第13話 魔王討伐のご褒美です
勇者は間に合ってます。
でも冒険は、まだまだ間に合ってません。
今日もゆるっと行きます!
アルディア城。
王の間。
「――よくぞ戻った!」
玉座に座るアルディア王が。
両手を広げた。
「勇者カンダよ!」
「どうも」
「商人リホ!」
「はい」
「盗賊ジュリア!」
「どうも」
「そして――」
王が止まる。
アリスを見る。
「…………」
「アリスだよ」
「それは知っておる」
「遊び人」
「そうじゃった」
王は。
少しだけ遠い目をした。
「本当に遊び人を連れて魔王を倒したのか……」
「俺もたまに不思議になる」
「失礼だなー」
アリスが頬を膨らませる。
「まあよい!」
王は立ち上がった。
「操獣魔王ヴァルガは消滅!」
王の間に。
歓声が響いた。
「周辺の魔物も、以前の状態へ戻りつつある!」
兵士たちが。
カンダたちへ頭を下げる。
「見事であった!」
「おお……」
カンダは。
少しだけ照れた。
「なんか」
「何じゃ?」
「ちゃんと勇者っぽい」
「お主は勇者じゃろうが!」
「そうなんだけど」
未だに。
慣れない。
王から。
勇者として褒められることに。
「では」
リホが。
一歩前へ出た。
「報酬のお話を」
「早いのう!」
「約束ですので」
「余韻は!?」
「魔王討伐と報酬は別です」
カンダが。
王を見る。
「諦めた方がいいよ」
「苦労しておるな、勇者よ」
「最近わかってきた」
「聞こえてるわよ」
「すみません」
◇
四人が案内されたのは。
城の宝物庫だった。
「おお……」
カンダが。
思わず声を漏らす。
武器。
防具。
魔道具。
宝石。
見たこともない品々が。
並んでいる。
「魔王討伐の褒美じゃ」
王が言った。
「それぞれ一つ、持っていくがよい」
リホの目が。
光った。
「一つ?」
「一つじゃ」
「一人一つ?」
「そうじゃ」
「四人なので四つ?」
「そうじゃ!」
「確認しただけです」
「怖いんじゃが!」
リホは。
もう品物を見ていた。
「《鑑定》」
「褒美を値段で選ぶでない!」
「大事です」
「勇者よ!」
「俺に言わないで」
◇
最初に。
カンダが選んだ。
というより。
王が勧めた。
「これなどどうじゃ?」
宝物庫の奥。
巨大な戦斧。
黒く。
分厚い刃。
長い柄。
見るからに。
重い。
「《大地の戦斧》じゃ」
「大地の戦斧」
「かつて名のある戦士が使っていたという」
王が。
誇らしげに語る。
「その重量ゆえ、歴代の騎士でもまともに扱えた者はほとんど――」
カンダが持ち上げる。
「お」
片手で。
軽く振る。
ブンッ!
「いいな、これ」
「…………」
王が黙った。
「どうした?」
「重くないのか?」
「前のよりは重い」
「そういう話ではない」
ジュリアが。
カンダの腕を見る。
「やっぱり」
「何?」
「筋肉の精霊」
「違うと思いたい!」
アリスが手を挙げる。
「斧の精霊かも」
「どっちも嫌だ!」
カンダは。
《大地の戦斧》を肩に担いだ。
「でも」
少し笑う。
「気に入った」
「そうか」
王も笑った。
「ならば持っていけ」
「ありがと、爺さん」
「王じゃ!」
「ありがとう、王様」
「軽いのう……」
◇
次。
リホ。
「これにするわ」
選んだのは。
弓だった。
「ほう」
王が頷く。
「商人が弓か」
「前回の戦いで思ったの」
リホは。
弓を構える。
「道具を投げるだけだと、届かないことがある」
「なるほど」
「矢なら遠くまで届く」
カンダも頷く。
「確かに」
「矢に火薬を付ければ――」
「待て」
「油を付けても――」
「待て待て」
「煙玉を――」
「普通に矢として使え!」
リホが。
不思議そうに見る。
「もったいないじゃない」
「弓矢の使い方ってそういう意味じゃないから!」
◇
ジュリアは。
迷わなかった。
「これ」
手に取ったのは。
黒い短剣。
細い刃。
軽く。
余計な装飾はない。
「《アサシンダガー》か」
王が言う。
「暗殺用に作られた短剣じゃ」
カンダが。
ジュリアを見る。
「勇者一行が持っていい武器?」
「盗賊だから」
「そうだった」
ジュリアが。
短剣を軽く振る。
ヒュッ。
風を切る。
「軽い」
「風の加護とも相性よさそうね」
リホが言う。
ジュリアは。
満足そうに腰へ差した。
そして。
最後。
全員が。
アリスを見る。
「私?」
「お前の番」
「うーん」
アリスが。
宝物庫を歩く。
剣。
「重い」
杖。
「長い」
盾。
「いらない」
鎧。
「かわいくない」
王の顔が。
だんだん険しくなる。
「ここは王家の宝物庫なんじゃが?」
「うーん」
そして。
アリスが止まった。
「あ」
隅に。
細い棒があった。
手に取る。
「これ!」
「それか?」
「うん!」
アリスが。
振る。
ピカッ。
棒の先端が。
光った。
「光る!」
カンダが。
固まる。
「…………それだけ?」
もう一度。
振る。
今度は。
違う光。
「色変わった!」
「武器ですらねえ!」
王が。
咳払いする。
「それは《星導の杖》という由緒ある魔道具で――」
「光るスティック!」
「星導の杖じゃ」
「光るスティック!」
「星導――」
「爺さん」
カンダが。
王の肩に手を置いた。
「諦めろ」
「お主まで爺さんと呼ぶな!」
アリスは。
楽しそうに光るスティックを振っていた。
◇
褒美を受け取った四人は。
城の訓練場へ移動した。
「そういえば」
ジュリアが言う。
「魔王倒して、何か変わった?」
「変わった?」
「技とか」
「ああ」
カンダは。
手のひらを見る。
「ちょっと試していい?」
兵士たちが。
慌てて離れた。
「ボア!」
炎が飛ぶ。
ドォン!
的が。
炎に包まれた。
「…………」
カンダが。
目を見開く。
「強くなってる!」
「ボアだよね?」
ジュリアが聞く。
「ボアだよ!」
「新しい魔法じゃないんだ」
「いいだろ!」
リホが。
燃える的を見る。
「魔力そのものが強くなったのかも」
「つまり」
カンダが拳を握る。
「ついにボアの時代が来た!」
アリスが言う。
「でも斧の方が強いよね」
「今それ言う!?」
◇
「私は」
リホが。
少し考える。
「新しい技能を覚えたわ」
「何?」
「《大声》」
「…………」
カンダが。
リホを見る。
「大声?」
「大声」
「スキルなの?」
「たぶん」
「ただ声でかくなっただけじゃなくて?」
「違うわ」
リホが説明する。
《大声》。
街道などで使用すると。
近くを旅している行商人を。
呼び寄せることができる。
「…………」
カンダは。
少し考えた。
「便利じゃん」
「でしょう?」
「旅の途中で薬草とか買える」
「そういうこと」
アリスが手を挙げる。
「魔王の城でも?」
「試してみたいわね」
「やめろ!」
カンダが止める。
「行商人を魔王の城に呼ぶな!」
◇
ジュリアも。
新しい技能を覚えていた。
「《隠密》」
「隠密?」
「気配を消せるみたい」
「盗賊っぽい!」
「ただ」
ジュリアが。
三人を見る。
「私だけじゃない」
「え?」
「近くにいる仲間も」
ジュリアが。
静かに息を吐いた。
空気が。
変わる。
「…………」
カンダが。
周囲を見る。
何も変わっていない。
なのに。
少し離れたところを歩いていた兵士が。
四人の横を。
そのまま通り過ぎた。
「おお……」
アリスが言う。
「すごーい」
兵士が。
止まった。
「ん?」
四人。
「…………」
兵士は。
首を傾げて。
去っていった。
「静かにしろ!」
カンダが小声で怒る。
「はーい」
「これ便利だな」
「攻撃したり、大きな音を出すと解除されるみたい」
「十分だろ」
そして。
三人が。
アリスを見る。
「…………」
「…………」
アリスも見る。
「何?」
「お前は?」
カンダが聞く。
「何が?」
「新しい技」
「ないよ?」
「…………」
「…………」
「…………」
カンダが。
聞き直す。
「ないの?」
「うん」
「本当に?」
リホが聞く。
「うん」
ジュリアも。
「何かできるようになってない?」
「うーん」
アリスが考える。
そして。
光るスティックを振った。
ピカッ。
「光る!」
「それさっき見た!」
「色も変わるよ」
ピカッ。
「スキルじゃねえ!」
アリスだけ。
特に何も覚えていなかった。
◇
「じゃあ」
カンダは。
新しい戦斧を肩に担ぐ。
「帰るか」
褒美ももらった。
新しい装備も手に入った。
能力も確認した。
十分だ。
王へ挨拶もした。
あとは。
城を出るだけ。
その時。
ジュリアが。
止まった。
「…………」
「どうした?」
「ある」
「何が?」
ジュリアが。
城の廊下の奥を指差す。
「お宝」
カンダは。
嫌な予感がした。
◇
廊下の先。
壁際。
そこに。
宝箱があった。
「…………」
四人が。
見る。
「宝箱だね」
アリスが言う。
「宝箱ね」
リホも言う。
ジュリアは。
すでに近づいている。
「待て待て待て」
カンダが止める。
「ここどこ?」
「城」
「誰の?」
「王様」
「じゃあダメだろ!」
ジュリアが。
宝箱を見る。
「鍵かかってない」
「鍵の問題じゃねえ!」
「開ける?」
アリスが聞く。
「ダメ!」
「でも」
アリスが。
首を傾げる。
「勇者って、お城の宝箱開けていいんじゃないの?」
「誰が決めたんだよ、そのルール!」
リホが。
宝箱を確認する。
「確かに鍵はないわ」
「お前まで!」
「つまり」
「つまり?」
「開けてもいい」
「どういう理屈!?」
パカッ。
「開けたぁぁぁ!」
中には。
金貨。
「…………」
リホが取った。
「取るな!」
「パーティーの資金よ」
「王様の資金だよ!」
◇
その後。
なぜか。
四人は。
城の中を歩いていた。
「もう帰ろう」
カンダが言う。
「もう一個ある」
ジュリアが言う。
「帰ろう!」
《お宝サーチ》。
便利な技能である。
今までは。
そして。
今。
最悪の技能だった。
「こっち」
「案内するな!」
次の宝箱。
パカッ。
薬草。
「これは必要ね」
リホが取る。
「城にも必要だよ!」
次。
毒消し。
「いただきます」
「いただくな!」
次。
小さな宝石。
「これは売れる」
「戻せ!」
次。
謎の種。
アリスが持つ。
「種」
「見ればわかる!」
その時。
兵士が。
廊下の向こうから歩いてきた。
「やばい!」
カンダが言う。
「ジュリア!」
「《隠密》」
四人の気配が。
消える。
兵士が。
通り過ぎる。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
カンダが。
ゆっくりジュリアを見る。
「このスキル」
「うん」
「こういうことに使うためじゃないよね?」
「盗賊だから」
「そうだった……」
納得しかけて。
カンダは首を振る。
「いやダメだろ!」
◇
さらに。
アリスが。
部屋の隅にある壺を見つけた。
「これ」
「ダメ」
「まだ何も言ってない」
「ダメ」
「何か入ってるかも」
「ダメ!」
アリスが。
光るスティックで。
壺をつつく。
カタン。
「やめろ!」
ガシャーン!
「割ったぁぁぁ!!」
「ごめん」
割れた壺の中。
チャリン。
「…………」
金貨。
全員が見る。
「…………」
カンダが。
頭を抱えた。
「なんで入ってんだよ!!」
リホが拾う。
「拾うな!」
「落とし物よ」
「今お前らが落としたんだよ!」
「カンダ」
ジュリアが言う。
「次」
「まだあるの!?」
◇
最後の宝箱は。
城の奥にあった。
今までより。
明らかに立派だった。
「…………」
カンダが。
宝箱を見る。
「これは」
嫌な汗が出る。
「絶対ダメなやつ」
「でも」
ジュリアが言う。
「お宝サーチがすごく反応してる」
「だからダメなんだよ!」
アリスが。
しゃがむ。
「開ける?」
「開けない」
リホがしゃがむ。
「見るだけ」
「開けたら見るだけじゃ済まないだろ」
ジュリアもしゃがむ。
「鍵はない」
「だから鍵の問題じゃ――」
パカッ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
中を見る。
宝石。
金貨。
珍しい薬。
見たこともない道具。
明らかに。
今までとは違う。
「…………」
カンダが。
静かに言った。
「これは戻そう」
三人が。
カンダを見る。
「な?」
「…………」
「さすがにこれはダメだろ?」
「…………」
「戻すよな?」
「…………」
「おい?」
◇
しばらくして。
王の間。
一人の兵士が。
慌てて駆け込んできた。
「陛下!」
玉座の王が。
顔を上げる。
「どうした?」
「城内の宝箱が――」
王は。
目を細めた。
そして。
髭を撫でる。
「ほっほっほ」
「陛下?」
王は。
楽しそうに笑った。
「やりおったな」
――第13話 終
後書き
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。
次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!
それでは、また次の冒険で!




