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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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31/43

第31話 夜の見回りをお願いします

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


王都ヴェルグ。


西方大陸でも。


最大級の。


都市。


そして。


情報の都。


各地から。


商人。


冒険者。


旅人。


勇者。


様々な人間が。


集まる。


当然。


情報も。


集まる。


王直属の。


密偵まで。


各地にいるらしい。


「だからって」


カンダ。


「王都入ってすぐ俺を見つける?」


兵士。


「こちらです」


「聞いてる?」


「国王陛下がお待ちです」


「待たなくていいです」


「こちらです」


「宿屋行きたいです」


「こちらです」


「話通じねえ!」


アリス。


「王様に会えるね」


「会いたくないんだよ!」


ジュリア。


「昨日」


「絶対会わないって言ってたね」


「言った!」


セイン。


「諦めろ」


「お前はもう少し抵抗してくれ!」


「なぜ俺が」


カンダ。


大きな。


ため息。


「王様に会う」


「依頼される」


「面倒事に巻き込まれる」


「俺は知ってるんだ」


アリス。


「まだ依頼されてないよ」


「される!」


「絶対される!」


兵士。


「こちらです」


「だから聞いてる!?」


◇


王城。


謁見の間。


王座。


座る。


男。


五十代ほど。


派手さは。


ない。


むしろ。


落ち着いた。


服装。


目だけが。


妙に鋭い。


カンダたちが。


入る。


王。


「よく来た」


カンダ。


「帰っていいですか?」


「早いな」


「王様に会うと」


「ろくなことがないので」


「面白い勇者だ」


「よく言われます」


王の。


視線。


大地の戦斧へ。


「《斧の勇者》」


カンダ。


「それやめてもらえます?」


「気に入らぬか」


「恥ずかしいです」


アリス。


「気に入ってるよ」


「気に入ってねえ!」


王。


少し。


笑う。


「操獣魔王を討ち」


「砂漠の墓王獣を退け」


「海を越える途中ではクラーケンを倒した」


「…………」


カンダ。


「なんで知ってるの?」


「我が国は」


「情報収集を得意としている」


「怖っ!」


ジュリア。


「クラーケンまで?」


王。


「商船の船員から話を聞いた」


アリス。


「カンダ海に落ちたのも?」


王。


「聞いている」


「そこまで報告すんなよ!!」


セイン。


「情報収集に長けているのは本当らしいな」


「感心するところそこ!?」


◇


カンダ。


「で」


「俺たち」


「天雲樹を探してるんです」


王。


「知っている」


「…………」


「なんで?」


「情報収集を――」


「もういいです!」


「それ言えば何でも通ると思ってません!?」


王。


「天雲樹」


「西方大陸に残る最後の一本」


カンダたち。


止まる。


「知ってるの?」


「ああ」


「どこ!?」


王。


「教えてもよい」


カンダ。


「ありがとうございます!」


「ただし」


カンダ。


止まる。


「…………」


アリス。


「来た」


ジュリア。


「来たね」


セイン。


「何がだ」


カンダ。


指を。


立てる。


「王様に会う」


一本。


「依頼される」


二本。


「ほら!」


王。


「まだ依頼しておらぬ」


「する顔してる!」


「どんな顔だ」


「王様の顔!」


「私は王だ」


「だからだよ!」


◇


王。


表情を。


変える。


「実は」


「この王都で」


「奇妙な事件が続いている」


カンダ。


「…………」


「聞きたくない」


「聞け」


「嫌です」


「天雲樹」


「聞きます」


アリス。


「早い」


ジュリア。


「早いね」


王。


「ここ数週間」


「夜間の警備に当たっていた兵士が」


「次々と変死している」


謁見の間。


空気。


変わる。


カンダ。


「魔物?」


「わからぬ」


「外傷は?」


「ほとんどない」


セイン。


眉を。


ひそめる。


王。


「争った形跡も」


「ほぼない」


「金品も残されている」


「だが」


「翌朝になると」


「巡回中の兵士が倒れている」


ジュリア。


「場所は?」


「毎回違う」


「時間は?」


「深夜」


「同じ巡回路?」


「違う」


ジュリア。


少し。


考える。


王。


「兵を増やした」


「巡回経路も変えた」


「密偵も配置した」


「それでも」


「止まらぬ」


セイン。


「この国の情報網でも?」


王。


「ああ」


短い。


返事。


それが。


逆に。


重い。


「人間が起こす」


「盗み」


「暗殺」


「陰謀」


「潜入」


「それならば」


「我々は得意だ」


「だが」


「今回だけは」


「何も掴めぬ」


カンダ。


「…………」


「嫌な事件だな」


王。


「そこで」


カンダ。


「帰ります」


「待て」


「依頼する」


「ほらぁぁぁぁ!!」


◇


王からの。


依頼。


夜間。


王都を。


調査。


原因を。


突き止める。


可能なら。


事件を。


止める。


報酬。


天雲樹の。


情報。


「…………」


カンダ。


腕を。


組む。


「場所だけ先に」


「断る」


「半分だけ」


「断る」


「方角」


「断る」


「ヒント」


「断る」


アリス。


「王様強い」


ジュリア。


「リホいたら交渉してくれたのに」


「…………」


カンダ。


止まる。


「そうじゃん」


振り向く。


「リホ」


「…………」


いない。


「そうだった……」


セイン。


「昨日別れただろ」


「こういう時困るんだよ!」


アリス。


「カンダ交渉下手だもんね」


「俺だってできる!」


王を見る。


「もうちょっと教えて?」


「断る」


カンダ。


「無理だった!」


ジュリア。


「早い」


王。


少し。


笑う。


「解決すれば」


「天雲樹の場所を教えよう」


カンダ。


「絶対?」


「王の言葉だ」


「…………」


「わかりました」


王。


「引き受けるか」


「はい」


そして。


カンダ。


指を。


三本。


立てる。


「王様に会う」


「依頼される」


「面倒事に巻き込まれる」


アリス。


「当たったね」


「嬉しくねえ!」


◇


まず。


現場。


兵士の。


詰所。


最近。


被害に遭った。


兵士が。


見つかった場所。


細い。


路地。


セインが。


しゃがむ。


「血は?」


兵士。


「ほとんどありませんでした」


「傷も?」


「目立ったものは」


「ただ」


「顔色が」


「ひどく青白くなっていました」


カンダ。


「毒?」


セイン。


「可能性はある」


カンダ。


「リホ」


「鑑定して」


「…………」


沈黙。


アリス。


「いないよ」


「…………」


カンダ。


「またやった」


ジュリア。


「癖になってる」


カンダ。


「だって今まで」


「わかんない物あったら」


「リホに聞けばよかったから!」


セイン。


「便利だったんだな」


「便利って言うな」


「商人だぞ」


ジュリア。


「でも便利だった」


「それはそう」


アリス。


「お金も持ってた」


「それもそう」


カンダ。


少し。


考える。


「…………あいつ」


「結構いろいろやってたんだな」


ジュリア。


「今気づいた?」


「うるさい」


◇


ジュリアが。


路地を。


歩く。


壁。


屋根。


窓。


排水路。


見る。


「何かわかる?」


カンダ。


「まだ」


ジュリア。


しゃがむ。


地面。


触れる。


「ここ」


「何?」


「兵士が倒れてた場所」


「うん」


「逃げた跡がない」


セイン。


「足跡がないということか」


「それだけじゃない」


ジュリア。


周囲を。


見る。


「犯人が」


「ここから逃げた感じがしない」


カンダ。


「どういうこと?」


「わかんない」


「わかんないの!?」


「でも」


ジュリア。


屋根を。


見る。


「兵士や密偵は」


「怪しい奴を探してる」


「うん」


「だったら」


「怪しい奴として歩かなきゃいい」


セイン。


「変装か?」


「それもある」


ジュリア。


少し。


笑う。


「見つからないんじゃなくて」


「見つからないように動いてる」


カンダ。


「…………」


アリス。


「ジュリア」


「何?」


「盗賊っぽい」


「盗賊だよ」


「最近短剣盗んでただけだったから」


「盗んでない」


カンダ。


「盗んだだろ!」


「拾ったの」


「イフリートから!」


「拾った」


セイン。


「何の話だ」


◇


夕方。


王城から。


資料を。


借りた。


被害が。


起きた場所。


日時。


巡回経路。


ジュリアが。


地図へ。


印を。


つけていく。


「…………」


カンダ。


「何かわかった?」


「少し」


「全部」


「大通りから」


「一本か二本」


「外れてる」


セイン。


「確かに」


ジュリア。


「でも」


「人が来ない場所じゃない」


「兵士が」


「必ず一人になる場所」


カンダ。


「一人?」


「巡回してる途中」


「相方と離れる」


「角を曲がる」


「建物の裏を見る」


「そういう」


「ほんの少しだけ」


「一人になる場所」


セイン。


「狙っているのか」


ジュリア。


「たぶん」


アリス。


地図を見る。


「じゃあ」


「次に来そうなところで待ってればいい?」


カンダ。


「そんな簡単に――」


ジュリア。


「できるかも」


「できるの!?」


「巡回経路」


「全部もらったから」


カンダ。


「諜報国家便利だな」


セイン。


「さっきまで怖がっていたくせに」


◇


深夜。


王都ヴェルグ。


昼とは。


別の街。


静か。


街灯。


月。


遠く。


兵士の。


足音。


カンダたちは。


路地。


隠れている。


正確には。


ジュリアの。


《隠密》。


四人の。


気配。


消している。


カンダ。


小声。


「これ」


「本当にバレない?」


ジュリア。


「静かにしてれば」


アリス。


「お腹すいた」


「今言う!?」


セイン。


「お前本当に賢者なのか?」


「賢者だよ」


「なら少し黙れ」


「お腹すいた賢者」


「知らん」


ジュリア。


「静かに」


三人。


黙る。


巡回中の。


兵士。


一人。


路地へ。


入る。


歩く。


何も。


ない。


「…………」


カンダ。


待つ。


「…………」


長い。


「…………」


来ない。


カンダ。


小声。


「本当に来る?」


ジュリア。


「来る」


「なんでわかる?」


「勘」


アリス。


「私も」


「なんとなく」


セイン。


「根拠のない奴が二人いる」


その時。


アリス。


表情。


変わる。


「…………」


「ジュリア」


「うん」


ジュリアも。


気づく。


兵士。


背後。


街灯の。


光。


兵士の。


影。


「…………」


動いた。


風は。


ない。


兵士も。


動いていない。


なのに。


影だけが。


ゆっくり。


伸びる。


「…………」


カンダ。


斧へ。


手。


伸ばす。


影。


壁へ。


這う。


そして。


立ち上がる。


人の。


形。


赤い。


二つの。


光。


「――来た」


ジュリアが。


消える。


《隠密》。


解除。


「え?」


兵士が。


振り向く。


影。


腕を。


伸ばす。


ジュリア。


フレイムダガー。


抜く。


ボッ!


炎。


暗闇。


照らす。


ガキィン!!


何かと。


ぶつかる。


影が。


飛び退く。


カンダ。


前へ。


「おい!」


大地の戦斧。


構える。


アリス。


杖。


セイン。


杖。


二人の。


魔法使いが。


並ぶ。


影。


路地の。


奥。


立っている。


人。


なのか。


魔物。


なのか。


わからない。


黒い。


姿。


そして。


赤い。


目。


『…………』


カンダ。


「やっと」


「見つけた」


影。


カンダを見る。


戦斧。


見る。


『なるほど』


『貴様が――』


一歩。


闇へ。


沈む。


『《斧の勇者》か』


「…………」


カンダ。


「お前まで知ってんの!?」


赤い目が。


細く。


笑った。


――第31話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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