第32話 勇者が多すぎてわかりません
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
『《斧の勇者》か』
暗闇。
赤い目。
カンダ。
「お前まで知ってんの!?」
影が。
笑う。
次の瞬間。
沈む。
「ジュリア!」
「追う!」
ジュリアが。
走る。
路地。
壁。
蹴る。
屋根へ。
「速っ!」
カンダも。
追う。
「待て!」
「待つわけないでしょ!」
「わかってる!」
屋根の上。
黒い影。
走る。
いや。
流れる。
屋根から。
屋根。
影から。
影。
ジュリア。
追う。
《フレイムダガー》。
抜く。
「そこ!」
投げる。
炎。
闇を。
切る。
だが。
影。
壁へ。
溶ける。
「…………!」
ジュリア。
止まる。
カンダたちも。
遅れて。
到着。
「どこ!?」
「消えた」
「逃げた!?」
ジュリア。
周囲を見る。
「…………」
目を。
閉じる。
風。
匂い。
音。
「北」
「北?」
「森の方」
カンダ。
「追える?」
ジュリア。
首を振る。
「ここから先は無理」
カンダ。
「くそっ」
アリス。
「逃げ足速いね」
セイン。
「お前たちに言われたくはないだろうな」
◇
翌朝。
王城。
王。
「逃がしたか」
カンダ。
「すみません」
ジュリア。
「北へ向かったのは間違いない」
王。
「北……」
側近へ。
目。
側近。
地図。
広げる。
「北の森には」
「古い砦があります」
カンダ。
「砦?」
「百年以上前に使われていたものです」
「現在は廃墟となっています」
王。
「最近」
「その森で」
「別の報告もある」
「何?」
「勇者だ」
カンダ。
「…………」
「また?」
セイン。
「勇者が多いな」
アリス。
「山だから」
「山じゃねえ!」
王。
「北の森へ向かった勇者一行が」
「何組か戻っていない」
カンダ。
「…………」
嫌な。
予感。
王。
「カンダ」
「嫌です」
「まだ何も言っておらぬ」
「言う顔してる」
「どんな顔だ」
「王様の顔」
「私は王だ」
「昨日もやったなこれ!」
王。
「北の森へ向かい」
「廃墟を調べ」
「昨夜の者がいるならば」
「討伐してほしい」
カンダ。
「昨日は調査でしたよね?」
「ああ」
「今日は?」
「討伐だ」
「依頼が育ってる!!」
アリス。
「明日は?」
「聞くな!」
王。
「成功すれば」
「天雲樹の場所を教える」
カンダ。
立つ。
「行きます」
セイン。
「切り替えが早いな」
◇
王都。
北。
森。
ジュリア。
先頭。
「こっち」
昨夜。
消えた。
気配。
わずかな。
痕跡。
追う。
数時間。
木々の。
向こう。
石。
壁。
崩れた。
塔。
「…………」
カンダ。
「あるな」
古い。
砦。
いや。
今では。
廃墟。
アリス。
「出そう」
「何が?」
「いろいろ」
「曖昧に怖いこと言うな」
セイン。
杖。
構える。
「行くぞ」
カンダ。
「なんでレンタル魔法使いが仕切ってるの?」
「帰るぞ」
「すみませんでした」
◇
廃墟。
中。
暗い。
静か。
ジュリア。
《隠密》。
四人。
進む。
足音。
消える。
「…………」
奥。
広い。
部屋。
「いる」
ジュリア。
小声。
人。
一人。
二人。
三人。
「…………」
多い。
カンダ。
数える。
「十人くらいいない?」
全員。
装備。
剣。
鎧。
杖。
僧衣。
そして。
胸元。
《勇者の証》。
「…………」
カンダ。
「勇者じゃん」
アリス。
「勇者いっぱい」
セイン。
「王が言っていた」
「戻らなかった連中か」
勇者たち。
立っている。
誰も。
話さない。
視線。
虚ろ。
「…………」
カンダ。
「こんにちは」
返事。
ない。
「勇者です」
返事。
ない。
アリス。
「登山の挨拶してみた」
「ダメだった」
ジュリア。
「操られてる」
カンダ。
「全員?」
「たぶん」
セイン。
「昨夜の奴は?」
四人。
見る。
勇者。
勇者。
勇者。
勇者。
勇者。
勇者。
「…………」
カンダ。
「どれ?」
ジュリア。
「わからない」
「昨日見たじゃん!」
「影だったから」
アリス。
「みんな勇者」
セイン。
「見ればわかる」
カンダ。
「犯人の人ー?」
「…………」
全員。
無反応。
「出てこないよな!」
ジュリア。
「出てきたら楽なんだけどね」
◇
カンダ。
考える。
「こういう時は」
振り向く。
「リホ」
「鑑定――」
「…………」
いない。
ジュリア。
「三回目」
「数えるな!」
アリス。
「リホは村」
「知ってる!」
カンダ。
「絶対これ鑑定案件だろ!」
セイン。
勇者たちを。
見る。
「魔力を隠している」
「俺にも判別できん」
「本職魔法使いでも!?」
「魔法使いは鑑定士ではない」
アリス。
目を。
細める。
「…………」
カンダ。
「わかる?」
「変なのはいる」
「どれ?」
「わかんない」
「惜しい!」
アリス。
「なんとなく」
「知ってる!」
勇者たち。
一斉に。
動く。
剣。
抜く。
杖。
構える。
カンダ。
「うわっ!」
「来るぞ!」
セイン。
「殺すな!」
「わかってる!」
カンダ。
斧。
構える。
止まる。
「…………」
「これ」
「斧使えなくない?」
ジュリア。
「使ったら危ないね」
「俺の主力封じられた!」
◇
勇者。
襲う。
ジュリア。
前へ。
剣。
かわす。
柄。
腹へ。
ドッ!
「寝てて」
一人。
倒れる。
別。
勇者。
魔法。
放つ。
「クルスト!」
アリス。
防御。
受ける。
「ルミ!」
閃光。
「うわっ!」
「目が!」
操られていても。
眩しいものは。
眩しい。
カンダ。
「アリス!」
「何?」
「全員まとめて眠らせる魔法ない?」
「まだない」
「賢者ぁ!」
セイン。
「どけ!」
杖。
向ける。
魔法陣。
広がる。
淡い。
光。
勇者たちの。
足元。
「《スリプ》!」
光。
弾ける。
数人。
膝。
つく。
そのまま。
倒れる。
カンダ。
「おお!」
アリス。
「それ教えて」
セイン。
「後でな!」
「レンタルしてよかった!」
「その言い方やめろ!」
◇
それでも。
まだ。
何人か。
立っている。
そして。
その中。
犯人。
いる。
はず。
「どうする!?」
カンダ。
ジュリア。
「わからない」
セイン。
「魔力も隠している」
アリス。
「なんとなく」
「何人か怪しい」
「何人!?」
「三人」
「多い!」
カンダ。
見る。
勇者。
人間。
犯人。
人間より。
頑丈。
昨夜。
ジュリアの。
フレイムダガーを。
受け止めた。
「…………」
カンダ。
「あ」
セイン。
「何だ」
「わかった」
「何が?」
カンダ。
手。
上げる。
バチッ。
雷。
セイン。
嫌な。
顔。
「待て」
「何?」
「何をする気だ」
「人間なら」
「効くんだよな?」
「…………」
「おい」
カンダ。
笑う。
「全員」
「ちょっとだけ」
「痺れてもらえばいい」
セイン。
「待――」
「《ライ》!」
バリィィィィィン!!
雷。
広間。
走る。
「ぎゃっ!」
「うおっ!」
「痛っ!」
「何だ!?」
勇者たち。
ビクッ!
バタッ!
痺れる。
倒れる。
一人。
「…………」
立っている。
黒髪。
剣を持った。
勇者。
無傷。
カンダ。
指さす。
「いた」
「…………」
ジュリア。
「いたね」
アリス。
「カンダ頭いい」
カンダ。
「だろ!?」
セイン。
「雑すぎる!」
「見つかっただろ!」
「操られている人間ごと雷撃する奴があるか!」
「ちょっとだよ!」
床。
勇者。
「し……痺れる……」
セイン。
「謝れ!」
カンダ。
「すみません!」
◇
一人だけ。
立つ。
勇者。
ゆっくり。
顔。
上げる。
赤い。
目。
「…………」
カンダ。
「お前だな」
『なるほど』
声。
昨夜と。
同じ。
身体。
歪む。
勇者の。
姿。
崩れる。
黒い。
影。
長い。
指。
白い。
肌。
赤い。
目。
口元。
鋭い。
牙。
セイン。
「夜魔……」
カンダ。
「知ってる?」
「人の生命力を吸う」
「夜に生きる魔族だ」
アリス。
「吸血鬼?」
「近い」
夜魔。
笑う。
『我が名はノスフェラ』
ジュリア。
「兵士を襲ってたのも?」
『ああ』
『弱い命では』
『満たされぬのでな』
視線。
倒れた。
勇者たち。
『勇者は』
『実に良い』
『力がある』
『魔力がある』
『生命力がある』
カンダ。
「食料扱いすんな」
『貴様も』
赤い目。
カンダへ。
『実に良い』
「嫌です」
『まだ何も言っておらぬ』
カンダ。
「王様と同じこと言うな!」
◇
ノスフェラ。
消える。
「来る!」
ジュリア。
フレイムダガー。
抜く。
背後。
影。
伸びる。
「そこ!」
炎。
振る。
ノスフェラ。
かわす。
『炎か』
ジュリア。
「拾った」
カンダ。
「今説明しなくていい!」
ノスフェラ。
壁の。
影へ。
沈む。
「また逃げる!」
アリス。
「じゃあ」
杖。
上げる。
「《ルミ》!」
光。
爆発。
広間。
照らす。
影。
消える。
『――!』
ノスフェラ。
壁から。
弾き出される。
カンダ。
「ナイス!」
セイン。
「そこだ!」
魔法陣。
足元。
「《バインド》!」
光の。
鎖。
ノスフェラの。
腕。
絡む。
『小賢しい!』
引きちぎる。
「効いてない!」
セイン。
「一瞬でいい!」
ジュリア。
消える。
風。
背後。
フレイムダガー。
斬る。
ザシュッ!
炎。
ノスフェラの。
背中。
焼く。
『ぐっ!』
「カンダ!」
「おう!」
カンダ。
大地の戦斧。
構える。
ノスフェラ。
振り向く。
『待――』
「待たない!」
斧。
振る。
ドゴォォォン!!
床。
揺れる。
壁。
ひび。
「…………」
アリス。
「大地割り?」
カンダ。
「普通に殴っただけ」
セイン。
「普通とは何だ」
ノスフェラ。
吹き飛ぶ。
壁。
激突。
動かない。
「…………」
カンダ。
「倒した?」
ジュリア。
近づく。
「たぶん」
アリス。
「鑑定できたらね」
「言うな!」
その時。
倒れていた。
勇者たち。
少しずつ。
目。
覚ます。
「…………ここは?」
「俺たち……」
カンダ。
「お」
「戻った」
セイン。
「術が解けたらしい」
勇者の一人。
カンダを見る。
「あんたは……」
カンダ。
「勇者です」
勇者。
「…………どうも」
カンダ。
「どうも」
セイン。
「今やるのか」
◇
王都ヴェルグ。
王城。
王。
「見事だ」
カンダ。
「ありがとうございます」
「じゃあ」
王。
「うむ」
カンダ。
身を。
乗り出す。
「天雲樹!」
「それしか頭にないのか」
「そのために海越えてきたんです!」
王。
地図。
広げる。
「天雲樹は」
「ここだ」
指。
差す。
「…………」
カンダ。
見る。
「…………」
もう一度。
見る。
王都。
ここ。
天雲樹。
ここ。
「…………」
遠い。
カンダ。
「遠くない?」
王。
「遠いな」
「さらっと言うな!」
アリス。
「ラルー?」
カンダ。
「行ったことない!」
「覚えてた」
「何回目だと思ってんだ!」
ジュリア。
地図を見る。
「でも場所はわかった」
「そうだな」
セイン。
「これで目的は果たしたな」
王。
「ただし」
カンダ。
「…………」
王。
「天雲樹は」
「ただ生えているわけではない」
カンダ。
「…………」
嫌な。
予感。
「古くから」
「ある民によって守られている」
カンダ。
「枝一本」
「もらえます?」
王。
「それは」
「彼ら次第だ」
「…………」
カンダ。
天井。
見る。
「木の枝一本取るのに」
「何話かかるんだよぉぉぉぉ!!」
アリス。
「まだ取れてないね」
「知ってる!!」
――第32話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




