↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/42

第15話 王女様のお願いなら仕方ない

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


翌朝。


カンダたちは。


砂漠へ入った。


「暑い」


アリスが言った。


「まだ朝だぞ」


「暑いものは暑い」


「昨日も言ってたな」


「昨日より暑い」


「砂漠入ったからな!」


見渡す限り。


砂。


砂。


砂。


「…………」


カンダが。


遠くを見る。


「何もないな」


「砂はあるよ」


「それは見ればわかる」


リホが。


地図を確認する。


「このまま南でいいはず」


「本当に?」


「たぶん」


「砂漠でたぶんは怖い!」


ジュリアが。


周囲を見る。


「足跡も消えるね」


風が吹く。


四人が歩いてきた跡が。


砂に消えていく。


「…………」


カンダが。


リホを見る。


「帰り道わかる?」


「たぶん」


「だから怖いって!」


アリスが。


光るスティックを掲げた。


「迷ったらこれ光らせよう」


「誰に見つけてもらうんだよ!」


こうして。


四人の砂漠越えは始まった。


◇


昼前。


「…………暑い」


「何回目だよ」


「暑い」


「わかった」


「暑い」


「わかったって!」


カンダが。


水を飲む。


行商人から多めに買っておいて。


正解だった。


「リホ」


「何?」


「《大声》で行商人呼べない?」


「水はまだあるでしょ」


「いや、冷たい飲み物とか」


「砂漠の真ん中に呼ぶ気?」


「…………」


カンダは。


少し考えた。


「来るかな?」


「試す?」


「やめよう」


行商人にも。


命はある。


◇


さらに。


しばらく進んだ。


「カンダ」


ジュリアが言う。


「ん?」


「あれ」


「魔物?」


「違う」


ジュリアが。


遠くを指差す。


砂の向こう。


何かが。


見える。


「…………城?」


カンダが目を細める。


城。


白い石壁。


高い塔。


その周囲には。


建物が広がっている。


「砂漠の真ん中に?」


「町もある」


リホが地図を見る。


「載ってる」


「先に言って!」


「聞かれなかったから」


「そういう問題!?」


砂漠の中に広がる。


巨大なオアシス。


その水を囲むように。


町が作られている。


門の上。


旗が。


風になびいていた。


「ラハーム王国」


リホが言う。


「砂漠の交易国家みたい」


アリスが。


目を輝かせる。


「寄る?」


カンダは。


即答した。


「寄る」


「早いね」


「水の補給!」


「さっき冷たい飲み物欲しいって言ってたもんね」


「そういうこと!」


四人は。


ラハーム王国へ向かった。


◇


ラハーム王国。


そこは。


アルディアとは。


まるで違う国だった。


白い石造りの建物。


色鮮やかな布。


金色の装飾。


香辛料の匂い。


商人たちの声。


そして。


町の中央には。


大きなオアシス。


「おお……」


カンダが。


声を漏らす。


「すげえ」


「水いっぱい」


アリスが言う。


「オアシスだからな」


「泳げるかな」


「怒られるからやめろ」


その時。


兵士が。


こちらへ近づいてきた。


「失礼」


「はい?」


兵士は。


カンダの装備を見る。


そして。


尋ねた。


「もしや」


「勇者カンダ殿では?」


「そうだけど」


三人が。


カンダを見る。


「有名になった?」


アリスが聞く。


「魔王倒したから?」


「かもな」


カンダが。


少し胸を張る。


兵士が。


頭を下げた。


「王女殿下がお会いになりたいとのことです」


「王女?」


「はい」


カンダは。


三人を見る。


三人も。


カンダを見る。


「…………」


「…………」


「…………」


カンダが言った。


「行こう」


ジュリアが。


首を傾げる。


「王様の時と違わない?」


「何が?」


「アルディアでは会いたくないって」


「あれは王様だろ」


「今回は王女様」


アリスが言う。


「…………」


カンダが。


少し考える。


「困ってるかもしれないだろ?」


三人が。


同時に。


「へぇー」


「その顔やめろ!」


◇


ラハーム王宮。


大理石の床。


高い柱。


壁には。


金色の装飾。


四人は。


謁見の間へ通された。


そして。


カンダは。


止まった。


「…………」


玉座。


そこに。


一人の女性が座っている。


長い黒髪。


日に焼けた褐色の肌。


金色の装飾を身につけ。


切れ長の瞳で。


こちらを見ていた。


美しい。


それも。


ただ美しいだけではない。


どこか。


男なら。


少しくらい。


何かを期待してしまいそうな。


妖艶さ。


「そなたが」


王女が。


微笑んだ。


「勇者カンダか」


「はい」


返事が。


早かった。


ジュリアが。


カンダを見る。


リホも見る。


アリスも見る。


「…………」


「何?」


「別に」


王女が立ち上がる。


「私はネフェラ」


ラハーム王国第一王女。


ネフェラ。


「遠路、よく来てくれた」


「いえ」


「砂漠の旅は大変であったろう」


「全然」


「暑いってずっと言ってたよ」


アリスが言った。


「お前じゃねえか!」


ネフェラが。


小さく笑う。


「面白い仲間たちだな」


「そうなんですよ」


カンダも笑う。


三人。


「…………」


「だから何!?」


◇


ネフェラの表情が。


少し変わった。


「実は」


王女が言う。


「そなたたちに頼みがある」


カンダが。


姿勢を正す。


「引き受けましょう」


「早い」


ジュリアが言った。


「まだ内容聞いてないわよ」


リホも言った。


アリスが。


カンダを見る。


「王様の時と態度違うね」


「違わない!」


「違う」


「違うわね」


「全然違う」


「お前ら黙れ!」


ネフェラが。


口元を押さえている。


笑っていた。


「話を続けても?」


「お願いします!」


三人。


「…………」


「なんだよ!」


ネフェラは。


玉座へ戻った。


「この国には」


静かに語る。


「歴代の王族が眠る墓がある」


「王家の墓?」


「ああ」


ラハーム王国から。


さらに砂漠の奥。


巨大な地下墓地。


代々の王。


王妃。


王族たちが。


そこに眠っている。


「だが」


ネフェラの表情が曇る。


「少し前から、墓に魔物が住み着いた」


「魔物」


「兵を送った」


しかし。


討伐できなかった。


「強いんですか?」


「それもある」


ネフェラが。


カンダの戦斧を見る。


「だが、それ以上に厄介なのだ」


「何が?」


「剣も」


「槍も」


「ほとんど効かなかった」


「…………」


カンダが。


《大地の戦斧》を見る。


「斧は?」


「試しておらぬ」


「じゃあいけるかも」


ジュリアが言う。


「たぶんそういう意味じゃない」


「だよな」


ネフェラは。


続ける。


「王家の墓を魔物の巣にしておくわけにはいかぬ」


「もちろん」


「討伐してくれれば」


王女が。


微笑んだ。


「相応の褒美を用意しよう」


リホが。


一歩前へ出た。


「引き受けましょう」


カンダが。


リホを見る。


「お前も早いじゃん!」


「褒美があるから」


「正直!」


ネフェラが。


再び笑った。


「では頼めるか?」


カンダは。


胸を張った。


「お任せください」


ジュリア。


「やっぱり違う」


アリス。


「声も違う」


リホ。


「少し低くしてるわね」


「分析すんな!」


◇


王家の墓は。


ラハームから。


それほど遠くなかった。


砂の中に。


巨大な石造りの入口が。


半分埋まっている。


左右には。


古い石像。


中央には。


地下へ続く階段。


「暗い」


アリスが言った。


「墓だからな」


「光る?」


「…………」


カンダが。


アリスを見る。


アリスが。


光るスティックを掲げる。


ピカッ。


「便利!」


「初めて正しい使い方した気がする!」


「光るスティックだからね」


「王様は星導の杖って言ってたぞ」


「光るスティック」


「もういいよ」


四人は。


地下へ降りていった。


◇


王家の墓。


石の通路。


壁には。


見たことのない文字。


王族らしい人物を描いた。


古い壁画。


「お宝ありそう」


ジュリアが言う。


「やめろよ」


カンダが。


即座に言った。


「ここ墓だからな?」


「お宝サーチ反応してる」


「やめろ!」


「でも」


「ダメ!」


「城では取ったのに?」


「その話はするな!」


リホが。


壁を見る。


「これは?」


「触るな!」


アリスが。


壺を見る。


「壺」


「割るな!!」


三人が。


カンダを見る。


「何?」


「成長したね」


「城で反省したんだよ!」


◇


奥へ。


進む。


その時。


ジュリアが。


止まった。


「いる」


「どこ?」


「前」


暗闇。


アリスが。


光るスティックを向ける。


ピカッ。


そこに。


人影。


「…………人?」


カンダが。


戦斧を構える。


ゆらり。


人影が。


こちらへ向かってくる。


半透明。


足が。


地面についていない。


「…………」


カンダが言った。


「幽霊?」


リホが。


《鑑定》する。


「ファントム」


「やっぱり幽霊じゃん!」


ファントムが。


襲いかかる。


「おらぁ!」


カンダが。


《大地の戦斧》を振った。


ブンッ!


「…………」


通り抜けた。


「…………」


カンダが。


戦斧を見る。


もう一度。


ブンッ!


スカッ。


「…………」


アリスが言った。


「斧の時代終わった?」


「始まったばっかりだよ!」


ジュリアが。


横から入る。


アサシンダガー。


ヒュッ!


刃が。


ファントムを通り抜ける。


「ダメ」


「お前もか!」


「心臓ない」


「幽霊だからな!」


ファントムが。


カンダへ迫る。


「くそ!」


カンダが。


戦斧を構える。


止まる。


「…………あ」


「何?」


「俺」


カンダが。


手を見る。


「魔法あるじゃん」


三人が。


同時に言った。


「ボア」


「先に言うな!」


カンダが。


手を向ける。


「ボア!」


炎が。


ファントムへ。


ドォン!


「ギャァァァァ!」


「おお!」


ファントムが。


大きく揺らぐ。


「効いた!」


リホが。


すぐに《鑑定》する。


「物理攻撃への耐性が高い!」


「やっぱり!」


「魔法は通る!」


カンダの。


顔が。


明るくなる。


「ということは」


手を前へ。


「ついに」


もう一体。


ファントムが現れる。


「ボアの時代が来たぁぁぁ!!」


「ボア!」


炎。


ファントムを焼く。


「よっしゃ!」


アリスが。


拍手する。


「斧より強い?」


「今だけは言わせて!」


カンダが。


拳を握る。


「ボア最高!」


長かった。


本当に。


長かった。


覚えてから。


ずっと。


斧の方が強かった。


ようやく。


勇者カンダの魔法が。


主役になった。


◇


しかし。


一体ではなかった。


「カンダ」


ジュリアが言う。


「増えた」


暗闇。


一体。


二体。


三体。


半透明の魔物が。


次々と現れる。


「多いな!」


「ボア連発できる?」


リホが聞く。


「やるしかないだろ!」


カンダが。


手を向ける。


「ボア!」


一体。


「ボア!」


二体。


「ボア!」


三体。


「ボア!」


「カンダ」


「何!?」


「息上がってる」


「魔法って疲れるんだよ!」


今まで。


あまり使ってこなかった。


だから。


気づかなかった。


魔法だけで戦うのは。


結構。


大変だった。


リホが。


弓を構える。


「普通の矢は――」


放つ。


ヒュッ!


ファントムを。


通り抜ける。


「ダメね」


「だろうな!」


リホは。


次の矢を取り出す。


その先に。


小さな袋。


「…………」


カンダが見る。


「それ」


「火薬」


「やっぱり!」


矢。


放つ。


ファントムの近くへ。


「カンダ!」


「ボア!」


ドォン!!


爆炎。


二体のファントムが。


まとめて吹き飛ぶ。


「おお!」


リホが。


満足そうに頷く。


「やっぱり普通に矢を使わなくて正解ね」


「そんな結論ある!?」


◇


残り。


一体。


ファントムが。


後方へ回り込む。


「アリス!」


カンダが叫ぶ。


「逃げろ!」


「え?」


振り返る。


目の前。


ファントム。


「わ」


アリスが。


反射的に。


光るスティックを向けた。


「来ないで!」


ピカッ!!


強い光。


「ギャァァァァァ!!」


ファントムが。


大きく後退した。


「…………」


全員。


止まった。


ファントムも。


止まった。


「…………」


アリスが。


光るスティックを見る。


「…………」


カンダも。


見る。


リホも。


見る。


ジュリアも。


見る。


「アリス」


「何?」


「今の何?」


「光った」


「それは見た!」


「強く光った」


「なんで!?」


「知らない」


アリスが。


もう一度。


スティックを振る。


ピカッ。


普通の光。


「…………」


「戻った」


「戻ったね」


「なんなんだよ、それ!」


「光るスティック」


「絶対それだけじゃねえだろ!!」


その隙に。


ファントムが。


再び迫る。


「カンダ」


「あ、はい」


手を向ける。


「ボア!」


炎。


最後のファントムが。


消えた。


◇


静かになった。


王家の墓。


「ふぅ……」


カンダが。


壁にもたれる。


「物理が効かない魔物とかいるんだな」


「これから増えるかもしれないわね」


リホが言う。


「魔王ヴァルガにも魔法は使ったけど」


「結局、最後は斧だったからな」


カンダは。


《大地の戦斧》を見る。


強い。


圧倒的に。


強い。


だが。


それだけでは。


倒せない敵がいる。


「面倒だな」


ジュリアが言う。


「だから役割分担」


「そうだった」


アリスが。


光るスティックを振る。


ピカッ。


「私も役割増えた?」


「お前のそれはまだよくわからん」


「明かり係?」


「とりあえずそれで」


「はーい」


四人は。


さらに奥へ進んだ。


◇


やがて。


巨大な石扉へ。


辿り着いた。


「ここ」


ジュリアが。


扉を見る。


「何かいる」


「わかる?」


「うん」


リホが。


扉に触れる。


「《鑑定》」


「どう?」


「…………」


リホの。


表情が変わった。


「何?」


「わからない」


「え?」


「扉の向こうにいるもの」


リホが。


静かに言う。


「今までの魔物とは違う」


その時。


扉の向こう。


ドン……。


「…………」


何かが。


動いた。


ドン……。


砂埃が。


天井から落ちる。


カンダは。


《大地の戦斧》を構えた。


「物理効く?」


リホが。


首を振る。


「わからない」


「…………」


カンダは。


戦斧を見る。


そして。


右手を前へ出した。


「じゃあ」


三人を見る。


「最初からボアでいく」


ジュリアが。


戦斧を見る。


「斧は?」


「一応持っとく!」


アリスが。


光るスティックを掲げた。


「私は?」


「とりあえず光ってろ!」


「はーい!」


ピカッ。


巨大な石扉が。


ゆっくりと。


開き始める。


砂漠の王家の墓。


その最深部で。


何かが。


四人を待っていた。


――第15話 

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。