第28話 木がない
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
「着いた」
カンダが。
山を見上げる。
高い。
とにかく。
高い。
頂上は。
雲の中。
《天穿山》。
不死鳥。
フェルニアを呼ぶために必要な。
《天雲樹》の枝。
それが。
山頂にある。
らしい。
「…………」
カンダ。
「また山か」
リホ。
「火山も山だったものね」
「言うな」
アリス。
「今度は涼しいよ」
「それは助かる」
ジュリア。
「頂上に何かいるかな?」
「いるだろ」
カンダが。
即答。
「どうせいる」
「今回は木を取るだけよ?」
リホ。
「火蜜の実もそうだった!」
「取ったらイフリート出てきた!」
アリス。
「じゃあ先に倒す?」
「何を!?」
「まだわかんない」
「存在しない敵を倒そうとすんな!」
ジュリアが。
笑いながら。
腰の短剣へ。
手を置く。
カンダが。
見る。
「…………」
「何?」
「それ」
「何?」
「前から持ってた?」
ジュリアの。
腰。
《アサシンダガー》。
その反対側。
もう一本。
赤黒い。
短剣。
刀身の奥で。
炎が。
揺れている。
「…………」
カンダ。
「なんか燃えてない?」
「うん」
「うんじゃなくて!」
ジュリアが。
抜く。
ボッ。
刀身に。
炎。
「《フレイムダガー》」
「名前まである!」
リホが。
《鑑定》。
「…………本物ね」
「堕炎精霊イフリートの魔力が凝縮して生まれた短剣」
カンダ。
「イフリート!?」
ジュリア。
「うん」
「いつ手に入れた!?」
「倒した時」
「俺見てないぞ!」
「拾ったから」
「どこで!?」
「イフリートの身体が崩れたところ」
「いつ!?」
「カンダが『またお前か』って言われて固まってた時」
「そこ!?」
ジュリアが。
短剣を。
腰へ戻す。
カンダ。
「それレアドロップじゃん!」
「たぶん」
「倒したの俺なんだけど!?」
「拾ったの私」
「…………」
「盗賊だから」
「盗賊つええな!!」
◇
登った。
かなり。
登った。
途中。
魔物。
出た。
岩のような。
身体をした。
山岳魔物。
「ちょうどいい」
ジュリアが。
前へ。
「試してみる」
《フレイムダガー》。
抜く。
ボッ!
炎。
ジュリアが。
消える。
「速っ!」
風の精霊の加護。
一瞬で。
魔物の横。
炎の短剣。
振る。
ズバッ!
岩肌。
赤く。
焼ける。
「おお!」
カンダ。
「強いじゃん!」
ジュリア。
「いいね、これ」
「返して」
「なんで?」
「俺が倒したイフリートだから」
「私が拾った」
「くっ……!」
魔物が。
腕を振る。
ジュリア。
避ける。
「カンダ!」
「おう!」
戦斧。
構える。
その時。
バチッ。
「…………?」
カンダの。
手。
小さな。
光。
「何だ?」
バチバチ。
青白い。
光。
アリス。
「カンダ」
「何?」
「光ってる」
「何が?」
「手」
「…………」
バチッ!
「うおっ!」
カンダが。
手を振る。
雷。
地面へ。
走った。
「…………」
全員。
止まる。
カンダ。
自分の手を見る。
「…………出た」
リホ。
「雷?」
「たぶん」
アリス。
「魔法?」
「たぶん」
ジュリア。
「使ってみれば?」
「名前知らない!」
アリス。
「適当に言えば?」
「魔法ってそんな感じなの!?」
魔物が。
迫る。
「うおっ!」
カンダ。
手を。
向ける。
頭に。
浮かんだ。
言葉。
「《ライ》!」
バリィッ!!
雷。
走る。
魔物へ。
直撃。
ドォン!
「…………」
魔物。
倒れる。
カンダ。
「…………」
アリス。
「…………」
ジュリア。
「…………」
リホ。
「…………」
カンダが。
両手を。
上げた。
「ボア以外覚えたぁぁぁ!!」
アリス。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
ジュリア。
「長かったね」
「長かった!」
リホ。
「勇者らしくなってきたわね」
「だろ!?」
アリス。
「でもボアも忘れないでね」
「忘れたい過去みたいに言うな!」
◇
さらに。
登る。
途中。
アリスも。
魔法を。
試し始めた。
「ボワンド!」
ドォン!
「フュランド!」
ゴォッ!
「キランド!」
バキバキバキ!
カンダ。
「…………」
アリス。
「何?」
「いつ覚えた?」
「さっき」
「また!?」
「レベル上がったからかな?」
「賢者すげえな!」
さらに。
転んだ。
カンダ。
膝。
擦りむいた。
「いてっ」
アリス。
「ヒランド」
光。
傷。
消える。
「…………」
カンダが。
膝を見る。
「ヒランドまで!?」
「うん」
「お前」
「何?」
「ちゃんと賢者じゃん」
「最初から賢者だよ?」
「そうなんだけど!」
アリス。
「失礼だね」
「賢者になった日に腹減ったしか言わなかった奴が!」
「今もお腹すいてるよ」
「そこは変わってねえ!」
◇
一方。
リホは。
少し後ろを。
歩いていた。
前。
ジュリア。
二本の短剣。
片方には。
炎。
カンダ。
新しい。
雷魔法。
アリス。
次々と。
中級魔法。
「…………」
リホが。
自分の。
弓を見る。
何も。
変わっていない。
《鑑定》。
《大声》。
弓。
薬。
煙。
火薬。
それだけ。
「リホ?」
アリスが。
振り向く。
「何?」
「遅いよ?」
「今行く」
リホが。
歩き出す。
「…………」
それだけ。
だった。
◇
数時間後。
「頂上!」
アリスが。
両手を。
上げる。
雲を。
抜けた。
青空。
眼下。
広がる。
雲海。
風。
「おお……」
カンダも。
思わず。
立ち止まる。
「すげえ」
リホ。
「綺麗ね」
ジュリア。
「うん」
しばらく。
四人。
景色を。
眺めた。
そして。
カンダ。
周囲を見る。
「…………」
岩。
岩。
岩。
少し。
草。
「…………」
もう一度。
見る。
「木は?」
アリス。
「…………」
ジュリア。
「ないね」
リホ。
「ないわね」
「天雲樹」
「ないわね」
「でっかい木」
「ないわね」
「なんで!?」
◇
探した。
ない。
岩の裏。
ない。
崖。
ない。
アリス。
「隠れてる?」
「木が隠れるって何だよ!」
ジュリア。
「お宝サーチにも反応なし」
「木はお宝じゃないだろ」
「珍しい木なら高く売れるかも」
「売るな!」
リホが。
地面を。
見る。
巨大な。
円。
何本もの。
溝。
「これ」
《鑑定》。
「…………」
カンダ。
「どう?」
「《天雲樹の跡》」
「跡!?」
「長い年月、空の精霊の力を宿していた神木」
「うん」
「現在、樹木は存在しない」
「鑑定にまで『ない』って言われた!!」
アリス。
「ないものは取れないね」
「正論やめて!」
『その通りだ』
「!?」
声。
岩の上。
小さな。
半透明の。
存在。
風のような。
羽。
アリス。
「ちっちゃい」
『空の精霊だ』
「ちっちゃい精霊」
『二回言うな』
カンダが。
詰め寄る。
「木は!?」
『ない』
「知ってる!」
『寿命を迎えた』
「神木も寿命あるの!?」
『木だからな』
「普通のこと言いやがって!」
◇
空の精霊によれば。
天穿山の。
天雲樹は。
何十年も前。
寿命を迎えた。
ただし。
《天雲樹》そのものが。
絶滅したわけではない。
『海の向こう』
精霊が。
西を指す。
『西方大陸に、まだ一本ある』
「…………」
カンダ。
「海?」
『海だ』
「また移動?」
『そうだ』
「精霊女王知ってる?」
『おそらく』
「なんでここ教えたんだよぉぉぉ!!」
『わしに言うな』
「精霊ってこういう奴ばっかりだな!!」
◇
下山。
そして。
港町。
大型船。
西方大陸へ向かう。
商船。
船長。
「最近は海の魔物が多いぞ」
カンダ。
「大丈夫」
「俺たち結構強いから」
アリス。
「レベル上げもできるね」
「お前は口笛吹くなよ?」
「なんで?」
「海で何来るかわかんねえから!」
ジュリア。
「クラーケンとか?」
「言うな!」
リホは。
船長と。
運賃の交渉。
少しして。
戻ってくる。
「半額になったわ」
カンダ。
「何したの?」
「交渉」
「商人つええな!」
リホ。
少し。
笑う。
「当然でしょ」
「商人なんだから」
◇
出航。
一日目。
平和。
二日目。
平和。
三日目。
アリス。
「暇」
カンダ。
「寝てろ」
「レベル上げしたい」
「大陸着いてからやれ」
「…………」
アリスが。
海を見る。
カンダ。
「おい」
「何?」
「口に指持ってくな」
「まだ何もしてないよ?」
「お前の行動パターン覚えたからな!」
その時。
ゴボ。
「…………」
海。
ゴボゴボ。
カンダ。
アリスを見る。
「吹いた?」
「吹いてない!」
「じゃあ何!?」
ザバァァァァン!!
巨大な。
触手。
「クラーケンだぁぁぁ!!」
船員。
叫ぶ。
アリス。
「向こうから来た」
カンダ。
「今回はお前悪くない!」
◇
触手。
船へ。
ドォン!
「うわっ!」
船。
揺れる。
カンダ。
戦斧。
構える。
「大地割り――」
船長。
「やめろぉぉぉ!!」
「なんで!?」
「船を割る気か!」
「そうだった!」
ジュリア。
走る。
フレイムダガー。
炎。
触手を。
斬る。
ジュウッ!
「通る!」
リホ。
《鑑定》。
「触手を全部倒す必要ない!」
海面。
見る。
巨大な。
頭。
「本体!」
「目の下が弱い!」
「アリス!」
「フュランド!」
風。
爆発。
触手。
大きく。
弾かれる。
「キランド!」
別の。
触手。
一気に。
凍る。
カンダ。
「おらぁ!」
戦斧。
振る。
ズバァン!
切断。
「カンダ!」
リホ。
「本体が出た!」
「よし!」
カンダが。
手を。
向ける。
「ちょうどいい!」
雷。
バチバチ。
「《ライ》!」
「待って!」
リホ。
「え?」
バリィィィッ!!
海へ。
雷。
「…………」
一瞬。
静か。
バチバチバチバチ!!
「うおおおお!?」
カンダ。
「しびれるぅぅぅ!!」
船員。
「海に雷撃つなぁぁぁ!!」
アリス。
「みんな感電するよ?」
「先に言えぇぇぇ!!」
ジュリア。
「でもクラーケンも効いてる」
海。
クラーケン。
ビクビク。
リホ。
「今!」
「目の下!」
アリス。
「ボワンド!」
炎。
直撃。
ジュリア。
ロープを。
投げる。
カンダ。
掴む。
「行って!」
「おう!」
引かれる。
カンダ。
飛ぶ。
海上。
クラーケン。
頭。
戦斧。
振り上げる。
「おらぁぁぁぁ!!」
ドゴォォォン!!
クラーケン。
沈む。
カンダ。
落ちる。
ザバン!
「…………」
アリス。
「カンダも沈んだ」
ジュリア。
「いつもの」
海。
バシャバシャ。
「助けろぉぉぉ!!」
◇
戦闘後。
甲板。
アリス。
「ボワンド覚えた」
カンダ。
「俺もライ覚えた」
ジュリア。
フレイムダガーを。
くるくる。
「私はこれ」
三人。
それぞれ。
新しい力。
「…………」
リホ。
荷物を。
整理している。
アリス。
「リホは?」
「私?」
「何か増えた?」
「…………」
リホは。
少し考えた。
「特にないわね」
カンダ。
「でも鑑定なかったら弱点わからなかったぞ」
ジュリア。
「うん」
「リホいなかったら触手ずっと切ってた」
アリス。
「あと船代半額」
「それ戦闘じゃないでしょ」
リホが。
笑う。
「私は商人なんだから」
それで。
話は。
終わった。
◇
その夜。
船倉。
リホは。
一人。
荷物を。
確認していた。
薬草。
火薬。
煙玉。
矢。
魔物から。
取れた素材。
食料。
残りの。
水。
「…………」
全部。
必要。
全部。
自分が。
管理している。
甲板から。
声。
「ライ!」
バチッ!
「船で練習するな!」
「ボワンド!」
「お前も!」
「フレイムダガー試していい?」
「船燃やす気か!!」
騒がしい。
三人の。
声。
リホが。
自分の手を見る。
そして。
壁に立てた。
弓。
「…………」
《鑑定》も。
《大声》も。
弓も。
役に立っている。
わかっている。
それでも。
三人は。
どんどん。
先へ行く。
「…………商人、か」
リホは。
小さく。
呟いた。
そして。
荷物へ。
視線を戻した。
◇
数日後。
「陸だぁぁぁ!」
船員の。
声。
四人が。
船首へ。
集まる。
水平線。
その先。
大きな。
陸地。
西方大陸。
カンダ。
「着いた……」
ジュリア。
「初めての大陸」
アリス。
「でっかい」
リホも。
新しい大陸を。
見つめる。
船。
港へ。
入る。
建物。
服。
人。
今までの土地とは。
少し。
違う。
カンダたちは。
船を降りた。
「よし!」
カンダが。
地図を。
広げる。
「天雲樹を探すぞ!」
アリス。
「でっかい木?」
「そう」
「どれくらい?」
「でっかい」
「だからどれくらい?」
「知らない!」
ジュリア。
「また始まった」
リホが。
少し笑う。
カンダは。
新しい大陸を。
見渡した。
「今度こそ」
「木を見つける!」
アリス。
「なかったら?」
「言うなぁぁぁ!!」
――第28話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




