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『勇者は間に合ってます』 ~歴代最高の勇者の息子、商人と盗賊と遊び人を連れて旅に出る~  作者: 凡夫 成


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11/43

第11話 役割分担って大事らしい

勇者は間に合ってます。


でも冒険は、まだまだ間に合ってません。


今日もゆるっと行きます!


アルディアを出発して。


半日。


カンダたちは。


魔王がいるという古い砦を目指していた。


「この森を抜けるんだよね?」


アリスが聞く。


「ああ」


カンダが地図を見る。


「たぶん」


「たぶん?」


「爺さんが描いた地図だからな」


「王様ね」


ジュリアが言う。


「爺さんでいいよ」


「不敬ね」


リホが言う。


「向こうから勝手に酒場来たんだからいいだろ」


「それとこれとは別じゃない?」


「王様に会うと面倒くさいんだよ」


カンダは地図を畳んだ。


結局。


会いに行かなかったのに。


仕事は増えた。


しかも。


魔王討伐。


「まあ」


ジュリアが言う。


「魔王探してたんだからいいじゃん」


「そうなんだけどさ」


「目的達成だね」


アリスが笑う。


「まだ倒してねえよ」


◇


森に入って。


一時間ほど経ったころ。


最初に異変に気づいたのは。


ジュリアだった。


「止まって」


全員が足を止める。


「どうした?」


「いる」


ジュリアが短剣に手をかける。


「魔物」


カンダも戦斧を構えた。


「何匹?」


「三……」


ジュリアが目を細める。


「いや」


茂みが揺れた。


「五匹」


「多いな」


次の瞬間。


魔物が飛び出した。


狼のような魔物が三匹。


その後ろに。


二足で立つ、大型の魔物が二匹。


「来るぞ!」


カンダが前へ出る。


いつも通り。


一番近い魔物へ戦斧を振る。


「おらぁ!」


ズドンッ!


一匹。


撃破。


「よし!」


その瞬間。


残りの狼型が。


左右へ分かれた。


「え?」


一匹がカンダを迂回する。


狙いは。


リホ。


「ちょっ――」


リホが後ろへ下がる。


「カンダ!」


「待て!」


カンダが振り返る。


だが。


目の前には大型の魔物。


「邪魔!」


戦斧を振る。


その間に。


狼型がリホへ飛びかかった。


「リホ!」


ジュリアが走る。


風が抜ける。


リホと魔物の間へ滑り込んだ。


短剣。


ギィン!


爪を受け流す。


「助かった!」


「まだ!」


別の魔物が。


ジュリアの背後へ回る。


「後ろ!」


アリスの声。


ジュリアが。


考えるより先に横へ跳んだ。


魔物の爪が空を切る。


「カンダ、右!」


「右!?」


振り向く。


狼型。


「おら!」


戦斧。


撃破。


「リホ!」


「何!?」


「何か投げて!」


「何かって何よ!」


「持ってるでしょ!」


「雑!」


リホは腰の袋から小さな包みを取り出した。


「目閉じて!」


「え?」


投げる。


パンッ!


白い煙が広がった。


「目がぁぁぁ!」


「閉じてって言ったでしょ!」


「間に合わなかった!」


魔物たちも混乱する。


「ジュリア!」


アリスが叫ぶ。


「大きい方!」


「了解!」


煙の中。


ジュリアが走る。


大型魔物の横を抜けながら。


膝裏へ短剣を入れる。


「グオッ!」


体勢が崩れる。


「カンダ!」


「見えねえ!」


「前!」


「前!?」


煙の中。


巨大な影。


「たぶんそこ!」


「たぶんで指示すんな!」


カンダは。


戦斧を振り抜いた。


ズドォン!


手応え。


煙が晴れる。


大型魔物が。


倒れていた。


「…………」


残り一匹。


全員で見る。


魔物も。


四人を見る。


「…………」


魔物は。


逃げた。


「逃げたね」


アリスが言う。


「逃げたな」


カンダは。


戦斧を地面に置いた。


「…………」


全員を見る。


「役割決めない?」


三人が。


同時に言った。


「今さら?」


◇


少し開けた場所で。


作戦会議が始まった。


地面に座る四人。


「今まで」


カンダが言う。


「なんとなく戦ってきた」


「うん」


「カンダが殴ってた」


「ジュリアも戦ってただろ!」


「私は物拾ってた」


リホが言う。


「私は応援」


アリスが言う。


「戦え!」


「遊び人だもん」


「便利だなその職業!」


カンダは地面に棒で丸を描いた。


「でも」


表情を変える。


「さっきの奴ら、今までと違った」


ジュリアが頷く。


「連携してた」


「俺を避けてリホを狙った」


「弱いところがわかってたみたいね」


リホが言う。


「弱いって言うなよ」


「戦闘力の話よ」


「ならいい」


魔物が。


考えて戦っている。


いや。


誰かに。


そう戦わせられている。


魔王。


その存在が。


少しずつ近づいている。


「だから」


カンダが言った。


「俺たちも役割を決める」


「はーい」


アリスが手を挙げる。


「まず俺」


カンダは自分を指差す。


「前」


「でしょうね」


「それ以外ないね」


「斧だし」


「わかってるよ!」


カンダは戦斧を見る。


「俺が一番前で敵を止める」


次。


リホ。


「私は?」


「後ろ」


「雑ね」


「でもお前、色々持ってるだろ」


リホは自分の荷物を見る。


薬草。


煙玉。


油。


火薬。


毒消し。


その他。


旅の途中で仕入れた道具が。


大量に入っている。


「《鑑定》もあるし」


カンダが言う。


「弱点探して、道具で援護」


リホが考える。


「悪くないわね」


「火薬は俺が離れてから使えよ」


「努力する」


「約束しろ!」


次。


「ジュリアは」


「前」


「俺と被るだろ」


「じゃあ横」


「そういう話じゃねえ」


ジュリアは笑う。


カンダは少し考える。


「お前が一番速い」


風の精霊の加護。


今では。


カンダでも目で追うのが難しいほどになっている。


「最初に動いて敵を乱してくれ」


「乱す?」


「武器落とすとか、足狙うとか」


「なるほど」


「隙があったら」


カンダは自分の首を指で叩く。


「急所」


ジュリアが笑う。


「それ得意」


「怖いな」


そして。


三人が。


最後の一人を見る。


「…………」


アリス。


「…………」


アリスも三人を見る。


「何?」


カンダが聞く。


「お前は?」


「応援」


「やっぱりか!」


「頑張れー」


「今やるな!」


ジュリアが笑う。


「でも」


カンダは。


さっきの戦闘を思い出す。


アリスの声。


後ろ。


右。


前。


全部。


当たっていた。


「お前」


「ん?」


「後ろから見てろ」


「いいの?」


「ああ」


カンダは言う。


「何か気づいたら言え」


「何かって?」


「何でも」


「適当だね」


「お前の指示も適当だろ!」


アリスは少し考えて。


笑った。


「わかった」


こうして。


四人の役割が決まった。


カンダ。


前衛。


リホ。


道具による援護。


ジュリア。


撹乱と急所攻撃。


アリス。


後ろで見る。


「最後だけ仕事っぽくない!」


「いいじゃん」


「まあ……」


カンダも。


なぜかそれでいい気がしていた。


◇


「そういえば」


ジュリアが腕を見る。


「ちょっと切れてる」


さっきの戦闘で。


爪がかすったらしい。


「薬草使う?」


リホが聞く。


「このくらいならいい」


「ダメだろ」


カンダが言う。


「化膿したら面倒だぞ」


「じゃあ薬草――」


その時。


カンダの頭の中に。


何かが浮かんだ。


「…………ん?」


「どうしたの?」


「なんか」


自分の手を見る。


「できそう」


「何が?」


「わからん」


「怖いな」


カンダは。


ジュリアの腕へ手を向けた。


頭に浮かんだ言葉を。


そのまま口にする。


「――ヒル」


淡い光が。


カンダの手から広がった。


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


光が消える。


ジュリアの腕を見る。


傷が。


消えていた。


「…………」


カンダが目を丸くする。


「治った」


ジュリアも。


自分の腕を見る。


「治った」


リホが立ち上がる。


「回復魔法?」


「みたい」


「カンダ」


ジュリアが。


カンダを見る。


「何?」


「好き」


「は!?」


カンダが固まった。


リホが。


自分の腕を差し出す。


「私もちょっと怪我した」


「どこ!?」


「ここ」


「何もないだろ!」


「擦り傷」


「見えねえよ!」


アリスも手を挙げる。


「私も!」


「お前はどこ!?」


アリスは。


自分の胸を押さえた。


「心」


「薬草食ってろ!」


「心に薬草!?」


ジュリアが。


また腕を差し出す。


「もう一回」


「治ってるだろ!」


「念のため」


「何の!?」


リホが考える。


「これで薬草の消費を減らせるわね」


「…………」


「かなり節約になる」


「…………」


アリスも頷く。


「便利だね」


「…………」


カンダは。


静かに言った。


「俺じゃなくて」


三人を見る。


「ヒルがモテてただけ?」


「うん」


「即答すんな!」


カンダの。


短いモテ期が終わった。


◇


さらに。


森の奥へ。


一時間ほど進む。


カンダは。


少し機嫌がよかった。


「ヒル」


自分の腕にあった小さな傷を治す。


「便利だな」


「使いすぎない方がいいんじゃない?」


リホが言う。


「なんで?」


「魔力使うでしょ」


「…………」


カンダが止まる。


「魔力ってなくなるの?」


三人が見る。


「知らなかったの?」


「魔法あんまり使わないから!」


「ボア」


アリスが言う。


「使ってる!」


「焚き火に」


「魔物にも使ってる!」


その時。


ジュリアが止まった。


「来る」


全員の表情が変わる。


「何匹?」


「多い」


茂み。


木の上。


岩陰。


次々と。


魔物が姿を現した。


六匹。


いや。


八匹。


「増えてない?」


アリスが言う。


「増えてるな」


大型。


狼型。


鳥型。


種類も違う。


なのに。


一つの群れのように。


こちらを囲んでいる。


「やっぱり」


リホが言う。


「操られてる?」


「たぶんな」


カンダは。


戦斧を構えた。


「じゃ」


前へ出る。


「さっき決めた通りで」


ジュリアが。


姿勢を低くする。


「了解」


リホが。


道具袋を開く。


「準備できてる」


アリスは。


三人の後ろへ下がった。


「頑張れー」


「それだけじゃねえからな!」


魔物たちが。


一斉に動いた。


◇


「ジュリア!」


カンダが叫ぶより早く。


ジュリアは。


もう走っていた。


風。


一匹目。


横を抜ける。


足を斬る。


二匹目。


爪をかわす。


背後へ。


三匹目。


視界の外から短剣。


「速っ!」


カンダが思わず言う。


魔物たちの陣形が。


崩れる。


「カンダ!」


アリスの声。


「前!」


「わかってる!」


大型魔物が突っ込んでくる。


カンダは。


真正面から戦斧を振った。


ズドン!


だが。


倒れない。


「え?」


今までなら。


ほとんどの魔物が。


これで終わっていた。


大型魔物が。


カンダを殴る。


「ぐっ!」


吹き飛ばされる。


「カンダ!」


地面を転がる。


「痛っ……!」


カンダが起き上がる。


魔物は。


まだ立っている。


「強くなってるな……」


リホが。


大型魔物を見る。


《鑑定》。


「カンダ!」


「何!」


「皮膚が硬い!」


「見ればわかる!」


「違う!」


リホが袋から。


小瓶を取り出す。


「火に弱い!」


「それを先に言え!」


リホが。


油を投げる。


大型魔物へ。


瓶が割れる。


「カンダ!」


「ボア!」


炎。


ボッ!


油に引火する。


「グオオオオ!」


魔物が暴れる。


「効いてる!」


カンダが笑う。


「見たか!」


ジュリアが言う。


「ボアが戦闘で役に立った」


「前から役に立ってる!」


「カンダ!」


アリス。


「右!」


「おう!」


振り向く。


狼型。


戦斧。


撃破。


「ジュリア!」


アリスが叫ぶ。


「そのまま前!」


「了解!」


ジュリアは。


理由を聞かない。


走る。


一匹をかわす。


その先。


火に包まれた大型魔物。


「首!」


リホが叫ぶ。


「そこだけ皮膚が薄い!」


ジュリアが。


跳ぶ。


風が。


一瞬だけ。


渦を巻く。


短剣。


急所。


大型魔物が。


倒れた。


「よし!」


だが。


まだいる。


鳥型の魔物が。


上空からリホを狙う。


「リホ!」


カンダが走ろうとする。


「来なくていい!」


アリスが叫んだ。


「え?」


「そのまま前!」


「でも!」


「大丈夫!」


カンダは。


一瞬迷った。


そして。


アリスを信じた。


前へ。


リホへ迫る鳥型。


その瞬間。


「リホ、煙!」


「はい!」


煙玉。


パンッ!


煙。


鳥型が。


視界を失う。


「ジュリア!」


「見えてる!」


煙の中。


風が走る。


一撃。


鳥型が落ちる。


「…………」


カンダは。


前の魔物を斧で吹き飛ばしながら。


少し笑った。


「いける」


今までと。


違う。


ただ。


それぞれが戦っているんじゃない。


ジュリアが崩す。


リホが見抜く。


アリスが繋ぐ。


そして。


自分が。


正面から叩く。


「カンダ!」


アリスが叫ぶ。


「後ろ!」


「おう!」


振り返らず。


戦斧を。


後ろへ振る。


ゴンッ!


魔物が吹き飛んだ。


「…………」


カンダが振り返る。


「マジでいた」


「だから言ったじゃん」


「なんでわかるの?」


「なんとなく」


「なんとなくで戦場見んな!」


アリスが笑った。


◇


数分後。


最後の魔物が倒れた。


「…………終わった?」


リホが周囲を見る。


ジュリアも。


気配を探る。


「たぶん」


カンダは。


戦斧を地面に置いた。


「疲れた……」


「怪我は?」


リホが聞く。


「ちょっと」


カンダは。


自分の脇腹を見る。


さっき殴られたところ。


「ヒル」


光。


痛みが。


少しずつ引いていく。


ジュリアが近づく。


「私も」


「はいはい」


「ヒル」


「ありがと」


リホも。


「私も」


「怪我した?」


「少し」


「ヒル」


「ありがとう」


アリスが。


近づいてくる。


「私は?」


「怪我した?」


「してない」


「じゃあなし」


「えー」


「なんで残念そうなんだよ!」


四人は。


笑った。


カンダが。


倒れた魔物たちを見る。


明らかに。


強くなっている。


そして。


明らかに。


統率されていた。


「魔王」


カンダが呟く。


「近いのかもな」


その時だった。


――グオオオオオオオオオオオ!!


森が。


震えた。


鳥たちが。


一斉に飛び立つ。


四人の笑顔が。


消えた。


「…………」


ジュリアが。


森の奥を見る。


「今の何?」


リホも。


同じ方向を見る。


「少なくとも」


少しだけ。


声が硬い。


「さっきの魔物たちとは違うわね」


アリスが。


じっと森の奥を見つめる。


「いるね」


「何が?」


カンダが聞く。


アリスは。


少し考えて。


答えた。


「もっと強いの」


「…………」


カンダは。


戦斧を持ち上げた。


「役割」


三人を見る。


「決めといてよかったな」


ジュリアが短剣を握る。


リホが道具袋を閉じる。


アリスは。


三人の少し後ろに立つ。


そして。


四人は。


咆哮の聞こえた方へ歩き出した。


――第11話 終

後書き

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

勇者なのに寄り道ばかり。 それでもカンダたちは、少しずつ前へ進んでいます。

次は何が起きるのか。 一緒に見届けていただけたら嬉しいです。

「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、感想・評価・ブックマークで応援していただけると励みになります!

それでは、また次の冒険で!

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