第24話 財宝の中にすごい本がありました
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
「財宝!!」
リホが。
走った。
「お宝!」
ジュリアも。
走った。
「速っ!」
カンダが。
二人を見る。
「戦闘中より速くない!?」
アリスも。
後を追う。
「待ってー!」
「お前まで行くの!?」
「だって財宝だよ?」
「さっきまで魔王と戦ってたんだぞ!?」
「倒したじゃん」
「切り替え早いな!」
三人は。
湖の向こう側。
山のように積まれた。
財宝へ。
向かっていく。
カンダは。
一人。
地底湖を見る。
「…………」
静か。
「もう出てくるなよ」
ゴポッ。
「!」
魚。
ぴょん。
「お前ももういい!」
カンダも。
三人を追った。
◇
「金貨」
リホが。
拾う。
「銀貨」
また。
拾う。
「宝石」
拾う。
「金貨」
拾う。
「リホ」
「何?」
「顔が怖い」
「真剣なの」
「何に?」
「鑑定」
「絶対違うだろ」
リホの横では。
ジュリアが。
剣を持ち上げていた。
「これ高そう」
「どれ?」
リホが。
即座に寄ってくる。
《鑑定》。
「銀製。装飾に宝石。保存状態もいい」
「いくら?」
「かなり」
ジュリア。
笑う。
「持って帰ろう」
「待て待て」
カンダが。
止める。
「これ全部持って帰る気?」
リホ。
「当然」
「船沈むぞ」
「…………」
リホが。
財宝を見る。
船を。
思い出す。
もう一度。
財宝を見る。
「…………大きい船を借りましょう」
「諦める方向じゃないんだ」
アリスは。
財宝の山から。
王冠を見つけた。
頭へ。
乗せる。
「王様」
カンダ。
「似合わねえ」
「じゃあ」
杖も持つ。
「賢者王」
「職業増やすな」
今度は。
盾。
「勇者」
「返せ」
「まだ持ってないよ」
「俺の職業を返せって意味だよ!」
◇
しばらく。
財宝を。
調べていた。
その時。
ジュリアが。
止まった。
「…………」
「どうした?」
カンダが。
近づく。
ジュリアの足元。
古い。
剣。
さっきまで見ていた。
豪華な剣とは。
違う。
刃は。
欠けている。
柄も。
ボロボロ。
その横。
盾。
鎧。
折れた杖。
「これ」
ジュリアが。
しゃがむ。
小さな。
金属の板を。
拾った。
「…………」
カンダも。
見た。
知っている。
「勇者の証」
アリスの。
笑顔が。
少し消えた。
リホも。
手を止める。
周囲を見る。
改めて。
見れば。
財宝だけではない。
剣。
盾。
鎧。
杖。
荷物袋。
壊れた。
装備。
「一個じゃない」
ジュリアが。
別の場所を見る。
そこにも。
勇者の証。
さらに。
奥にも。
「…………」
カンダが。
辺りを見る。
「ここに来た奴らのか」
誰も。
答えない。
答える必要も。
なかった。
大蛇は。
言っていた。
――また来たか。
勇者を。
何人も。
食っていた。
なら。
ここにある物は。
最初から。
大蛇の財宝だったとは。
限らない。
ここへ来た。
冒険者。
勇者。
彼らが。
持っていた物も。
混ざっている。
アリスが。
王冠を。
そっと。
元の場所へ戻した。
「…………」
カンダが。
それを見る。
「アリス」
「ん?」
「それはたぶん普通の財宝だぞ」
「…………」
アリス。
もう一度。
王冠を見る。
「じゃあ持って帰る?」
「切り替え早っ!」
少しだけ。
空気が。
戻った。
◇
「とりあえず」
リホが。
立ち上がる。
「持ち主がわかる物は分けましょう」
「そうだな」
勇者の証。
名前の入った武器。
紋章。
手紙。
身元が。
わかりそうな物。
それらは。
別にする。
残りは。
後で。
町へ戻ってから。
考える。
「…………」
カンダが。
古い剣を。
一本。
置く。
あの三人。
戦士。
僧侶。
魔法使い。
彼らの勇者の物も。
この中に。
あるかもしれない。
「帰ったら」
カンダが言う。
「あいつらにも確認してもらおう」
リホが。
頷く。
「そうね」
アリス。
「うん」
ジュリアも。
「それがいい」
◇
それから。
再び。
財宝を。
調べる。
しばらくして。
リホが。
止まった。
「…………ん?」
一冊の。
本。
古い。
表紙。
豪華でもない。
宝石も。
ついていない。
財宝の中では。
かなり地味。
「本?」
アリスが。
覗く。
「魔法の本?」
「待って」
リホが。
手に取る。
《鑑定》。
「…………」
動かない。
「リホ?」
「…………」
カンダが。
顔を覗く。
「どうした?」
リホが。
ゆっくり。
顔を上げる。
「これ」
「うん」
「持ってる」
「は?」
「同じ物」
リホが。
荷物を。
開ける。
大事に。
包んでいた。
一冊の本。
ラハーム王国。
ネフェラ王女から。
受け取った褒美。
アルカ神殿で。
その正体を知った。
特別な。
一冊。
リホが。
二冊を。
並べる。
「…………」
アリスが。
しゃがむ。
「双子?」
「本に双子ってあるの?」
カンダ。
表紙を見る。
「まさか」
リホが。
頷く。
「《叡智の書》」
「…………」
ジュリアが。
近づく。
「本物?」
「間違いない」
《叡智の書》。
本来。
特別な素質がなければ。
進めない。
《賢者》への道。
その道を。
一度だけ。
開く。
希少な。
魔法の書。
「一冊でも」
リホが。
二冊を見る。
「かなり珍しいはずなのに」
「二冊目」
ジュリアが言う。
「そう」
アリス。
「すごい?」
「すごい」
「売ったら?」
リホ。
「…………」
全員。
リホを見る。
「売らないわよ!」
カンダ。
「今ちょっと考えただろ」
「考えてない!」
ジュリア。
「目が金額計算してた」
「してない!」
「してたよ」
アリスまで。
「してない!!」
◇
カンダが。
二冊の。
《叡智の書》を見る。
「待てよ」
「何?」
「アリスは」
指差す。
「本使ってないよな?」
アリス。
「うん」
「遊び人から、そのまま賢者になった」
「うん」
一本。
指。
「で」
《叡智の書》。
一冊目。
「これ」
二冊目。
「これ」
二本。
指。
リホ。
ジュリア。
二人を見る。
「…………」
リホも。
気づく。
ジュリアも。
気づく。
アリスが。
三人を見る。
「…………あ」
カンダ。
「これ」
少し。
笑う。
「三人とも賢者いけんじゃね?」
「…………」
アリスが。
目を輝かせる。
「トリプル賢者!」
「何だよトリプル賢者って!」
「三人の賢者!」
「そのままだな!」
アリスが。
リホを見る。
「リホも賢者!」
ジュリアを見る。
「ジュリアも賢者!」
「まだならないわよ」
リホ。
即答。
「え?」
カンダ。
「ならないの!?」
「今はね」
リホが。
《叡智の書》を見る。
「アルカ神殿でも言われたでしょ」
まだ。
商人として。
歩く道がある。
「それに」
リホが。
本を。
大事に包む。
「こんな貴重な物、使うならちゃんと考えてから使いたい」
カンダ。
「そこは商人なんだな」
「当然」
ジュリアも。
二冊目を見る。
「私もまだいいかな」
「ジュリアも?」
アリスが聞く。
「うん」
「なんで?」
ジュリアが。
短剣を。
くるっと。
回す。
「盗賊、楽しいから」
アリス。
「わかる!」
カンダ。
「お前、遊び人やめたばっかだろ!」
「遊び人も楽しかったよ」
「知ってる!」
アリスが。
二人を見る。
「じゃあ」
笑う。
「なりたくなったら?」
リホ。
「その時は」
ジュリア。
「なる」
「おお!」
カンダは。
二人を見る。
そして。
少しだけ。
笑った。
「まあ」
《大地の戦斧》を。
肩へ。
「自分で決められるなら」
「自分で決めりゃいいか」
アリス。
「カンダは?」
「俺?」
「転職」
「…………」
カンダの。
笑顔が。
消えた。
「できねえよ!!」
地底湖に。
声が。
響いた。
◇
その後。
四人は。
持てるだけの物を。
まとめた。
もちろん。
持ち主が。
わかりそうな物は。
別。
「重い」
カンダが。
巨大な袋を。
背負う。
リホ。
「もう少しいける?」
「俺を荷馬車だと思ってない?」
「大丈夫」
「何が?」
「荷馬車より力あるから」
「比較対象がおかしい!」
ジュリアが。
もう一袋。
持ってくる。
「これも」
「まだあるの!?」
アリスも。
小さな袋。
「これも」
「お前は自分で持て!」
「賢者だから」
「関係ねえ!」
帰り道。
カンダの背中には。
大量の財宝。
リホの荷物には。
二冊の。
《叡智の書》。
一人は。
すでに賢者。
二人には。
いつか賢者へ進める。
道ができた。
もっとも。
それがいつになるのか。
まだ。
誰にもわからない。
「カンダー」
「なんだよ」
「トリプル賢者になったらさ」
「うん」
「カンダいらなくなる?」
「…………」
カンダが。
振り返る。
「なるわけねえだろ!」
リホ。
「荷物持ちが必要だもの」
ジュリア。
「前で殴る人も」
アリス。
「ヒルも使えるし」
「もうちょっと勇者らしい理由くれよ!!」
四人の声が。
古い祠に。
響いていた。
――第24話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
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それでは、また次の冒険で!




