第25話 親父、魔王のお父さんなの?
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
島から戻った。
翌日。
カンダたちは。
三人の泊まっている宿を訪ねた。
戦士。
ロイド。
魔法使い。
セイン。
僧侶。
ノエル。
大蛇に。
仲間の勇者を食われ。
三人だけで。
島から逃げ帰った。
その三人に。
渡すものがあった。
「これ」
カンダが。
テーブルの上へ。
置く。
勇者の証。
そして。
折れた剣。
ロイドの手が。
止まった。
「…………」
剣を。
手に取る。
柄の部分。
小さく。
名前が刻まれている。
「……あいつのだ」
セインが。
目を伏せる。
ノエルも。
何も言わない。
カンダたちは。
黙って待った。
しばらくして。
ロイドが。
勇者の証を。
握る。
「見つけてくれたのか」
「ああ」
「財宝の中にあった」
大蛇の祠。
あそこには。
金貨や宝石だけではなく。
何人もの。
冒険者。
そして。
勇者たちの遺品が。
残されていた。
「他にもあったけど」
カンダが言う。
「これだけは」
「お前らに返した方がいいと思って」
「…………ありがとう」
ロイドが。
頭を下げた。
「大蛇は?」
セインが聞く。
カンダ。
「ああ」
少しだけ。
笑う。
「倒した」
三人が。
顔を上げた。
「本当ですか?」
ノエル。
「本当」
アリスが。
指を三本立てる。
「三回くらい」
「…………三回?」
セインが。
眉をひそめる。
「最初はカンダが斧で倒したの」
「復活して」
「次は魔法で倒して」
「また復活して」
「頭が三つになった」
「…………」
セインが。
カンダを見る。
「何を言ってるんだ?」
「俺もそう思う」
リホが。
続ける。
「魔王だったわ」
「魔王……」
ロイドが。
呟く。
「しかも」
ジュリア。
「倒すたび強くなった」
ロイドは。
折れた剣を見る。
「…………そうか」
その声は。
小さかった。
カンダは。
それ以上。
何も言わなかった。
少しして。
ロイドが。
剣を。
胸に抱える。
「ありがとう」
もう一度。
そう言った。
◇
数日後。
「さて」
カンダが。
荷物を背負う。
「次どうする?」
大蛇の魔王は。
倒した。
二冊目の。
《叡智の書》も。
手に入った。
だが。
次に。
どこへ向かうかは。
決まっていない。
「情報収集ね」
リホ。
「酒場?」
アリス。
「酒場だな」
カンダ。
「飲む?」
「情報収集だって!」
宿を。
出た。
その時。
「おーい!」
声。
振り返る。
「ん?」
ロイド。
セイン。
ノエル。
三人。
「お前ら」
旅装だった。
剣。
杖。
荷物。
「まさか」
カンダが。
ロイドを見る。
「また行くのか?」
「ああ」
ロイドが。
頷く。
「もう一度、旅に出る」
カンダは。
少しだけ。
驚いた。
「三人で?」
「四人」
「四人?」
ロイドが。
横を見る。
「…………?」
女が。
一人。
立っている。
派手な衣装。
腰や腕に。
小さな飾り。
動くたび。
しゃらん。
音が鳴る。
アリスが。
目を輝かせた。
「かわいい!」
女が。
笑う。
「ありがと」
カンダ。
「誰?」
女が。
一歩前へ。
くるっと。
回った。
「ミレナ」
もう一回。
くるっ。
「踊り子です」
「踊り子」
「そう」
カンダが。
四人を見る。
戦士。
魔法使い。
僧侶。
踊り子。
「…………」
もう一度。
見る。
「勇者は?」
「いない」
ロイドが。
答える。
「…………いないの?」
「いない」
ミレナが。
首を傾げる。
「勇者って必要?」
「いや」
カンダが。
後ろを見る。
商人。
盗賊。
賢者。
そして。
自分。
「…………必要ないかも」
リホ。
「あなたが言うと説得力あるわね」
ジュリア。
「普通の勇者一行じゃないし」
アリス。
「元遊び人!」
「胸張るところじゃねえ!」
ロイドが。
笑った。
「あいつの代わりを探すのは、やめた」
「…………」
ロイドが。
荷物につけた。
勇者の証へ。
触れる。
「あいつの代わりなんて、いないからな」
カンダが。
ロイドを見る。
「ああ」
それだけ。
答えた。
ミレナが。
ロイドの背中を。
バンッ!
「だから!」
「痛っ!」
「いつまで暗い顔してんのって言ったの」
「だからって叩くな」
「元気出るでしょ?」
「痛いだけだ」
アリスが。
笑う。
「ミレナ、いいね!」
「でしょ?」
二人。
すぐに。
意気投合。
カンダ。
「嫌な組み合わせだな」
「なんで!?」
「なんで!?」
声まで。
揃った。
ロイドが。
カンダへ。
手を出す。
「またどこかで」
カンダも。
その手を。
握る。
「ああ」
「死ぬなよ」
「そっちもな」
ロイド。
セイン。
ノエル。
ミレナ。
四人は。
歩き出した。
勇者のいない。
新しい一行。
アリスが。
大きく。
手を振る。
「またねー!」
ミレナも。
振り返る。
「またねー!」
その姿が。
小さくなる。
カンダが。
ぽつり。
「勇者いなくても」
「旅できるんだな」
リホ。
「当たり前でしょ」
ジュリア。
「誰かに任命されないと旅できないわけじゃないし」
「…………そうだな」
アリス。
「じゃあカンダもいらない?」
「なんでそうなる!?」
◇
夜。
酒場。
「魔王?」
カンダの前。
酒を飲んでいた。
老人が。
聞き返した。
「ああ」
「何でもいい」
「噂でも」
「知らないか?」
老人が。
酒を。
一口。
「魔王のう」
考える。
「最近は」
「増えたのう」
「…………増えた?」
カンダが。
聞き返す。
リホも。
老人を見る。
「昔は少なかったの?」
「少なくとも」
老人が。
髭を撫でる。
「わしが若い頃は」
「今ほどあちこちで聞く名前ではなかった」
「いつ頃から?」
ジュリアが聞く。
「そうじゃな……」
老人が。
天井を見る。
「何年も前になるか」
酒。
もう一口。
「一人の勇者が」
「この町へ来た」
カンダ。
「勇者?」
「ああ」
「有名な男じゃった」
「名前は?」
「確か」
老人が。
少し考える。
「ガルバス」
「…………」
カンダが。
固まった。
アリス。
リホ。
ジュリア。
三人が。
一斉に。
カンダを見る。
老人が。
首を傾げる。
「どうした?」
「…………親父」
「ん?」
「俺の親父」
老人。
カンダを見る。
じーっ。
「…………」
「…………」
「…………似ておらんの」
「そこ!?」
アリスが。
吹き出す。
「似てないんだ!」
「笑うな!」
カンダが。
老人へ。
身を乗り出す。
「親父がここに来たのか!?」
「ああ」
「何してた!?」
「酒を飲んでおった」
「そうじゃなくて!」
「何をしていたかなんぞ知らん」
老人が。
笑う。
「旅の途中じゃったんじゃろう」
「どこへ行った?」
老人が。
窓の外を。
指差した。
遠く。
夜の向こう。
巨大な。
山脈。
「向こうじゃ」
「山?」
「山の向こう」
カンダが。
窓を見る。
「越えたのか?」
「いや」
老人が。
首を振る。
「飛んでいった」
「…………は?」
「飛んだ」
「親父が?」
「いや」
老人。
笑う。
「鳥じゃ」
「鳥?」
「でっかい鳥じゃった」
老人が。
両腕を。
広げる。
「こんなもんではないぞ」
「もっと」
「ずっと大きい」
巨大な翼。
人を。
背に乗せ。
空を飛ぶ。
見たこともない。
大鳥。
その背に。
ガルバスが。
乗った。
「山の向こうへ」
老人が。
窓を見る。
「飛んでいった」
「…………」
カンダ。
「親父、鳥乗ってたの?」
リホ。
「気になるところそこ?」
「知らねえもん!」
ジュリア。
「兄弟のことも知らなかったしね」
「それは親父が悪い!」
老人が。
また。
酒を飲む。
「それからじゃ」
「何が?」
「何年か経ってから」
老人が。
言う。
「妙な連中の話を、よく聞くようになった」
強大な。
魔物。
人を。
支配する者。
魔物を。
従える者。
一つの土地を。
我が物とする者。
「いつの頃からか」
老人が。
酒の入った杯を。
揺らす。
「そいつらを」
「魔王と呼ぶようになった」
「…………」
四人が。
黙る。
リホが。
最初に。
口を開いた。
「待って」
指を。
一本。
「ガルバスが山の向こうへ行った」
二本。
「その数年後」
「魔王と呼ばれる存在が増え始めた」
老人。
「そうじゃ」
「関係あるの?」
アリスが聞く。
「知らん」
即答。
「偶然かもしれん」
「ガルバスが何かしたのかもしれん」
「そもそも」
老人が。
肩をすくめる。
「魔王が本当に増えたのか」
「昔からいた奴らが、そう呼ばれるようになっただけなのか」
「わしにはわからん」
「…………」
カンダが。
窓を見る。
山の向こう。
親父が。
消えた場所。
その後。
増えた。
魔王。
「…………」
アリスが。
カンダを見る。
「ねえ」
「やめろ」
「まだ何も言ってない」
「その顔はろくなこと言わない」
アリスが。
指を一本。
立てる。
「カンダのお父さん」
「うん」
二本。
「カンラのお父さん」
「…………うん」
三本。
「魔王のお父さん?」
「やめろぉぉぉぉ!!」
酒場中。
カンダを見る。
「ただでさえ知らない兄弟出てきてんだぞ!」
「魔王まで兄弟にするな!」
リホ。
「誰も兄弟とは言ってないわよ」
ジュリア。
「アリスはお父さんって言っただけ」
「もっと悪いわ!」
アリス。
指を。
数える。
「勇者のお父さん」
「やめろ」
「盗賊団のお父さん」
「やめろって」
「魔王のお父さん」
「親父の家系図どうなってんだよ!!」
老人が。
腹を抱えて。
笑っている。
「笑い事じゃねえ!」
しばらくして。
カンダが。
もう一度。
山を見る。
「爺さん」
「なんじゃ」
「あの山」
「向こうへ行く方法は?」
「歩いて越えるのは難しいのう」
「迂回は?」
「できんことはない」
老人が。
酒を飲む。
「じゃが」
「何ヶ月かかるかわからんぞ」
「…………」
「ガルバスのように」
老人が。
上を。
指差す。
「空でも飛べれば別じゃがな」
「空」
アリスが。
考える。
そして。
カンダを見る。
「鳥探す?」
「そんな簡単に見つかるか!」
「口笛?」
「やめろ」
「来るかも」
「普通の魔物しか来ねえよ!」
アリスが。
口へ。
指を。
持っていく。
「試す?」
「酒場で吹くな!!」
カンダの声が。
酒場に。
響く。
また。
謎が。
増えた。
巨大な鳥。
山の向こう。
そして。
ガルバスが。
そこへ向かった後に。
増え始めたという。
魔王たち。
「…………親父」
カンダが。
酒を飲む。
「お前」
窓の向こう。
山を見る。
「今度は何したんだよ」
答えは。
当然。
返ってこなかった。
――第25話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




