第26話 でっかい鳥を呼びたい
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
「でっかい鳥を探そう」
カンダが言った。
「どれくらい?」
アリスが聞く。
「でっかい」
「だからどれくらい?」
「知らない」
「色は?」
「知らない」
「鳴き声は?」
「知らない」
「オス? メス?」
「知らない!」
リホが。
ため息をつく。
「情報が少なすぎるのよ」
「仕方ないだろ!」
カンダが。
酒場の老人から聞いたのは。
ガルバスが。
巨大な鳥に乗って。
山脈の向こうへ飛んだ。
それだけ。
名前も。
種類も。
どこにいるのかも。
わからない。
「とりあえず」
ジュリアが言う。
「聞いて回る?」
「それしかないな」
こうして。
四人の。
でっかい鳥探しが。
始まった。
◇
「でっかい鳥?」
「はい」
「焼いて食うのか?」
「違います」
◇
「巨大な鳥?」
「そう」
「ロック鳥じゃないか?」
「どこにいる?」
「知らん」
「知らんのかい!」
◇
「空を覆うほどの鳥?」
「そうそう!」
「酔っ払いが見たんじゃろ」
「情報源も酔っ払いだった!」
「じゃあ幻じゃ」
「話終わった!」
◇
「…………」
夕方。
四人は。
酒場のテーブルへ。
突っ伏していた。
「何にもわかんねえ」
カンダ。
「でっかい鳥って情報だけじゃ無理ね」
リホ。
「お宝サーチにも反応しないし」
ジュリア。
「鳥はお宝じゃないだろ」
「珍しい鳥なら高く売れるかも」
「売るな!」
アリスは。
ジュースを飲みながら。
考えていた。
「ねえ」
「ん?」
「精霊女王に聞いたら?」
「…………」
三人が。
止まる。
アリス。
「鳥って自然の生き物でしょ?」
「…………」
「すごい鳥なら、精霊っぽくない?」
「…………」
カンダが。
立ち上がった。
「それだ!」
リホも。
「確かに」
ジュリア。
「最初から聞けばよかったね」
カンダが。
アリスを見る。
「なんでもっと早く言わなかった!?」
「今思いついた」
「じゃあ仕方ねえ!」
◇
久しぶりに。
エミール村へ。
やって来た。
以前。
村人全員が。
笑っていた村。
笑いたくなくても。
悲しくても。
痛くても。
笑わされていた。
今は。
「うわぁぁぁん!」
子供が。
泣いている。
転んだらしい。
その横。
母親が。
困った顔で。
膝についた土を払っている。
少し離れた場所では。
夫婦が。
何かで。
言い争っている。
酒場の前では。
男たちが。
大笑いしている。
アリスが。
それを見る。
「うん」
カンダ。
「何?」
「ちゃんとしてる」
カンダも。
村を見る。
泣いて。
怒って。
笑って。
「そうだな」
今度の笑顔は。
ちゃんと。
笑っていた。
◇
村を抜け。
森へ。
以前訪れた。
精霊女王の住む場所へ。
向かう。
途中。
魔物が。
飛び出した。
「ボア!」
カンダが。
手を向けようとした。
その前。
「フレイ!」
炎が。
走った。
魔物を。
吹き飛ばす。
「…………」
カンダが。
止まる。
木々の間。
一人の。
男。
剣を持っている。
「久しぶりだな」
「…………レオン?」
勇者。
レオン。
以前。
精霊女王の娘。
フィーネを捨てたと。
思われていた男。
実際は。
フィーネを。
助けるため。
自分を嫌わせ。
精霊の森へ帰した。
不器用な。
勇者。
「お前」
カンダが。
レオンを見る。
以前より。
装備が。
整っている。
腰には剣。
鎧。
背には。
小さな盾。
どう見ても。
「…………勇者だ」
「勇者だけど?」
「ちゃんと勇者だ」
「何の話だ?」
後ろから。
アリス。
「カンダより勇者っぽい」
ジュリア。
「剣だし」
リホ。
「魔法も使ったわね」
カンダ。
「俺も勇者だよ!」
レオンが。
困った顔をする。
「知ってるけど」
「お前までそんな顔すんな!」
◇
「レオン!」
声。
森の奥から。
フィーネが。
走ってきた。
「遅い!」
「悪い」
「お母様が待ってるわよ」
「ああ」
フィーネが。
カンダたちに。
気づく。
「…………!」
「久しぶり」
カンダが。
手を上げる。
「カンダ!」
フィーネが。
笑った。
「みんなも!」
アリス。
「久しぶりー!」
「久しぶり!」
フィーネの。
左手が。
上がる。
アリスが。
止まった。
「…………」
左手。
指。
指輪。
アリスが。
レオンを見る。
レオンの。
左手。
指輪。
「…………」
アリスが。
二人を。
交互に見る。
「結婚した?」
フィーネ。
真っ赤。
レオンも。
少し。
目を逸らす。
「…………まあ」
「したの!?」
アリスが。
跳ねる。
「おめでとう!」
「ありがとう」
フィーネが。
照れる。
カンダ。
「いつ?」
レオン。
「少し前」
ジュリア。
「早いね」
レオン。
「いろいろあったからな」
リホ。
「まあ、一度別れかけてるものね」
フィーネ。
「別れてない!」
レオン。
「俺が一方的に――」
フィーネ。
「それ以上言わなくていい!」
レオン。
「はい」
カンダ。
「尻に敷かれてんな」
「うるさい」
◇
「来たか!」
精霊女王が。
満面の笑みで。
迎えた。
「久しいな!」
「久しぶり」
カンダが。
手を上げる。
女王は。
フィーネ。
レオン。
そして。
カンダたちを見る。
「どうじゃ!」
「何が?」
「二人が結婚したぞ!」
「聞いた」
「孫が楽しみじゃ!」
「お母様!!」
フィーネの。
顔が。
真っ赤になる。
レオン。
「その話はまだ――」
「何人でもよいぞ!」
「やめてください!」
カンダ。
「楽しそうだな」
アリス。
「楽しそう」
女王。
「楽しいぞ!」
フィーネ。
「私は恥ずかしい!」
◇
少しして。
カンダたちは。
本題を話した。
巨大な鳥。
ガルバス。
山脈。
そして。
その向こう。
精霊女王の。
表情が。
変わった。
「巨大な鳥」
「うん」
「人を背に乗せ」
「山を越えた」
「ああ」
「その者が」
女王が。
カンダを見る。
「ガルバス」
「親父」
女王は。
少し。
黙った。
「…………なるほど」
カンダ。
「知ってる?」
「その鳥ならば」
女王が。
言う。
「心当たりがある」
全員。
身を乗り出す。
「本当!?」
「おそらく」
女王が。
空を見る。
「《不死鳥フェルニア》じゃ」
「フェルニア」
カンダが。
繰り返す。
「精霊なの?」
アリス。
「精霊に近い存在じゃ」
女王が答える。
「空を渡り」
「山を越え」
「海を越え」
「人では辿り着けぬ地へも飛ぶ」
カンダが。
レオンを見る。
「いかにも親父が乗りそう」
レオン。
「俺に言われても知らないぞ」
「勇者仲間だろ」
「勇者全員知り合いだと思うな」
リホが。
女王を見る。
「フェルニアは今どこに?」
「知らぬ」
「…………」
カンダ。
「知らないの!?」
「自由な鳥じゃからな」
女王。
「どこを飛んでいるかなど、わらわにもわからぬ」
「じゃあ探せないじゃん」
アリス。
「探す必要はない」
「え?」
女王が。
笑う。
「呼べばよい」
「呼べるの!?」
カンダが。
立ち上がる。
「呼べるぞ」
「じゃあ呼んで!」
「よかろう」
「やった!」
「ただし」
「…………」
カンダが。
座った。
「その言い方嫌いなんだよ」
女王。
「何がじゃ?」
「絶対このあと面倒なこと言うだろ」
「察しがよくなったな」
「旅してるからな!」
◇
精霊女王によれば。
不死鳥フェルニアを。
呼ぶには。
儀式が。
必要らしい。
儀式そのものは。
女王が。
行える。
問題は。
その前。
「フェルニアが降りるための巣」
「巣?」
「そして」
「フェルニアを呼び寄せる餌」
「餌?」
カンダ。
「神獣みたいな鳥を」
「餌で呼ぶの?」
女王。
「腹は減る」
「急に親近感出たな」
アリス。
「何食べるの?」
女王が。
指を一本。
立てる。
「《火蜜の実》」
「ひみつ?」
「火の蜜と書いて火蜜じゃ」
「秘密の実じゃないんだ」
「話が進まん!」
火蜜の実。
強い。
火の力を。
蓄えた果実。
普通の人間なら。
一口で。
口の中を。
火傷するほど。
熱い。
「それを」
「フェルニアは好む」
カンダ。
「どこにある?」
「南」
女王。
「《炎哭火山》」
「火山」
嫌な。
予感。
「火山の奥深くじゃ」
「やっぱり!」
女王が。
二本目の指を。
立てる。
「そして巣」
フェルニアほどの。
不死鳥は。
普通の木には。
降りない。
必要なのは。
《天雲樹》。
雲に届くほど。
高い場所に。
生える。
空の精霊の力を。
帯びた木。
その枝で。
巣を。
作る。
「それは?」
カンダが聞く。
女王。
「北」
「…………」
「《天穿山》の頂」
「…………」
カンダが。
リホを見る。
リホが。
地図を。
広げる。
南。
炎哭火山。
北。
天穿山。
「逆ね」
「逆だな」
「逆だね」
「逆」
カンダが。
頭を抱える。
「なんで逆方向なんだよ!」
女王。
「わらわに言うな!」
アリス。
「いっぱい旅できるね!」
「嬉しそうだな!」
◇
「俺も行こうか?」
レオンが。
言った。
カンダが。
見る。
剣。
魔法。
精霊の加護。
いかにも。
勇者。
「そういや」
カンダが。
気づく。
「お前、精霊の加護ある?」
「ああ」
レオンが。
頷く。
「炎の精霊の加護を受けている」
「…………」
カンダ。
「何の加護か知ってるの?」
「当然だろ」
「…………」
カンダが。
精霊女王を見る。
「俺のは?」
「教えぬ」
「なんでだよ!!」
女王。
「まだその時ではない」
「いつだよ!」
「その時じゃ」
「答えになってねえ!」
アリス。
「カンダだけ加護ガチャ中」
「引いてるのに中身見せてもらえてねえんだよ!」
レオンが。
苦笑する。
「それで」
剣に。
手を置く。
「素材集め」
「必要なら手伝うぞ」
「…………」
カンダは。
少し。
考えた。
レオンは。
強い。
剣が使える。
魔法も使える。
精霊の加護も。
持っている。
一緒に来れば。
楽になる。
でも。
カンダが。
後ろを見る。
リホ。
ジュリア。
アリス。
「いや」
レオンを見る。
「俺たちで行く」
レオンは。
少しだけ。
驚いた。
それから。
笑う。
「そうか」
「ああ」
「俺たちの旅だからな」
「わかった」
レオンが。
手を出す。
「気をつけろ」
カンダも。
握る。
「お前もな」
アリスが。
レオンを見る。
「勇者同士っぽい!」
カンダ。
「俺は最初から勇者だよ!」
◇
帰り道。
リホが。
地図を見る。
「まずどっち?」
「近い方」
カンダ。
「火山ね」
「…………」
カンダが。
止まる。
「火山?」
「そう」
アリス。
「暑そう」
ジュリア。
「暑いだろうね」
「砂漠の次は火山かよ」
リホ。
「火蜜の実を取らないと」
「わかってるけど!」
アリスが。
前を歩きながら。
杖を。
くるくる回す。
「火山ならボアいっぱい使えるね」
「なんで?」
「火だから」
「火山に火を足すな!」
「じゃあキラ?」
「そっちの方が役立ちそうだな!」
ジュリア。
「火山のお宝って高そう」
リホ。
「珍しい鉱石もありそうね」
「お前ら目的忘れるなよ!」
目的は。
《火蜜の実》。
そして。
《天雲樹》の枝。
二つを。
集め。
精霊女王に。
儀式をしてもらう。
そうすれば。
不死鳥。
《フェルニア》を。
呼べる。
そして。
フェルニアなら。
ガルバスが向かった。
山の向こうへ。
行けるかもしれない。
「よし」
カンダが。
戦斧を。
肩に担ぐ。
「まずは火山だ」
アリス。
「焼き鳥?」
「不死鳥食うな!!」
――第26話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
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それでは、また次の冒険で!




