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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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21/42

第21話 これはボアだが

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


「ボア!」


ドンッ!


「ボア!」


ドンッ!


「ボア!」


ドンッ!


「ボア!」


ドンッ!


「…………」


カンダが。


戦斧を持ったまま。


アリスを見る。


「うるせえな!」


「練習!」


「見ればわかる!」


賢者になって。


数日。


アリスは。


すっかり魔法にハマっていた。


「ボア!」


ドンッ!


「ボア!」


ドンッ!


魔物が。


次々と。


吹き飛んでいく。


ジュリアが。


短剣をしまう。


「私の出番ない」


リホも。


弓を下ろす。


「私も」


カンダだけ。


戦斧を構えたまま。


「俺なんか一歩も動いてねえ」


アリスが。


胸を張る。


「賢者だから!」


「便利な言葉だな、それ!」


《星導の杖》。


ピカッ。


また。


魔力が集まる。


「ボア!」


ドンッ!


「まだやるの!?」


◇


魔物が。


いなくなった。


アリスが。


杖を見る。


「ねえ」


「今度は何?」


「ボアって」


「うん」


「一個ずつ出さなきゃダメなのかな」


「知らん」


「二個出せない?」


「俺に聞くな」


アリスが。


杖を握る。


右手。


「ボア」


炎。


左手。


「ボア」


炎。


「…………」


カンダ。


「できてる」


ジュリア。


「二個」


リホが。


興味深そうに見る。


「それ、同時に撃てる?」


「やってみる」


アリスが。


両手を前へ。


「ボア!」


「ボア!」


ドドンッ!!


二つの火球が。


別々の木へ。


着弾。


「おお!」


アリスが。


目を輝かせる。


「二個出た!」


カンダも。


少し感心する。


「便利じゃん」


「三個いけるかな?」


「手二本しかないだろ」


「杖あるよ」


「そういう問題?」


杖。


右手。


左手。


三つ。


炎。


「できた」


「できるんかい!」


ドドドンッ!!


リホが。


腕を組む。


「連続で使うだけじゃなくて、同時にも使えるのね」


アリスが。


首を傾げる。


「じゃあ」


二つの。


ボア。


それを。


ゆっくり。


近づける。


「おい」


カンダが。


一歩下がる。


「何してる?」


「重ねてる」


「大丈夫なの!?」


「知らない」


「知らないでやるな!」


二つの炎が。


触れる。


ギュゥゥゥン……!


炎が。


一つになる。


さっきより。


大きい。


「できた!」


「投げろ投げろ投げろ!」


「ボア!」


ドゴォォォン!!


地面。


爆発。


四人の髪が。


風圧で揺れる。


「…………」


アリス。


「強い」


カンダ。


「強いな」


リホ。


「でも」


アリスを見る。


「かなり魔力使ったでしょ?」


「…………」


アリスが。


急に座る。


「疲れた」


「やっぱり」


「燃費悪っ!」


カンダが。


呆れる。


アリスは。


地面に座ったまま。


杖を掲げる。


「でも強かった!」


「倒れるまで撃つなよ?」


「はーい」


◇


少し休憩して。


また。


魔物を探す。


その時。


少し離れたところから。


爆発音。


ドォン!!


「ん?」


見ると。


別の冒険者たち。


四人組。


先頭には。


剣を持った男。


「また勇者かな」


アリスが言う。


カンダ。


「なんでわかる?」


「なんとなく」


「便利だな、なんとなく」


向こうの。


魔法使いが。


杖を振る。


「ボワンド!」


ドォン!!


大きな炎。


魔物が。


吹き飛ぶ。


アリスの目が。


輝いた。


「おお」


「上位の火魔法ね」


リホが言う。


「ボワンドか」


カンダも。


炎を見る。


「俺もまだ使えないな」


「やってみる」


「何を?」


アリスが。


立つ。


右。


ボア。


左。


ボア。


二つを。


重ねる。


ギュゥゥゥン……!


「それさっきの!」


「ボア!」


ドゴォォン!!


向こうの勇者一行が。


振り返った。


魔法使いが。


目を見開く。


「ボワンド!?」


アリス。


首を振る。


「これはボアだが」


「…………」


勇者が。


アリスを見る。


「なんか聞いたことある!」


カンダも。


「俺もある気がする!」


魔法使いだけ。


炎を見ている。


「いや」


「何?」


「それ、ボワンドじゃない」


「うん。ボア」


「ボアを二つ無理やり重ねてる!」


「うん」


「魔力効率悪すぎるだろ!」


アリス。


「うん」


そして。


座る。


「疲れた」


カンダ。


「素直にボワンド覚えろ!!」


◇


夕方。


今日のレベル上げを。


終える。


「帰るか」


「ラルー?」


アリスが。


杖を掲げる。


「今日は歩こう」


「なんで?」


「魔力ない」


「使い切ってんじゃねえよ!」


四人は。


街道を歩く。


しばらくして。


ジュリアが。


止まった。


「誰かいる」


「どこ?」


「前」


街道の。


脇。


人影。


一人。


いや。


三人。


「…………!」


カンダが。


走る。


「おい!」


三人とも。


ボロボロだった。


戦士。


僧侶。


魔法使い。


装備は。


傷だらけ。


一人は。


意識すらない。


「アリス!」


「うん!」


カンダと。


アリス。


二人が。


手をかざす。


「ヒル!」


「ヒル!」


光。


傷が。


少しずつ。


塞がっていく。


「もう一回!」


「ヒル!」


アリスも。


「ヒル!」


二人で。


治療する。


しばらくして。


戦士の男が。


目を開けた。


「…………ここは」


「大丈夫か?」


カンダが。


水を渡す。


男が。


震える手で飲む。


「助かった……」


「何があった?」


「…………」


男が。


黙る。


カンダは。


三人を見る。


戦士。


僧侶。


魔法使い。


「お前ら」


嫌な予感。


「勇者一行か?」


男が。


頷いた。


「そうだ」


「勇者は?」


「…………」


返事がない。


アリスも。


黙る。


リホ。


ジュリア。


表情が変わる。


男が。


絞り出す。


「食われた」


「…………」


カンダの。


顔から。


笑いが消えた。


「誰に?」


◇


近くの町。


宿屋。


三人を。


休ませる。


少し回復した。


戦士が。


話し始めた。


「海を渡った先に、小さな島がある」


「島?」


「そこに古い祠がある」


リホが。


地図を広げる。


「この辺り?」


「たぶん」


男が。


指を差す。


海。


その中に。


小さな島。


「その祠には」


男が。


続ける。


「昔から、莫大な財宝が隠されているって噂がある」


「財宝?」


リホが。


顔を上げる。


カンダ。


「食いつくな」


「情報として聞いただけ」


ジュリアも。


「どれくらい?」


「お前も食いつくな!」


アリス。


「行く?」


「まだ話終わってねえ!」


戦士が。


少しだけ。


笑った。


だが。


すぐに。


表情が戻る。


「俺たちも、その噂を聞いて島へ渡った」


四人で。


祠へ。


入った。


確かに。


財宝はあった。


金貨。


宝石。


武器。


防具。


見たこともない。


品々。


だが。


「いたんだ」


男の手が。


震える。


「祠の奥に」


「何が?」


「大蛇」


「蛇?」


「そんなもんじゃない」


巨大。


人間など。


簡単に。


丸呑みにできるほど。


大きな蛇。


剣。


魔法。


必死に。


戦った。


だが。


勝てなかった。


「それで勇者が?」


「…………ああ」


男が。


拳を握る。


「俺たちを逃がすために残った」


「…………」


「最後に見た時」


声が。


震える。


「勇者は」


「そいつに食われた」


部屋が。


静かになる。


カンダが。


聞く。


「ただの魔物なのか?」


男が。


首を振った。


「喋った」


「…………」


「人の言葉を?」


リホが聞く。


「ああ」


大蛇は。


勇者を見て。


笑った。


そして。


言った。


男が。


その言葉を。


思い出す。


「――また勇者か」


「…………」


ジュリアが。


目を細める。


「また」


「ああ」


男が。


頷く。


「俺たちが最初じゃない」


祠には。


剣があった。


盾があった。


鎧があった。


勇者の証も。


いくつも。


転がっていた。


「最近は」


男が。


続ける。


「財宝の噂を聞いて、勇者が何組も島へ渡ってる」


「でも」


「帰ってきた奴は、ほとんどいない」


沈黙。


アリスが。


小さく言う。


「勇者を食べてる……?」


リホが。


考える。


人語を話す。


巨大な魔物。


財宝。


何人もの。


勇者。


「…………」


ジュリアが。


カンダを見る。


「魔王だったりして」


カンダは。


何も言わない。


操獣魔王ヴァルガ。


墓王獣アヌガル。


魔王という存在を。


少しずつ。


知ってきた。


「ありそうで嫌だな」


カンダが。


ため息をついた。


◇


翌朝。


港。


「本当に行くのか?」


助けた戦士が。


見送りに来ていた。


「まあ」


カンダが。


船を見る。


「話聞いちゃったし」


「それに」


リホ。


「財宝」


「お前はそれだろ!」


ジュリア。


「お宝」


「お前も!」


アリスが。


杖を掲げる。


「大蛇!」


「一人だけ目的違うな!」


小さな。


船。


四人が。


乗り込む。


海の向こう。


うっすらと。


島が見える。


カンダが。


《大地の戦斧》を肩へ。


「勇者を食う大蛇、か」


アリスが。


カンダを見る。


「カンダも食べられるかな?」


「食べられる前提で聞くな」


「おいしいかな?」


「知らねえよ!」


船が。


進む。


島へ。


財宝が眠る。


古い祠。


そして。


何人もの勇者が向かい。


帰ってこなかった場所。


その祠の奥に。


何がいるのか。


まだ。


四人は知らない。


――第21話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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