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第二章 真実 その21 「校舎内での銃撃戦(シューティングゲーム)」

 空を覆いつくす黒は、まるで水面が波打つかのように揺れる。


 それらは全てが、羽ばたくカラスの集合体であった。


 カラスたちの目線は、地面に佇むたった一人の女性に向けられる。


 赤い長髪を風に靡かせ、顔に好戦的で、楽しそうな笑顔を浮かべる女性は高らかに何かを宣言した後、校舎に向かい走り出した。


「カアアアアアアアアアアアアアア‼」


 女性のその行動を合図にカラスたちも一斉に動き出す。


 カラスたちの集合体である黒い塊が大きくうねり、まるで一つの生き物みたいに女性に向かって突っ込んでいく。


 女性は校舎の一階の割れた窓に近づき、そのすぐ手前でカラスの群れに振り向きながら、両手に持った銃を放った。


 ダダダダダダダダダッ


 突っ込んだ黒い塊の先端の一部が破壊され、地面に頭部のはじけ飛んだカラスの死骸がいくつも落ちる。


 女性の持った銃。

 その見た目は拳銃であるはずなのに、まるでアサルトライフルのように一度の引きで何発も連射される。

 明らかに現実離れしたありえない性能、普通の銃ではない。


 さらにその銃身から放たれている銃弾も普通ではなかった。


 正確には弾ではなく、拳サイズの真っ赤な光の塊。


 銃を持っている女性の掌が赤く光っている。

 掌から出た光をそのまま銃身を通して、引き金を引くごとに何発も飛ばしているのだ。


 銃を撃っているように見せかけた、ただの素手から銃身を通しての力の放出。

 女性にとってそれはただの銃撃戦の真似事、シューティングゲームに過ぎなかった。


 放たれた光の塊は、爆弾のごとくカラスに当たった瞬間、弾け飛ぶ。


 一発の光の弾でおそらく5,6羽は地面へと落していた。


 女性から放たれる光の弾の連射に、黒い塊はそれでも止まることなく、放たれる光を避けるようにして、突っ込んでくる。

 数十羽落としたところでその全体数の一割にも満たない。黒くどでかい塊の勢いは全く衰えぬままだった。


「……」


 女性は笑顔を深め、背後の割れた窓から校舎内に入る。


 入ったとともに床、壁、また床へと飛び、高速で廊下を移動する。


 学校内には白目を向いた状態で立ち上がる生徒たちの死体が待ち受けていた。


「あ~~~、あ~~~~~~~」


 銃口を向け、生徒たちの死体の頭部に光の弾を放つ。


 今度の光の弾は肉体に当たっても弾け飛ばず、その体内へと吸収されるだけだった。


「あ~~~、あ~~~~……」


 生徒達の身体は動きを止め、そのまま地面へ倒れ伏す。


(後からどうせ再生できるけど、まぁなるべくは壊さない方がいいよな)


 ドゴンッ


 背後を見れば、うねる黒い塊は窓枠どころか壁を破壊し、女性を追って校舎内に入ってくる。


 ダダダダダダダダダッ


 背後に迫る黒い影に光の弾を放ちながら、女性は廊下内を駆け抜けた。どれだけ削ってもその勢いは落ちる様子はない。


 迫りくる黒い影を背後に、女性は方向を転換し、突如横合いに見えた階段を飛ぶように駆けあがる。


 2階、

 3階、

 最上階へと一気に進んでいく。


 女性は駆けあがった先、最上階の一番手前にあった教室に身を滑らせて入り込んだ。


 そこは机、椅子、教卓が乱雑に転がらされているごく普通の一般教室。当然、白目になって立ち上がる、その教室を使っていた生徒たちの姿も見受けられた。


(今はこいつらにかまっている余裕はないな)


 女性はそんな生徒達をスルーし、教室の奥の方にある中庭が見える窓枠まで近づいた。


 後を追って、カラスたちが教室になだれ込んでくる。

 黒い塊に飲み込まれた机や椅子、白目を向いた生徒たちがめちゃくちゃになってひしゃげていく。


 女性はそれを確認した後、窓から身を乗り出し、外へと飛び出した。


 外に飛び出した女性の身体は、けれども下へは落ちてはいかない。


 窓枠を蹴り、校舎の壁を蹴り、中庭を見下ろす上空へと高く高く飛び上がった。


 空中に投げ出され、逃げ場のない女性の身体を、カラスたちはその勢いを増して覆いつくしてくる。


 空中で黒い塊に飲み込まれた女性の身体。しかし、すぐさま赤い閃光ほとばしり、自分を覆った黒い塊を内側から弾け飛ばした。


 足場のない空中にあるはずの女性の身体は落下することなく、何もない空間を蹴るようにしてその位置を保つ。


 そしてその身を回転させるように翻しながら、辺りに残るカラスたちへと銃を乱射していく。


 まるで舞を踊るように空中にとどまり続け、光の弾を全方位に放ち続ける女性にカラスたちはあたりを飛び回るだけで近づけない。




 その様子を黒いフードを目深に被った人物がそのさらに上空から見つめていた。


(どこまで規格外なんだ、あの女は……‼)


 黒フードの人物の頬に汗が流れる。


(元の世界に比べ、この世界で使える力は半減するはず......その状態で防御壁の形成、力の連続的放出、さらに空中にとどまり続けるための足場まで断続的に形成させるとは、この合間の戦闘だけでどれだけの力を使っていると思っている‼……奴の元の総量は一体……それにあの女の行動、逃げ回るだけじゃなく、何か他に意図があるような)


 ドガァァァァァァン


(なんだ⁉)


 突然、爆音と共に赤い閃光が視界の半分を覆う。


 しかし、それは空中で乱舞し続ける赤髪の女性とは別方向からの閃光だった。


(う、嘘だろ、そんな、まさか‼……)


 フードの奥の瞳孔が開いた。


 体から大部分の力が抜けるのが分かった。


 閃光が瞬き、爆音が鳴った場所。


 そこは燃えた体育館の少し先、校舎の横に位置する場所。


 青年とTAIGAが戦っていたその場所だった。




























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