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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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16/43

第16話 王女様に夜呼ばれました

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


巨大な石扉が。


ゆっくりと開く。


ゴゴゴゴゴ……。


「…………」


カンダは。


右手を前へ出していた。


「最初からボアでいく」


「斧は?」


ジュリアが聞く。


「一応持っとく」


「私は?」


アリスが。


光るスティックを掲げる。


「とりあえず光ってろ」


「はーい」


ピカッ。


「軽いな……」


扉が。


完全に開いた。


◇


その先は。


巨大な空間だった。


中央には。


大きな石棺。


周囲には。


歴代の王族らしき石像。


そして。


その奥。


「…………いる」


ジュリアが。


アサシンダガーを構えた。


暗闇。


二つの目が。


光る。


グルルルル……。


低い唸り声。


ゆっくりと。


姿を現した。


「でか……」


カンダが。


思わず呟く。


巨大な獣。


黒い体毛。


鋭い牙。


頭には。


二本の角。


背中には。


石のような甲殻。


四本の脚。


その周囲には。


黒い魔力のようなものが。


まとわりついている。


リホが。


目を細めた。


「《鑑定》」


「何?」


「待って」


リホが。


巨大な魔物を見る。


「名前は――」


少し間。


「《墓王獣アヌガル》」


「墓王獣」


カンダが。


戦斧を構える。


「強そうだな」


「強い」


「どのくらい?」


リホの。


表情が変わる。


「それより」


「何?」


「この魔物」


リホが。


アヌガルを見る。


「周囲の魔力を吸収してる」


「魔力?」


「たぶん、ずっとここにいた」


王家の墓。


長い年月。


ここに溜まった魔力。


それを。


アヌガルは。


吸収し続けている。


「それだけじゃない」


リホが続ける。


「他の魔物を従える性質も出始めてる」


カンダが。


眉をひそめた。


「それって」


思い出す。


操獣魔王ヴァルガ。


大量の魔物を。


従えていた存在。


「魔王みたいじゃない?」


アリスが言った。


リホが。


頷く。


「まだそこまではいってない」


「まだ?」


「このまま成長したら」


リホが。


静かに言う。


「いずれ魔王と呼ばれる存在になるかもしれない」


「…………」


四人が。


アヌガルを見る。


グルルルル……。


カンダは。


少し考えた。


「じゃあ」


《大地の戦斧》を。


肩へ担ぐ。


「今倒した方が楽じゃん」


「そうね」


ジュリアも。


アサシンダガーを構える。


「魔王になるまで待つ理由ないし」


アリスが。


光るスティックを掲げた。


「早期発見」


ピカッ。


「早期討伐!」


「病気みたいに言うな!」


アヌガルが。


吠えた。


「来るぞ!」


◇


ドンッ!


巨体が。


床を蹴る。


「速っ!」


カンダが。


前へ。


アヌガルの爪。


《大地の戦斧》。


ガァン!!


「ぐっ!」


カンダの足が。


後ろへ滑る。


「重い!」


「右!」


アリスが叫ぶ。


カンダが。


身体をずらす。


牙。


ギリギリで。


かわす。


「ジュリア!」


「うん」


風。


ジュリアが。


アヌガルの横へ。


アサシンダガー。


甲殻の隙間へ。


ザシュッ!


「入った」


アヌガルが。


大きく身体を振る。


「うわっ!」


ジュリアが。


後方へ飛ぶ。


「ヒル!」


カンダが。


すぐに回復。


「ありがとう」


「まだいける?」


「余裕」


リホが。


アヌガルを観察している。


「カンダ!」


「何!?」


「魔力が身体を覆ってる!」


「つまり!?」


「まだわからない!」


「鑑定頑張って!」


◇


カンダは。


右手を前へ出した。


「だったら!」


前回。


ファントムには。


これが効いた。


「ボア!」


炎。


ドォン!!


アヌガルを。


直撃。


「よし!」


煙。


「…………」


晴れる。


アヌガル。


無傷。


「…………」


カンダが。


固まる。


アリスが。


光るスティックを下げた。


「ボアの時代終わった?」


「一話しかもたなかった!!」


アヌガルが。


吠える。


「なんで効かない!?」


リホが。


もう一度。


《鑑定》。


「ちょっと待って!」


「早く!」


「魔法耐性……高い」


「え?」


「かなり高い」


「じゃあどうすんの!?」


リホが。


アヌガルを見る。


「…………」


「…………」


「…………あ」


「何!?」


リホが。


カンダを見る。


「これ」


「うん」


「普通に殴れるわよ」


「…………」


カンダが。


固まる。


《大地の戦斧》を見る。


アヌガルを見る。


リホを見る。


「先に言って!!」


「鑑定に時間かかったの!」


「前回物理効かなかったから魔法からいったんだよ!」


「学習した結果ね」


「学習が裏目に出た!」


◇


「じゃあ」


カンダが。


《大地の戦斧》を。


両手で握る。


「話は早い」


アヌガルが。


突進。


「アリス!」


「左!」


カンダが。


左へ飛ぶ。


「ジュリア!」


「もう行ってる!」


風。


ジュリアが。


アヌガルの脚へ。


斬撃。


体勢が。


崩れる。


「リホ!」


「甲殻の薄い場所は首の下!」


「了解!」


カンダが。


踏み込む。


戦斧。


横薙ぎ。


ドガァン!!


「グォォォォ!!」


「効いた!」


アリスが。


光るスティックを振る。


ピカッ。


「斧の時代戻ってきた!」


「早かったな!」


アヌガルが。


怒り狂う。


黒い魔力が。


身体から噴き出した。


「カンダ!」


リホが叫ぶ。


「魔力が集中してる!」


アヌガルの。


角。


黒い光。


「何か来る!」


「全員離れろ!」


黒い衝撃。


ドォォォン!!


石床が。


吹き飛ぶ。


「危なっ!」


「カンダ!」


アリスが叫ぶ。


「今!」


「なんとなく!?」


「なんとなく!」


「信じる!」


カンダが。


走る。


アヌガルは。


大技を放った直後。


動けない。


「首の下!」


リホ。


「右から!」


アリス。


「開ける!」


ジュリア。


風。


ジュリアの刃が。


アヌガルの前脚を切る。


巨体が。


沈む。


カンダが。


《大地の戦斧》を。


握り締めた。


「…………」


その瞬間。


ふと。


思った。


普通に殴るだけじゃない。


この斧。


大地の戦斧。


なら。


「これだ」


「何?」


カンダが。


腰を落とす。


力を。


脚へ。


腰へ。


肩へ。


戦斧へ。


一気に。


流す。


「いくぞ!」


踏み込む。


戦斧を。


地面すれすれから。


振り上げる。


「《大地割り》!!」


ズガァァァァァン!!


戦斧が。


アヌガルへ。


叩き込まれる。


同時に。


地面。


バキバキバキッ!!


大地を伝った衝撃が。


下から。


巨体を突き上げる。


「グォォォォォォ――!!」


アヌガルが。


宙へ浮いた。


そして。


ズズゥン……。


倒れた。


「…………」


静寂。


カンダは。


戦斧を肩へ担いだ。


「…………」


アリスが。


カンダを見る。


「技名ついた」


「そこ?」


ジュリアも。


「今考えた?」


「うるさい」


リホが。


割れた床を見る。


「王家の墓よ、ここ」


「…………」


カンダが。


床を見る。


かなり。


割れていた。


「怒られる?」


「たぶん」


「魔物倒したから許してくれるだろ」


アリスが。


首を傾げる。


「筋肉割りでもよかったね」


「何その技!」


「カンダっぽい」


「大地割りでお願いします!!」


◇


ラハーム王宮。


「見事であった」


ネフェラが。


微笑んでいる。


「墓王獣アヌガルは討伐された」


「はい」


「王家の墓も、再び我らの手に戻った」


「はい」


カンダは。


少しだけ目を逸らす。


「何か?」


「いや」


床。


割った。


かなり。


「なんでもないです」


リホが。


横から言う。


「墓の床を――」


「言わなくていい!」


ネフェラが。


笑った。


「多少の損傷は聞いている」


「聞いてた!」


「魔物を討つためだ。構わぬ」


「よかった……」


「そして」


ネフェラが。


手を上げる。


兵士たちが。


箱を運んでくる。


金貨。


砂漠を越えるための水。


保存食。


薬。


詳細な地図。


「これを褒美として受け取ってほしい」


リホの。


目が輝いた。


「ありがとうございます」


「一番嬉しそうだな」


「当然よ」


ネフェラは。


カンダを見る。


「それから」


「はい?」


王女が。


微笑む。


「カンダ」


「はい」


「そなたには」


少し。


間。


「今夜」


カンダが。


止まった。


「…………はい」


「一人で」


「…………はい」


「私の部屋へ来てもらいたい」


「…………」


「…………」


「…………」


後ろから。


三つの視線。


カンダは。


振り返らない。


「わかりました」


ジュリア。


「へぇ」


リホ。


「ふーん」


アリス。


「夜だって」


カンダが。


勢いよく振り返る。


「違うからな!?」


ジュリアが。


首を傾げる。


「何が?」


「…………」


「まだ何も言ってないけど」


「…………」


リホが。


少し笑う。


「何を想像したのかしら?」


「何も想像してねえよ!」


アリスが。


光るスティックを振った。


ピカッ。


「カンダ頑張ってね」


「何を!?」


◇


夜。


「…………」


カンダは。


鏡を見ていた。


髪。


整えた。


服。


着替えた。


「…………」


もう一度。


髪を直す。


「別に」


誰もいないのに。


呟く。


「王女に呼ばれただけだからな」


コンコン。


「カンダです」


「入れ」


扉を開く。


ネフェラが。


一人。


待っていた。


「来てくれたか」


「はい」


「急に呼び出してすまない」


「いえ」


ネフェラが。


カンダを見る。


「実は」


「はい」


「私には――」


「はい」


「強い兵士が欲しい」


「…………はい?」


カンダが。


瞬きをする。


「我が国の兵は砂漠での戦いには慣れている」


「はい」


「だが」


ネフェラが。


真剣な表情になる。


「魔王級の敵と戦った経験はない」


「…………」


「そなたは魔王を討った」


「はい」


「アヌガルも討った」


「はい」


「その戦い方を」


ネフェラが。


微笑んだ。


「我が兵たちに教えてほしい」


「…………」


カンダが。


聞く。


「今から?」


「今夜なら皆の任務が終わっている」


「…………」


窓の外を見る。


夜。


もう一度。


ネフェラを見る。


「そういう夜!?」


「どういう夜だ?」


「なんでもないです!!」


◇


訓練場。


兵士。


三十人。


「…………」


カンダが。


立っている。


さっきまで。


少しだけ。


期待していた自分を。


殴りたい。


「勇者殿!」


兵士たちが。


一斉に頭を下げる。


「よろしくお願いします!」


「…………よろしく」


「まず何をすれば!?」


「えーっと」


カンダは。


考える。


自分は。


誰かに戦い方を教わったわけではない。


旅をして。


魔物と戦って。


仲間と失敗して。


覚えた。


「じゃあ」


カンダは。


訓練用の武器を持つ。


「全員」


「はい!」


「俺に攻撃してみて」


「…………」


兵士たちが。


固まる。


「全員で、ですか?」


「ああ」


「三十人で?」


「ああ」


「勇者殿一人に?」


「そう」


兵士たちが。


顔を見合わせる。


カンダが。


笑った。


「魔物は順番に来てくれないぞ」


「…………!」


「来い!」


「はい!!」


◇


一時間後。


「立て!」


「はい!」


二時間後。


「周り見ろ! 一人で戦うな!」


「はい!」


三時間後。


「前だけ見るな! 後ろにも仲間がいる!」


「はい!」


四時間後。


「もう一回!」


「はいぃぃぃ!!」


兵士たちが。


汗だく。


カンダも。


汗だく。


「勇者殿!」


「何!?」


「休憩を!」


「さっきしただろ!」


「あれ三時間前です!」


「…………」


カンダが。


空を見る。


「本当だ」


「休ませてください!!」


「休憩!」


「ありがとうございます!!」


全員が。


倒れた。


◇


深夜。


宿。


「…………疲れた」


カンダが。


部屋へ戻った。


汗だく。


服も。


身体も。


砂と汗で。


べたべた。


「風呂……」


入りたい。


でも。


ベッドが。


目の前。


「…………」


少しだけ。


横になる。


「五分……」


そのまま。


カンダは。


眠った。


◇


翌朝。


「…………」


リホが。


目を覚ました。


「…………?」


何か。


臭う。


「…………」


ジュリアも。


起きる。


鼻を動かす。


「…………臭い」


「ん……?」


カンダが。


目を覚ます。


アリスも。


布団から顔を出す。


クンクン。


「汗くさーい」


「…………あ」


カンダが。


自分を見る。


昨日の服。


そのまま。


「カンダ」


リホが。


冷たい目で見る。


「まさか」


「…………」


「そのまま寝たの?」


「疲れてたんだよ!」


ジュリアが。


一言。


「不潔」


「待て!」


リホも。


「不潔ね」


「訓練してたんだよ!」


「夜中まで?」


ジュリアが聞く。


「ああ!」


リホが。


腕を組む。


「王女様に呼ばれて?」


「ああ!」


「二人きりで?」


「最初だけな!」


「へぇ」


「なんだその目!」


リホが。


少し笑う。


「何の訓練かしら?」


「兵士だよ!!」


ジュリアも。


カンダを見る。


「汗だくになる訓練」


「三十人相手にしてたんだよ!」


「三十人」


「兵士が!!」


「聞いてない」


「今言っただろ!」


アリスが。


カンダを見る。


「私は別に気にしないよ?」


「アリス……!」


救い。


初めて。


味方がいた。


「酒場でそのまま寝る人とかいるし」


「比較対象おかしいけどありがとう!」


アリスが。


ニッと笑う。


カンダを指差した。


「でも」


「ん?」


「不潔、不潔ー!」


「お前もかぁぁぁぁ!!」


砂漠の朝。


勇者カンダの叫びが。


ラハームの町に響いた。


――第16話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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