第27話 またお前か
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
じゃあ27話は前案を差し替
「暑い」
カンダが言った。
「暑いね」
アリス。
「暑い」
ジュリア。
「暑いわね」
リホ。
四人の。
目の前。
巨大な山。
頂上から。
黒い煙。
岩の隙間から。
赤い光。
ゴゴゴゴゴ。
低い音まで。
聞こえてくる。
《炎哭火山》。
不死鳥。
フェルニアを呼ぶため。
必要な。
《火蜜の実》。
それが。
この火山の奥にある。
「帰る?」
アリス。
「来たばっかだよ!」
「でも暑いよ?」
「知ってる!」
リホが。
地図を広げる。
「火蜜の実は火山の奥」
「どれくらい奥?」
「奥」
「それ昨日の俺のでっかい鳥と同じ説明じゃん!」
「行けばわかるわよ」
「雑!」
ジュリアが。
火山を見る。
「とりあえず登ろう」
「そうだな」
カンダが。
《大地の戦斧》を担ぐ。
「さっさと取って」
「さっさと帰ろう」
アリス。
「焼き鳥の餌」
「不死鳥な!」
◇
火山を。
登る。
草は。
ほとんどない。
あるのは。
黒い岩。
赤い岩。
そして。
熱気。
「熱っ!」
地面から。
蒸気。
カンダが。
飛び退く。
ジュリアが。
前を歩く。
「そこ危ないよ」
「早く言って!」
「今言った」
「踏む前に!」
ジュリアが。
小石を投げる。
少し先。
ブシュッ!!
蒸気。
「…………」
カンダ。
「ずっと先頭お願い」
「いいよ」
アリスが。
杖を振る。
「キラ」
パキッ。
小さな氷。
カンダ。
「おお!」
拾う。
「冷てぇ!」
額へ。
当てる。
「生き返る!」
リホ。
「遊んでないで行くわよ」
「遊んでない! 暑さ対策!」
アリス。
「もう一個いる?」
「いる!」
「キラ」
「ありがとう!」
ジュリア。
「勇者が氷持って喜んでる」
「火山なんだからいいだろ!」
◇
しばらく。
登った。
洞窟。
その奥。
甘い。
匂い。
「これ」
リホが。
止まる。
「近いかも」
匂いを。
辿る。
開けた場所。
周囲には。
溶岩。
中央に。
一本だけ。
木が。
生えていた。
黒い幹。
赤い葉。
その枝に。
真っ赤な。
果実。
内部から。
淡く。
光っている。
「…………」
アリス。
「おいしそう」
カンダ。
「食うなよ?」
「まだ食べてない」
「まだ?」
リホが。
《鑑定》。
「間違いない」
「《火蜜の実》よ」
「おお!」
カンダが。
木へ近づく。
「取って帰ろう!」
手を。
伸ばす。
「待って」
「ん?」
「直接触ったら火傷するわよ」
カンダ。
手を。
止める。
「…………」
ゆっくり。
戻す。
「先に言ってくれてありがとう」
「学習したわね」
「旅してるからな!」
リホが。
耐熱用の布を。
取り出す。
「これを使って」
「準備いいな」
「商人だから」
布を。
何重にも。
巻く。
カンダが。
火蜜の実を。
掴む。
「熱っ!」
「布越しでも?」
「熱い!」
「頑張って」
「軽いな応援!」
一つ。
二つ。
三つ。
必要な分を。
耐熱袋へ。
入れる。
リホが。
袋を閉じる。
「これでいい」
カンダが。
手を振る。
「よし!」
「帰ろう!」
アリス。
「早かったね」
ジュリア。
「今回は楽だった」
カンダ。
「そういうこと言うな」
「え?」
「旅でそれ言うと――」
ゴゴゴゴゴ。
「…………」
全員。
止まる。
カンダ。
「ほらぁ!!」
地面が。
揺れる。
ゴゴゴゴゴゴゴ。
溶岩が。
波打つ。
「何!?」
アリス。
リホが。
《鑑定》。
火蜜の木。
地面。
さらに。
その下。
「…………え?」
「何?」
「下に」
リホが。
顔を上げる。
「何かいる!」
ドゴォォォォォン!!
地面が。
弾けた。
◇
炎。
噴き上がる。
「うわっ!」
四人が。
飛び退く。
炎の中。
何かが。
立ち上がる。
巨大な。
人型。
黒く焼けた。
岩の身体。
全身に。
走る亀裂。
その隙間から。
赤い炎。
頭には。
二本の角。
『…………』
低い。
声。
洞窟が。
震える。
カンダが。
戦斧を構える。
「魔物?」
「待って」
リホ。
《鑑定》。
「…………」
「どうした?」
「魔物じゃない」
「じゃあ何?」
リホが。
巨大な存在を見る。
「精霊」
「精霊!?」
アリス。
「精霊女王の知り合い?」
『女王……』
炎の巨人が。
反応した。
『あの女の……名を……』
炎。
膨れ上がる。
『口にするなァァァ!!』
「仲悪そう!」
リホが。
さらに見る。
「普通の精霊じゃない!」
「火の力を吸いすぎてる!」
「力が濁ってる……!」
ジュリア。
「堕ちた精霊?」
「たぶん!」
巨大な。
炎の精霊。
その名。
《堕炎精霊イフリート》。
イフリートが。
腕を振る。
炎。
迫る。
「散れ!」
カンダたちが。
飛ぶ。
ドォォン!!
岩壁。
燃える。
カンダ。
「岩って燃えるの!?」
アリス。
「燃えてるね!」
「見ればわかる!」
◇
カンダが。
前へ。
「ボア!」
炎。
飛ぶ。
イフリートへ。
直撃。
ボン。
『…………』
「…………」
無傷。
アリス。
「効いてない」
「知ってた!」
「じゃあなんで使ったの?」
「一応試したんだよ!」
イフリート。
口を。
開く。
巨大な。
炎。
「カンダ!」
アリス。
杖。
「クルスト!」
光。
カンダを包む。
直後。
炎。
直撃。
ドォォォン!!
「カンダ!」
炎の中。
「熱ぃぃぃぃ!!」
カンダが。
飛び出す。
「生きてる!」
アリス。
「クルスト効いた!」
「効いてても熱いもんは熱い!」
リホ。
「アリス!」
「うん!」
星導の杖。
向ける。
「キラ!」
冷気。
走る。
イフリートの。
右腕。
ジュウウウウ!!
白い蒸気。
炎が。
弱まる。
『グ……』
「効いた!」
カンダ。
「キラの時代来た!」
アリス。
「ボアより長そう」
「比較するな!」
ジュリアが。
走る。
風。
一気に。
イフリートの懐。
アサシンダガー。
炎の消えた。
右腕へ。
ガキン!
亀裂。
「硬い!」
「でも入った!」
リホ。
《鑑定》。
「冷やせば外殻が脆くなる!」
カンダ。
「アリス!」
「キラ!」
左脚。
ジュウウウ!!
ジュリア。
斬る。
亀裂。
カンダ。
踏み込む。
「おらぁ!!」
戦斧。
叩き込む。
ドゴォン!
岩の外殻。
砕ける。
『グオォォォ!!』
「いける!」
だが。
イフリートの。
全身。
炎。
一気に。
膨れ上がる。
ジュウウウウ!!
冷えた箇所が。
再び。
赤く染まる。
アリス。
「戻った!」
リホ。
「火山の力を吸ってる!」
地面。
溶岩。
そこから。
炎の力が。
イフリートへ。
流れ込んでいる。
カンダ。
「じゃあどうすんの!?」
リホが。
見る。
「待って!」
《鑑定》。
胸。
腹。
腕。
脚。
そして。
胸の中心。
「ある!」
「何が!?」
「核!」
胸。
岩の奥。
赤く。
脈打つ。
何か。
「あれを壊せば!」
カンダ。
「了解!」
踏み込む。
イフリートの。
拳。
「右!」
アリス。
カンダ。
避ける。
「ジュリア!」
「うん!」
風。
ジュリアが。
背後へ。
脚を。
斬る。
イフリート。
体勢。
崩れる。
「アリス!」
「キラ!」
冷気。
胸へ。
ジュウウウウ!!
『グオォォォォ!!』
だが。
炎。
さらに。
強くなる。
「溶ける!」
アリスの。
氷が。
押し返される。
「熱すぎ!」
カンダ。
「もう一回!」
「キラ!」
冷気。
「キラ!」
さらに。
冷気。
「キラ!」
三度。
重なる。
ジュウウウウウウ!!
「連発!?」
リホ。
「アリス、魔力は!?」
「まだいける!」
胸の。
炎。
消える。
黒い外殻。
露出。
ジュリア。
走る。
「ここ!」
アサシンダガー。
突き刺す。
バキッ!
亀裂。
「カンダ!」
「おう!」
カンダが。
戦斧を。
構える。
その瞬間。
『…………』
イフリートが。
カンダを。
見た。
『その……気配……』
「…………?」
カンダが。
止まる。
『貴様……』
「何だよ」
炎の奥。
イフリートの。
目が。
揺れる。
『なぜ……』
「カンダ!」
リホの声。
「核が戻る!」
「!」
考えている。
暇はない。
カンダが。
地面を蹴る。
「うおおおおお!!」
《大地の戦斧》。
振り上げる。
イフリートの。
目が。
見開かれた。
『――貴様』
斧。
振り下ろす。
『また――』
ドゴォォォォォン!!
胸。
外殻。
粉砕。
核。
砕ける。
炎が。
止まった。
『…………』
イフリートの。
巨大な身体。
崩れていく。
カンダが。
見上げる。
「…………」
消えゆく。
炎の奥。
イフリートが。
カンダを見る。
そして。
最後に。
呟いた。
『また……お前か――』
炎が。
消えた。
◇
「…………」
静か。
カンダが。
戦斧を。
下ろす。
「…………誰?」
アリスが。
近づく。
「知り合い?」
「初対面だよ!!」
声。
洞窟に。
響く。
ジュリア。
「でも」
「またお前かって」
「知らねえよ!」
リホが。
考える。
「ガルバスと間違えた?」
「顔似てないらしいぞ!」
アリス。
「匂い?」
「親父臭いってこと!?」
「加齢臭?」
「まだそんな歳じゃねえ!」
ジュリア。
「じゃあ何だろうね」
「俺が聞きてえよ!」
カンダが。
イフリートの。
消えた場所を見る。
『その気配』
そして。
『またお前か』
「…………」
カンダは。
戦斧を。
肩へ担いだ。
「俺は」
少しだけ。
間を置く。
「親父じゃねえぞ」
誰に。
言ったのか。
自分でも。
わからなかった。
アリス。
「知ってるよ?」
「今は普通に返事しなくていい!」
◇
数日後。
「取ってきたぞ!」
カンダが。
耐熱袋を。
置いた。
精霊女王。
「おお!」
袋を。
開く。
真っ赤な。
《火蜜の実》。
「見事じゃ」
アリス。
「熱かった」
リホ。
「取ったのカンダだけどね」
カンダ。
「俺の手はまだ覚えてるからな!」
女王。
「これで」
「フェルニアを呼ぶ餌は揃った」
「よし!」
「あとは巣だな」
「その前に」
カンダが。
女王を見る。
「火山に変なのいたぞ」
「変なの?」
「でっかい炎の精霊」
女王の。
表情が。
止まる。
「…………」
「イフリートとかいう」
「…………イフリート?」
フィーネも。
顔を上げた。
「知ってるの?」
アリス。
女王は。
しばらく。
黙っていた。
「古い精霊じゃ」
「古い?」
「かつて」
女王が。
火蜜の実を見る。
「炎哭火山を守っておった」
「守ってた?」
カンダ。
「あれが?」
「長く姿を見せておらなんだ」
「そうなんだ」
「火山の力に呑まれたか……」
女王が。
小さく。
目を伏せる。
「そういや」
カンダ。
「あいつ」
「最後に変なこと言ってた」
女王が。
顔を上げる。
「何と?」
「俺見て」
カンダ。
「『またお前か』って」
「…………」
精霊女王が。
止まった。
カンダ。
「…………」
女王。
「…………」
「おい」
「…………」
「今なんか知ってる顔したよな?」
「しておらぬ」
「した!」
「しておらぬ」
「絶対した!」
アリス。
「したね」
ジュリア。
「した」
リホ。
「したわね」
フィーネ。
「お母様?」
女王。
「しておらぬ!」
カンダが。
詰め寄る。
「じゃあ俺の加護って何なんだよ!」
「教えぬ!」
「またそれかよ!!」
「まだその時ではない!」
「いつその時来るんだよ!」
女王は。
答えない。
カンダ。
「くっそぉぉぉ……!」
アリスが。
肩を叩く。
「そのうちわかるよ」
「お前に慰められると腹立つ!」
「なんで!?」
◇
リホが。
地図を。
広げる。
「次」
北。
指を。
置く。
《天穿山》。
「《天雲樹》の枝」
「それで巣を作れば」
カンダ。
「フェルニアを呼べる」
女王。
「うむ」
「今度こそ」
カンダが。
立ち上がる。
「取って帰るだけだよな?」
女王。
「知らぬ」
「そこは大丈夫って言ってくれよ!」
ジュリア。
「山か」
アリス。
「また山登りだね」
リホ。
「火山も山だったけど」
「…………」
カンダが。
止まる。
「そうだった」
アリス。
「山二連続」
「言うな!」
カンダは。
《大地の戦斧》を。
肩へ担ぐ。
火蜜の実。
入手。
残るは。
不死鳥の。
巣。
そして。
イフリートが。
最後に残した。
言葉。
――また、お前か。
その意味は。
まだ。
わからない。
「よし」
カンダが。
地図を見る。
「次は北だ!」
アリス。
「寒いかな?」
「山だからな」
「キラいる?」
「自分から寒くするな!!」
――第27話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




