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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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20/43

第20話 賢者、レベル1からやり直します

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


「レベル1です」


「…………」


アルカ神殿。


転職を終えた。


賢者アリス。


神官から。


衝撃の事実を告げられた。


「レベル1?」


カンダが聞き返す。


「はい」


「賢者なのに?」


「はい」


「弱くなった?」


「職業を変えたのです。当然、賢者としての経験は一から積む必要があります」


「…………」


カンダが。


アリスを見る。


賢者のローブ。


《星導の杖》。


見た目だけなら。


かなり強そう。


アリスが。


杖を掲げる。


「レベル1賢者!」


ピカッ。


「嬉しそうに言うな!」


リホが。


腕を組む。


「でも、昨日までの経験が全部なくなったわけじゃないんでしょ?」


「もちろんです」


神官が頷く。


「身体能力や、これまで身につけたものまで失われるわけではありません」


「じゃあ」


ジュリアが。


アリスを見る。


「口笛は?」


「…………」


全員。


アリスを見る。


「やってみる?」


「やって」


アリスが。


息を吸う。


ピィィィィィ――!!


森の方から。


ガサガサガサガサ!!


「来た」


「来たな」


「来たわね」


「来ちゃった」


神官が。


神殿の中へ戻る。


「頑張ってください」


「逃げた!?」


◇


魔物。


六体。


森から。


飛び出してきた。


「よし」


カンダが。


《大地の戦斧》を構える。


「レベル上げだ!」


「おー!」


アリスが。


《星導の杖》を掲げる。


「私も戦う!」


「無理すんなよ。レベル1なんだから」


「ボア!」


いきなり。


炎。


ドンッ!!


魔物一体が。


吹き飛んだ。


「…………」


カンダが。


止まる。


アリスも。


止まる。


「できた」


「できたな」


「ボア!」


ドンッ!!


二体目。


「ちょっと待て」


「何?」


「俺がボア覚えた時より強くない?」


リホが。


《鑑定》。


「賢者だからじゃない?」


「俺、勇者なんだけど?」


ジュリア。


「転職できないけど」


「今それ関係ないだろ!」


残り四体。


カンダが。


戦斧を振る。


ドガァン!!


ジュリアが。


風のように走る。


ザシュッ!


リホの。


火薬矢。


ドンッ!


あっという間に。


全滅。


アリスが。


杖を掲げる。


「レベル上がった気がする!」


「気がするんだ」


「なんとなく!」


「お前それで全部済ませるな」


◇


少し休んで。


「もう一回!」


「待て」


カンダが。


アリスを見る。


「普通、魔物探すだろ?」


「うん」


「でも俺たちには」


全員。


アリスを見る。


アリスが。


笑う。


「口笛があります!」


ピィィィィィ――!!


ガサガサガサ!!


「便利すぎる!」


魔物。


八体。


「右から三!」


アリスが。


即座に叫ぶ。


「ジュリア!」


「了解」


風。


「リホ、左の大きいの硬い!」


「《鑑定》!」


「火に弱い!」


「カンダ!」


「ボア!」


ドォン!!


戦う。


倒す。


経験を積む。


そして。


また。


「口笛!」


ピィィィィィ――!!


「休ませろ!!」


◇


何度目かの。


戦闘。


カンダの腕に。


小さな傷。


「カンダ!」


「これくらい平気」


アリスが。


杖を向ける。


「なんか……」


光。


杖の先に。


集まる。


「あ」


カンダが。


嫌な予感。


「ヒル!」


ふわっ。


傷が。


消えた。


「おお!」


アリスが。


自分で驚く。


「ヒル!」


「覚えたな」


「ヒル覚えた!」


嬉しそうに。


アリスが。


笑う。


カンダは。


少しだけ。


その顔を見る。


昨日。


アリスが。


賢者になると決めた理由。


「これで」


アリスが。


杖を握る。


「私も治せる!」


「ああ」


「怪我していいよ!」


「それは違う!!」


◇


さらに。


口笛。


戦闘。


口笛。


戦闘。


口笛。


「アリス」


「ん?」


「これ」


カンダが。


息を切らす。


「誰のレベル上げ?」


「私!」


「なんで俺たちが一番疲れてんの!?」


「護衛?」


「レベル1賢者を甘やかしすぎた!」


リホが。


水を飲む。


「効率はいいわ」


「商人は効率で全部許すな!」


その時。


魔物の群れ。


今度は。


十体以上。


「多い!」


「アリス!」


「わかってる!」


アリスが。


戦場を見る。


前。


左右。


後ろ。


「ジュリア右!」


「うん!」


「リホ左!」


「了解!」


「カンダ真ん中!」


「俺だけ雑!」


魔物が。


一斉に来る。


「うーん……」


アリスが。


杖を握る。


「風……」


《星導の杖》が。


反応する。


空気が。


渦巻く。


「これかな?」


杖を。


振る。


「フュラ!」


ズバァッ!!


風の刃。


二体の魔物が。


まとめて吹き飛ぶ。


ジュリアが。


振り返る。


「風」


「風!」


アリスが。


嬉しそうに。


もう一度。


「フュラ!」


ズバァッ!!


「いいな、それ」


ジュリアが。


少しだけ。


羨ましそうに見る。


「ジュリアもそのうち使えるかもよ?」


「ほんと?」


「なんとなく!」


「根拠ないんかい!」


カンダが。


魔物を殴り飛ばした。


◇


昼。


だったはずが。


気づけば。


夕方。


「もう帰ろう」


カンダが。


地面に座っている。


「疲れた」


ジュリアも。


木にもたれている。


リホは。


魔物の素材を。


山ほど整理している。


「今日、かなり稼いだわ」


「元気だな商人」


アリスだけ。


まだ元気。


「もう一回口笛する?」


三人。


「やめろ」


「はーい」


その時。


森の奥から。


低い唸り声。


「…………」


カンダが。


ゆっくり立つ。


「口笛してないよな?」


「してない」


巨大な。


熊型の魔物。


「最後に一匹か」


「大きいね」


熊が。


突進。


「カンダ!」


「おう!」


カンダが。


前へ出る。


だが。


アリスが。


何かを感じた。


「待って!」


杖を。


前へ。


「なんか」


「今度は何!?」


「冷たい!」


「冷たい!?」


杖の先。


白い冷気。


「キラ!」


バキィィィン!!


氷。


熊の足元が。


一瞬で凍りつく。


「おお!」


動きが。


止まる。


「今!」


ジュリアが。


飛び込む。


ザシュッ!


カンダ。


「《大地割り》!!」


ズガァァン!!


熊が。


倒れた。


静寂。


アリスが。


凍った地面を見る。


「氷!」


カンダも。


見る。


「砂漠で欲しかったな」


「…………」


アリス。


「ほんとだ!」


「覚えるの遅えよ!!」


◇


帰り道。


「結構覚えたわね」


リホが。


数える。


「ボア」


「ヒル」


「フュラ」


「キラ」


アリスが。


指を折る。


「四つ!」


「一日で四つなら十分じゃない?」


「もっと覚えたい」


「明日にしろ」


「賢者楽しい!」


「昨日まで遊び人がいいって言ってた奴とは思えないな」


アリスが。


笑う。


「遊び人も楽しいよ?」


「どっちなんだよ」


「どっちも!」


「欲張りだな」


「賢者だから!」


「賢者関係ある?」


歩く。


町までは。


まだ遠い。


カンダが。


ため息。


「あとどれくらい?」


リホが。


地図を見る。


「二時間くらい」


「…………」


ジュリア。


「疲れた」


「俺も」


アリスが。


杖を肩に乗せる。


「遠いねー」


「お前が一番元気だけどな」


「なんか一瞬で帰れたらいいのにね」


「そんな都合いい――」


アリスが。


止まる。


「…………」


「どうした?」


「なんか」


また。


その顔。


カンダが。


嫌な予感。


「わかった気がする」


「何が?」


アリスが。


《星導の杖》を掲げる。


「帰るやつ!」


「待て待て待て!」


光が。


四人を包む。


「ラルー!」


「説明してから使えぇぇぇ!!」


◇


光。


そして。


「…………」


カンダが。


目を開ける。


目の前。


巨大な白い建物。


《アルカ神殿》。


「…………」


リホ。


「戻った」


ジュリア。


「一瞬」


アリス。


「すごーい!」


カンダが。


アリスの肩を掴む。


「アリス」


「なに?」


「これ」


「うん」


「いつ覚えた?」


「今」


「今日のレベル上げ」


「うん」


「最初からこれ覚えてたら?」


「行き帰り楽だったね」


「…………」


カンダが。


空を見る。


「最初に覚えてくれぇぇぇぇ!!」


神殿の前に。


勇者の叫びが。


響いた。


◇


翌朝。


「今日もレベル上げ!」


元気いっぱい。


アリスが。


杖を掲げる。


「ラルー!」


光。


四人は。


昨日の森へ。


一瞬で移動。


「これは便利だな」


カンダも。


さすがに認めた。


「帰りも頼むぞ」


「任せて!」


そして。


アリスが。


息を吸う。


カンダが。


戦斧を構える。


ジュリアも。


短剣。


リホも。


弓。


「よし」


「来い!」


ピィィィィィ――!!


森中から。


魔物の声。


「…………」


カンダが。


顔を引きつらせる。


「ちょっと多くない?」


「いっぱい経験値!」


「お前、賢者になってから雑になってない!?」


魔物が。


押し寄せる。


「アリス!」


「はーい!」


《星導の杖》。


光。


「ルミ!」


カッ!!


強烈な。


閃光。


魔物たちが。


一斉に止まる。


「おお!」


カンダたちも。


止まる。


「目がぁぁぁぁ!!」


「味方まで効いてる!」


「ごめーん!」


「賢者初心者ぁぁぁ!!」


◇


それでも。


戦う。


失敗する。


また戦う。


そして。


覚える。


「カンダ!」


アリスの杖から。


魔力。


カンダの身体が。


軽くなる。


「お?」


「アクセ!」


次の瞬間。


カンダが。


いつもより速く。


魔物との距離を詰めた。


「速っ!」


「すごい!」


「これいいな!」


「もう一回!」


「重ねなくていい!」


次。


巨大な魔物の。


棍棒。


カンダへ。


「危ない!」


アリスが。


杖を向ける。


「クルスト!」


光が。


カンダを包む。


ガァァン!!


棍棒。


直撃。


「カンダ!」


「…………」


煙の中。


カンダが。


立っている。


「痛い」


「効いてない!?」


「いや」


カンダが。


肩を回す。


「いつもならもっと痛い」


「効いてる!」


アリスが。


ガッツポーズ。


「防御上がった!」


リホが。


目を細める。


「速度上昇と防御上昇……」


「使い方次第でかなり強いわね」


「でしょ?」


「まだ自分でよくわかってないでしょ」


「うん!」


「胸張るな」


◇


夕方。


戦闘終了。


四人。


草原に。


座り込む。


アリスが。


指を折る。


「ボア」


「ヒル」


「フュラ」


「キラ」


「ルミ」


「アクセ」


「クルスト」


「ラルー」


カンダが。


数える。


「八個」


「いっぱい覚えた!」


「二日で覚えすぎじゃない?」


ジュリアが。


言う。


リホも。


頷く。


「賢者の適性が高いっていうのは、本当みたいね」


アリスが。


《星導の杖》を見る。


ピカッ。


もう。


ただ光るだけの。


スティックではない。


炎。


回復。


風。


氷。


光。


強化。


そして。


移動。


昨日まで。


危険が見えても。


声を出すことしか。


できなかった。


今は。


違う。


アリスが。


三人を見る。


「ねえ」


「ん?」


「次、怪我したら」


杖を。


掲げる。


「私がヒルするね」


カンダが。


笑う。


「ああ」


ジュリアも。


「お願い」


リホも。


「頼りにしてるわ」


「任せて!」


ピカッ。


「でも」


カンダが。


立ち上がる。


「できれば怪我する前にクルスト頼む」


「あ」


「忘れてただろ!」


「アクセもあるよ!」


「そういうことじゃねえ!」


アリスは。


賢者レベル1から。


ほんの二日。


ずいぶん。


できることが増えた。


もっとも。


使いこなせるかどうかは。


また。


別の話である。


――第20話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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