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第二章 真実 その8 「弱き者たちの結末」

「ぐッがッ‼」


 緑と赤の閃光のせめぎ合いは、一瞬の内に決着がついた。


「くッ離せ‼」


 部屋の中に苦し気な声が響く。

 その声はユリのものであった。

 ユリは片腕で首を絞められ、壁に押しつけられるようにして抑えられていた。


「うん、流石は戦闘隊長。他の連中は一撃でやられちまったが、それに比べたらなかなかやるな」


 ユリの首を掴み上げながら満面の笑みで言うディア。

 その力の差は圧倒的だった。

 こちらの攻撃はほとんどいなされ、敵の攻撃のダメージは絶大だった。


(なんだ......この女。強さの桁が違いすぎる)


 ディアは掴み上げたユリをそのままに語りかけてくる。


「なあ、これで分かったろ、あんたじゃ私は殺せない。私は別にあんたを殺したいわけじゃないんだ。そこの戦哉だっけか?を私に譲ってくれるだけでいいんだ」


「ふ、ふざけるな‼誰が貴様みたいな奴に渡すか!渡さない!戦哉は、戦哉だけは殺させない。守ると誓ったんだ」


 息が止まりきらないギリギリの力強さで握る手をユリは爪を食い込ませ、その腕をはがそうと必死に抵抗する。


「あのなぁ、なんか勘違いしてるようだが、私は別にこいつを殺そうとしてしてるわけじゃないからな、私の目的のために国の一員になってもらうだけだ、悪いようにはしない」


「嘘つけ!貴様の国とはつまり()()()()()に連れていくという意味だろ‼」


「ああ、そりゃもちろん」


「くッ!このクソ野郎め、そんなの許せるわけないだろ!()()()()()()私の弟は連れていかせない、絶対に守るんだ」


 再び、ユリの手が緑色に光りだし、その手をディアの顔めがけて放とうとする。

 しかしそれよりもディアの動きの方が速かった。

 首を掴んだユリの身体を、リビングの脇に佇む棚めがけて投げた。


 ガシャン


「がはッ‼」


 背中から思いっきり棚に突っ込み破壊する。

 棚と共に床に崩れたユリの身体はダメージで動くことが出来なかった。


「ぐッ、せん......や」


 ユリはそれでも懸命にソファの上に眠る戦哉へ手を伸ばそうとする。


「じゃあ、こっちも変わりに聞くけど~」


 無情にもユリの手と戦哉の延長線上にディアが立ちふさがる。


 ディアはユリの頭を時分がやられたように鷲掴み、そのまま持ち上げた。


「あんたら()()()()は決して開発者に逆らえないはずだ。あんたらの国の意思はあいつを殺すこと。それなのに部隊を裏切り、あいつの家族の振りを続けたのはどうゆうつもりだ?」


「ぐッ......がはッ私は......ただ、家族が欲し......かった。戦哉は私を家族と……呼んでくれた……あんな国、もうどうでもいい……私は……戦哉のために生きる!!」


 掴み上げるディアの手を必死に引きはがそうと爪を立て、血は吐きながらそう言い放つユリ。

 その目には確かに意思が宿り、ディアを睨み返していた。


(へぇ~~、こりゃぁ面白い。開発者の意思を裏切るほどの自我を、人造の人間が宿すとは……果たして特別だったのはこの人造の女か、それとも)


 ディアはユリを掴み上げたままソファに眠る青年を見る。


 すると、ピクリと青年の瞼が動いた。

 そして、そのまま彼はその目を開いた。



(あれ?俺今何をやって......は?)


 戦哉は目の前の光景に絶句した。

 ボロボロの家、その中心に立つディア。

 そして、その手にぶら下げられている血を吐く姉の姿。


「えッ⁉ちょ、ディア何をやって――」


「お、起きたか、お前さん」

「戦哉!!早くここから逃げろ!」


 ディアの声と響く姉の声が重なる、その瞬間姉の手から緑色の何かがディアに向かい放たれる。

 しかし、ディアはそれを軽々と首を逸らし、避けた。


「チッ、往生際が悪いのォ」


「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 頭を締め付けられ痛みに悶える姉の姿が映る。

 その光景を見て瞬間的に戦哉は理解した。

 ディアは敵だと。


「あ、しまった、つい――」


 ディアが笑いながらこちらに顔を向けようとする。

 しかし、こちらが飛び込んで拳を放つ方が速かった。


 ボゴッ――バリンッ


 顔面を殴られたディアはそのままリビングの窓を突き破り、外へと吹っ飛んだ。


 その場に残った戦哉は姉の方を見やる。


「姉貴、だいじょ――」


 バゴッ


 それも束の間だった、腹に衝撃的な痛みが走りディアとは反対方向へと吹き飛ぶ。

 あまりの瞬間的な出来事。


 ガンッ


「ガハッ」


 背中から家の壁にぶつかった戦哉は、痛みに悶える中何とか正面を向く。


「ひ~~、ビビった。久々に反応出来ない攻撃喰らった......ぺッ」


 そこには殴り飛ばしたはずのディアが立っており、口から床に血を吐くところだった。


 ディアは殴られた勢いそのまま隣の家の壁に着地し、そのまま隣の壁を蹴って戻ってきたのだ。

 そしてお返しと言わんばかりに戦哉の腹に蹴りをお見舞いした。


 戦哉は痛みで動けない。

 そこにディアは歩いて近づいてくる。


「お前はもうちょい、寝てろ、あとで治してやるから」


 ディアの手が赤く光り、戦哉に触れる。


「ッ‼」


 赤い光は戦哉を包み声も出せないまま戦哉の意識を再び刈り取った。


(おいおい、覚醒したばかりでこれか。これは期待以上だな)


 ディアは殴られた箇所をその手で撫でながらほくそ笑んだ。


「戦哉ッ‼」


 背後を振り返れば、ユリがボロボロの身体を起こそうとしていた。


「やめときなって、姉さん。もうあんたじゃどうにもできないよ。それに見た、あんたの記憶改ざんの力こいつに効いてなかったよ。これはもうこいつの力がお姉さんの力を上回りつつあるってこと。これで、家族ごっこも終わりだね」


 ディアは気を失った戦哉の身体を見ながら嬉しそうに言う。

 それに対してユリはそれでも、と立ち上がった。


「私は、姉だ......戦哉は私の弟だ。家族だ。唯一無二の存在だ!何があっても、守――ッ‼」


 ディアは再びユリの首を掴み上げ、締める。

 今度は完全に落すための力加減で締め上げた。


「ぐッ、がはッ」


「……残念、お姉さん。頑張っているところ悪いけど、そろそろ飽きたわ......家族を守るって言ってもあんたじゃ弱すぎる、この世は強さ、弱いものは何も救えない、せいぜい次の家族は守れるよう強くなってね」


 そう言ってディアは最後も笑っていた。

 しかし、ユリが意識を失う前に見たディアの目はとてもどす黒い、冷たい色をしていた。


 ドサッ


 荒れたリビングの床にユリの気を失った身体を落とす。


「よいしょッと」


 ディアは戦哉の身体を肩に担ぎその場を後にした。






























































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