁぁ!!」
鳥。
飛ぶ。
アリス。
「カンダも勇者だよ」
「今はそこじゃない!」
ジュリア。
「いつ来たの?」
守人。
「少し前だ」
カンダ。
「次は?」
「来年」
「…………」
「来年?」
「うむ」
「一年?」
「そうだ」
カンダ。
「待てるかぁぁぁぁぁぁ!!」
セイン。
「一か月歩いたのにな」
「言うなぁぁぁぁ!!」
◇
翌日。
カンダ。
「帰る」
セイン。
「早いな」
「ここにいても枝生えないだろ!」
アリス。
「歩く?」
カンダ。
「嫌だ」
「一か月」
「もう歩かない」
アリス。
「じゃあ」
杖。
上げる。
「《ラルー》」
光。
四人。
包む。
◇
町。
到着。
さらに。
《ラルー》。
◇
別の町。
さらに。
《ラルー》。
◇
さらに。
《ラルー》。
◇
王都ヴェルグ。
カンダ。
地面。
触る。
「…………」
「文明」
セイン。
「魔法だ」
「一か月が!」
「一か月が一日で戻れた!」
セイン。
「行ったことのある場所にしか飛べん」
「知ってる!」
「行きは無理だった!」
「知ってるけど悔しい!」
アリス。
「帰りは楽だったね」
「それだけが救い!」
◇
王城。
王。
「枝は?」
カンダ。
「ありませんでした」
「なぜ?」
「勇者が持っていきました」
王。
「お前も勇者では?」
「そういう問題じゃない!」
王。
「来年まで待つか?」
「待ちません!」
即答。
王。
「ではどうする」
カンダ。
「それを今から考えます!」
「胸を張るな」
◇
酒場。
情報。
集める。
カンダ。
机。
突っ伏す。
「枝……」
アリス。
「枝」
ジュリア。
「枝一本」
セイン。
「難航しているな」
「火蜜の実より難しいと思わないじゃん!」
酒場。
ざわざわ。
商人たち。
冒険者たち。
話。
飛び交う。
「そういや」
近く。
商人。
声。
「最近」
「妙な町ができたらしいぞ」
カンダ。
顔。
上げない。
「へえ」
「少し前まで」
「小さな村だったらしい」
「へえ」
「それが急に」
「商人が集まって」
「市場ができて」
「宿ができて」
「街道まで整備されてる」
「へえ」
ジュリア。
顔。
上げる。
「…………」
アリスも。
顔。
上げる。
商人。
続ける。
「荷馬車の中継地になって」
「職人も集まり始めてるとか」
カンダ。
ゆっくり。
顔。
上げる。
「…………」
ジュリア。
「カンダ」
「うん」
アリス。
「もしかして」
「まだ」
「まだわからない」
商人。
酒。
飲む。
「名前が」
「確か」
カンダたち。
見る。
「《リホタウン》」
「…………」
沈黙。
カンダ。
ジュリア。
アリス。
三人。
顔。
見合わせる。
セイン。
「…………」
「何だ?」
カンダ。
「まさか」
ジュリア。
「リホだね」
アリス。
「リホだ」
セイン。
「待て」
「同じ名前なだけかもしれん」
カンダ。
「いや」
「やりそう」
ジュリア。
「やるね」
アリス。
「やる」
セイン。
「そんなにか?」
三人。
「うん」
セイン。
「…………」
カンダ。
立つ。
「場所どこですか!?」
商人。
場所。
聞く。
知っている。
村。
だった。
場所。
「…………」
カンダ。
「アリス」
「うん」
杖。
上げる。
「《ラルー》!」
◇
光。
消える。
カンダ。
目。
開ける。
「…………」
人。
いる。
荷馬車。
走る。
店。
並ぶ。
市場。
ある。
宿。
ある。
倉庫。
増えてる。
道。
広い。
建物。
増えてる。
「…………」
カンダ。
地図。
見る。
周囲。
見る。
地図。
見る。
「…………」
ジュリア。
「ここだよね」
アリス。
「ここだね」
セイン。
「…………」
絶句。
入口。
大きな。
看板。
《ようこそ! リホタウンへ!》
「…………」
カンダ。
口。
開く。
「町じゃん」
ジュリア。
「町だね」
アリス。
「リホタウン」
セイン。
「待て」
「俺たちが出てから」
「どれくらいだ?」
誰も。
答えない。
向こう。
声。
「ちょっと!」
聞き覚え。
ある。
声。
「その荷物は市場の倉庫!」
「そっちは宿屋!」
「橋の工事は午後から!」
「商隊は西門から入れて!」
カンダたち。
見る。
人。
人。
人。
その中。
帳簿。
抱えた。
女。
走り回っている。
「…………」
カンダ。
「リホ」
リホ。
止まる。
こちら。
見る。
「あ」
普通に。
手。
上げる。
「おかえり」
カンダ。
町。
見る。
リホ。
見る。
もう一度。
町。
見る。
「…………」
「何したの?」
リホ。
首。
傾げる。
「商売」
カンダ。
「商売って」
町。
指す。
「こうなるの!?」
――第33話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




